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北九州でしか食べられない”幻の春菊”とは? ~福岡県北九州市の農業の魅力に迫る旅

北九州でしか食べられない”幻の春菊”とは? ~福岡県北九州市の農業の魅力に迫る旅

大手製鉄などが集まるモノづくりの街、北九州市。最近ではその夜景が「日本新三大夜景」として認定されるなど観光都市としても注目されています。一方で山と海に囲まれた立地を生かし、農業も盛んに行なわれています。さまざまな野菜が作られる中、北九州でしか食べられないという”幻の春菊”があるという情報をゲット。取材班はその食材を訪ねて、冬の北九州を訪れました。

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海と山の豊かな自然に囲まれて、さまざまな農産物を作り出す北九州市

北は響灘、東は瀬戸内海に面し、市の中央部から南側に福地山系が連なる海と山の豊かな自然に囲まれた北九州市。古くは港町として栄え、産業の町として有名ですが、その一方で自然の恩恵を受け、農業や水産業も発展してきました。現在、北九州市内の農家は約2600戸。野菜や水稲、花き、果実、林産物、畜産物など地域の特性を生かしたさまざまな農畜林産物があり、大消費地である都市部と近い地理的メリットを生かした生産性の高い都市型農業の振興に取り組んでいます。

自然に恵まれた北九州市ではさまざまな農産物が作られています

中でも、冬キャベツの作付面積は福岡県内最大。すいかの生産に関しても県内上位の出荷量を誇ります。特に、全国有数の面積を誇る竹林から生産される「合馬(おうま)の筍」は、京都をはじめ関西市場で高い評価を得る全国的にも知られる人気ブランドです。そんな北九州市で、地元の人々に愛される特別な春菊が作られているそうです。
特別な春菊とは、他の生産地ではあまり見かけない“ローマ”と呼ばれる大葉春菊のこと。驚くことに「春菊といえば、大葉春菊」という声が北九州市内のあちらこちらから聞こえてきます。まさに北九州ならではの”幻の春菊”です。さっそく大葉春菊の生産農家さんを訪ねました。

【農家レポート】 丸みがあって肉厚な葉っぱ。大葉春菊は地元の誇りです

岡村資巳さん(54)は北九州市の小倉南区で300年以上続く農家を守り継いでいます。夏のハウスではトマト、はくさい菜、小松菜を栽培。稲作の後はキャベツ、白菜、大根、ホウレンソウ、ブロッコリー、カブと多品種を栽培しています。そして冬のハウスでは大葉春菊を栽培。岡村さんは大葉春菊の部会の代表を務めています。

年間約4~5万袋を出荷している岡村さん。もっと多くの人に大葉春菊を食べて欲しいと品種改良やPRに力を注いでいる

「物心ついたころから、春菊と言えば大葉春菊のことだと思っていました。関東の大学に出てはじめて一般的な春菊とは違うものだと知ったくらいです」と岡村さん。
通常の春菊と大葉春菊とでは、見た目も違えば味も異なります。大葉春菊の葉っぱはギザギザしておらず、岡村さん曰くしゃもじのようなカタチをしています。春菊独特のえぐみが少なく、やわらかな味が特徴。サラダ感覚で生のままいただくこともできます。

いつから北九州市内で大葉春菊が栽培されてきたのか定かではありませんが、関門名物のふぐ料理と一緒に歩んできた歴史もあり、今もなお老舗料亭では時期になると大葉春菊が使われているそうです。それなのにすぐ隣の福岡市でもほとんど認知されていません。出荷ピークを迎えても北九州市内でしか流通しておらず、知る人ぞ知る春菊だというから驚きです。

「鍋物用だけでなく、サラダや和えものなどいろいろな料理に使うことができます。やわらかくて優しい味の大葉春菊をもっと多くの方に食べていただけるよう生産体制を整え、ブランド化を進めることが今後の課題ですね」と岡村さんは話します。

JA北九の出口さん(写真左)は良き相談相手。行政、JA、農家が一体となり地域農業の振興を図る北九州市では、新規就農者支援への取り組みも行なわれている

消費地が近いから、いつでも新鮮な野菜を提供できる強みも

北九州市で農業を営むメリットは消費地が近いことだと言います。輸送に費用を掛けず出荷できることに加え、小倉南区だけでも多品種を栽培しており、各農家が高い技術ノウハウを持ち合わせているのもこの地域の強み。また、市内小中学校の学校給食に地域の野菜の取り入れや、生産者・消費者・飲食店を巻き込んだ、地産地消サポーター制度などで北九州の農業を支援しています。今後は大葉春菊を全国で認知されるブランドに育て、海外にも出荷したいと岡村さんの夢は膨らみます。

最後に教えてもらった岡村さんお勧めの大葉春菊の食べ方は「大葉春菊のアーリオ・オーリオ。シンプルですが、大葉春菊の魅力を味わえる一品ですよ」とのこと。レシピは下の通り。

