日の目を見ずに大量に廃棄される花を救いたい
新型コロナウイルスの感染拡大を少しでも抑えるため、多くの人が集まるイベントは軒並み中止になっています。大規模なコンサートやスポーツ大会はもちろんのこと、卒業式、入学式、そして結婚式まで中止となり、イベントを彩る花の需要は激減。花農家がどんなに美しい花を生産しても、市場で値が付かなくなっています。市場に持ち込めば引き取ってくれるとはいえ、値が付かなければ輸送コストがかさみ、花農家が抱える赤字は膨らんでしまいます。その結果、多くの花が廃棄されているといいます。
そこで廃棄される花を少しでも減らそうと、立ち上がった人がいます。フラワーサイクリストの河島春佳さんです。フラワーサイクリストとは、どのような活動をする人なのでしょうか。河島さんがこう説明してくれました。
「結婚式場やイベント会場では、短時間飾られただけで多くの花が廃棄されているんですね。お花屋さんでも3~4割程度の花が廃棄されていて、そのような無駄に捨てられる花、“ロスフラワー”を少しでも減らしたくて、ドライフラワーにして2次利用するフラワーサイクリストの活動を続けてきました」
ただし、河島さん一人では救える花には限界があります。そのため生花廃棄に問題意識を持つドライフラワー作家、花屋さん、農協職員などに、各地域を受け持つ“アンバサダー”を担ってもらい、廃棄する花を減らす取り組みを進めてきました。
「これまでの活動で各地の花農家さんとつながりができたのですが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、花の需要が激減したため、多くの花農家さんが大変な状況に追い込まれていると伺いました」(河島さん)
市場に持ち込んでも赤字が膨らむばかり
3月上旬には、付き合いのあった花農家に出向いて聞き取り調査を行ったところ、切り花1本を生産するのに原価30円程がかかるのに、市場では1円の値段しかつかなかったといいます。販売しなければ売り上げは失われてしまうとはいえ、切り花1本に1円の値段しかつかないようでは、市場に持ち込めば持ち込むほど輸送コストの赤字が膨らむことになり、花農家は泣く泣く花を廃棄するしかありません。
別の花農家からはせっかく育てたダリアを毎日5000本も廃棄している話も寄せられ、河島さんは花農家を支援し、廃棄される花を減らす取り組みを始めました。その一つが、河島さんが代表を務める株式会社RIN(リン)で立ち上げたオンラインショップ「Flower cycle marche(フラワーサイクルマルシェ)」での販売代行です。
「市場に持ち込んでいては赤字になるばかりですから、少しでも花農家さんの力になりたいと考え、生花の販売代行を始めました。Flower cycle marcheを窓口にして生花を販売し、花農家から直接購入者のもとに送ってもらうようにしています。ありがたいことに、オンラインショップを立ち上げてから1カ月足らずで約2000人の購入者を花農家さんとマッチングでき、5万本以上の花を救うことができました」(河島さん)
ドライフラワー作品にして新たな形でよみがえらせる
さらに河島さんの取り組みは生花の販売代行に留まりません。これまでにもイベント会場や花屋で廃棄される花を回収してドライフラワーを作っていましたが、今回のウイルス禍の影響で花農家のところで廃棄量が増えている花を買い取り、ドライフラワーにして新たな作品として販売しています。
ただし、どんな花でもドライフラワーにできるわけではありません。河島さんはできる限り多くの花をドライフラワーにできるよう、その製法の改良にも取り組んでいますが、ドライフラワーに不向きな花もあるといいます。そのため春の時期ならカーネーション、スターチス、シャクヤクなどの一部の花に限られますが、それでも河島さんはできるだけ多くの廃棄される生花を買い取り、できるだけ新鮮なうちに乾燥させて、生花ならではの鮮やかな色を保ったドライフラワーにしています。河島さんがこう続けます。
「私たちのオンラインショップを通じて生花やドライフラワーを買っていただければ大変ありがたいのですが、とても小さな会社なので、販売代行にしろ、ドライフラワーづくりにしろ、できることには限界があります。ですから、私たちのオンラインショップに限らず、花の通販サイトを通じて花を買ってもらいたいですね」
緊急事態宣言の下、外出がままならず、ストレスがたまりやすい状況ですが、花が一輪あることで癒やしをもたらしてくれるかもしれません。この機会に、廃棄される花“ロスフラワー”を減らすためにも、花農家を支援するためにも、生花店やオンラインショップを通じて花を購入してみてはいかがでしょうか。
Flower cycle marche(株式会社RIN オンラインショップ)
画像提供:株式会社RIN