スマート化する林業。航空レーザーやドローンで効率化

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スマート化する林業。航空レーザーやドローンで効率化

スマート化する林業。航空レーザーやドローンで効率化
最終更新日:2020年02月12日

「自分の森がどこにあるかわからない」という山林所有者は多く、森林管理を任される側は現況把握から始めなければなりません。そんななか、航空レーザーで森林調査をおこない、共有化と効率化を実現したのが北信州森林組合です。
施業計画から生産まで一連の流れをIT化した「ICT施業システム」の開発など新しいことにも挑戦する組合に、スマート化の効果と課題を聞きました。

森林GISによる情報管理

長野県中野市にある北信州森林組合

北信州森林組合は、長野県北部に拠点をもち、新潟県境の5市町村を担当しています。管理を任せている山林所有者(組合員)は約5500人。職員は組合員を訪ね、どこの木をいくつ間伐するのかを丁寧に説明していきます。
こうした詳細説明ができるようになったのもスマート林業の効果。同組合が管理する森林は、急峻(きゅうしゅん)な斜面に加え、農地のあとに植林された零細林が多く、天然林と人工林も混在していました。同組合の参事、田中忠(たなか・ただし)さんは、「かつては職員が実地調査をし、資源量の見積もりをしていました。デスクワークの時間が長いうえに誤差もありました」と当時の状況を振り返ります。

人海戦術には途方もない時間と労力がかかる

こうした背景から同組合は2014年、アジア航測と連携して森林計測データの活用を開始しました。飛行機を使って1平方メートルごとにレーザーを飛ばして計測し、ドローンによる森林調査と地上レーザーも重ねることで、樹高、胸高直径、材積データを集積していきました。さらに森林GIS(地理情報システム)による山林情報のデジタル処理を加え、誤差がなく、所有者が持つ材積も分かる高精密な森林GISを作りあげたのです。

航空レーザーを活用して計画生産も目指す

所有者が持つ材積がどれだけあるかが明確になり、PC上で間伐計画を立てると、所有者の木をどれだけ間伐することになるかが詳細に分かるようになったそうです。
スマート林業というと、木を切るための機械化をイメージしがちですが、実際に労力がかかっているのは細かい山林を所有者ごとにまとめる境界明確化や、施業効率をあげるための集約化だといいます。

ICT施業システムで働き方改革

収益力を向上させるためには、生産力を高めることが必要です。デスクワークの負荷を軽減して現場に人手を回すことや、目が行き届きにくい現場の管理、そして施業の効率化も課題でした。
同組合は林業の川上から川下までの一連をITで効率化する「ICT施業システム」の開発にも取り組んでいます。

まず、森林GISデータを解析した情報をもとにPC上で施業計画を立て、業務当日の最適な機械と、林道・作業道をあらかじめ選定しておきます。これまでは施業する場所から一番近くにある機械を使う傾向にあり、最後に現場に行った人は、施業の内容に関わらず残っている機械を使っていました。また、木を切ってから作業道に出すまでの導線も人によって違い、安全性と効率性に課題がありました。事務所であらかじめ作業計画を決めることで、現場についた作業員は、スマートフォンやタブレット端末のシステムで当日の計画や作業指示を確認しながら施業を始めることができるようになりました。
また、生産量や作業工数、勤務日報も、現場から端末入力すればリアルタイムで事務所の元データに反映されます。

事務所への往復の手間も省ける

木材検収システムアプリもあります。切り出した木材を測り、アプリに径級(木材の大きさのクラス分け)や本数を入力することで管理データが自動的に作成されます。作業員が現場で入力することで、手書きの情報を事務所に持ち帰りExcelに入力し直すという二度手間がなくなりました。

木材検収システムアプリ

スムーズに木材流通ができるよう整備された中間土場(ストックヤード)にもシステムが活用されています。大型車が入りやすい場所に土場を作り、輸出用木材、建築用木材、バイオマス用木材など規格ごとに大量に木材をストック。職員が、運び出す木材のQRコードをスキャンすると、そのデータが事務所に送られ、いつ、どの木材を出荷したかがわかります。
また、木材の積載量が自動的に算出できるよう、車両重量計も設置されています。トラックが重量計の上で搬出作業をすることで出荷量が瞬時にわかります。
今後は安定供給を実現し、大規模な取引にも対応できるよう取り組んでいくそうです。

課題と期待の組合運営

スマート林業のフロンティアとしてけん引する同組合ですが、課題もあります。例えば勤怠管理。作業員はスマートフォンで現場から報告ができますが、体調や当日のモチベーション、悩みなど細部までは見られません。
経営面でも、航空レーザーやシステム導入の初期費用で当面は赤字です。減価償却が完了する頃にはまた新しい技術に対応するべく投資が必要になるでしょう。収益は組合員に還元するため、大きな利益を得られるわけではありません。
今後、スマート林業を進めながらどのようなビジネスが求められるのでしょうか。田中さんは海外輸出に商機を感じています。「日本人は生活様式が変わり、今や無節材などの優良木材を使いたいという人は少ないです。一方でアジアの富裕層は良質な日本木材に価値を感じています。以前、上海視察でマンションを見に行ったのですが、建設業者はハコだけ作り、内装は購入者が自分たちで行うそうです。お金をかけてでも木のぬくもりを感じられる日本木材を使いたいという人に好みの木材を提案できれば、ビジネスチャンスになると思います」
木を切ってから販売する従来の経営から、オーダーメード型の経営へ――。北信州森林組合の挑戦はこれからも続きます。

【写真提供】
農林水産業みらい基金

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