岡村さんお勧めのレシピ。奥様がよくInstagramにアップされるとか

【飲食店レポート】小倉の飲食店からも地域の農産物の魅力を積極的に発信

市外から訪れた取材班は大葉春菊の存在さえ知らなかったのに、取材の先々で「子どものころから春菊といえばこれでした!」と言われ続けたものだから、それならばぜひとも大葉春菊を食べたいと飲食店探し。小倉駅の近くで見つけたお店が『焼きもんや菜’s』でした。

生まれも育ちも小倉という店長の定野透さん(60)。高校卒業後に上京して調理師学校に通い、料理の世界で経験を積んで地元飲食店の料理長としてUターン。35歳の時に野菜をいっぱい食べられる飲食店をつくりたいと自身の店をオープンしました。
「外食すると栄養が偏るなんていう人もいますが、店をオープンした当時はコンビニでサラダが売られていることもなく、インスタント食品を家で食べる人も多くいました。だから野菜を主軸にした店にしたいと思っていたんです」。

地元小倉で開業し、2020年には25周年を迎えるという『焼きもんや菜’s』

北九州の農家さんはみんな研究熱心。その情熱を伝えたい

食材についてとても詳しい定野さんに、北九州産の野菜について尋ねます。
「産地との距離が近いから鮮度がいいですね。また、どの農家さんも研究熱心でさまざまな野菜と出合えます。過去にも市の主催する地産地消サポーターのツアーに参加して、多くの地元農家さんを訪ねました。そこで得た情報をお客様に伝えることが私たち飲食店の役割かも知れません」。
そういえば、岡村さんも「周辺農家さんはみんな研究熱心で常に新しいことに取り組んでいる」と話されていたことを思い出しました。

「市民性なのかも知れませんね。農家さんにも酒造メーカーさんにも研究者気質を持つ人が多いんですよ。触れてみると凄いことをしているのに、残念なことにPRする人が少ない。研究熱心だけれど、シャイな人が多いのかも知れません(笑)。だからこそ、逆に言えばそれで市場が守られているところもあります。希少性が高い大葉春菊もその1つですよね」。

「お客様においしい野菜をいっぱい食べて元気になっていただきたいですね」と野菜ソムリエの資格を持つ定野透さん。常連客から“かしら”と慕われている

北九州だからこそ味わえる食の魅力を知ってほしい

もちろん、定野さんも子どもの頃から春菊といえば大葉春菊のことだと思っていた1人。上京してはじめて通常の春菊を知ったそうです。
「春菊と違ってすぐに火が通るから30秒さっとくぐらせるだけ。春菊だと茎に火が通る頃には葉っぱがしんなりしているけれど、大葉春菊はすぐに味がしみるからね」。
地方の特産物をその地域へ行かずとも買い求めることができる時代。飲食店も同様に地方の有名店が東京に店を構えることも少なくありません。そんな時代にあって、良くも悪くもPRベタだという北九州市にはこの地でしか味わえない食材や店がまだ多くあると定野さん。
「博多に行けば遊びも買い物も楽しめるけれど、北九州市の魅力はおいしいものがあふれていること。博多にない魅力がたくさんあるので、博多に寄るついでに小倉にも足を伸ばしてもらえたらと思いますね」と定野さんは熱く語ります。

店の人気メニュー『白湯鶏スープのもつ鍋』の主役は大葉春菊!?

『焼きもんや菜’s』では、今回の主役である大葉春菊をあっさり白湯スープのもつ鍋で味わうことができます。一般的にもつ鍋にはニラを使いますが、同店では旬の時期には大葉春菊を使うそうです。そのお味は…見た目の通り肉厚で、聞いた通りのまろやかな味。独特のえぐみはなく、つるんとした食感にお箸がどんどん進みます。気がつけば取材班4人で大きな鍋をペロリ。この時期ならではの味覚を、大いに楽しみました。

聞けば大葉春菊を使った鍋は3月くらいまでとのこと。この美味しい鍋を味わいたいなら、”善は急げ”で北九州市へゴー!


「白湯鶏スープのもつ鍋」は2人前2400円(税別)。ご当地でしか味わえない希少価値の高い大葉春菊は香り高くやわらかな食感が鍋料理に最適!

【店舗情報】
居酒屋焼きもんや菜’s


〒802-0007 福岡県北九州市小倉北区船場町7-11
TEL093-522-8313
●営業時間17:00~23:00
●定休日/月曜日
ホームページはこちら

【北九州市についての問い合わせはこちら】
●北九州市コールセンター
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/shimin/file_0164.html
【北九州市の農業についての問い合わせはこちら】
●北九州市 農林水産部 農林課
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/san-kei/san-nourin.html
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★北九州市観光はこちらをご参考ください★
北九州市観光サイト「ぐるリッチ! 北Q州」

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