新型コロナウイルス感染拡大 客足遠のく観光イチゴ農園がとった対策とは

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新型コロナウイルス感染拡大 客足遠のく観光イチゴ農園がとった対策とは

新型コロナウイルス感染拡大 客足遠のく観光イチゴ農園がとった対策とは
最終更新日:2020年07月30日

中国で発生した新型コロナウイルスは、瞬く間に世界中に拡散してしまいました。日本では感染拡大を防ぐため、多くのビジネスマンが在宅勤務となり、学校は休校。不要不急の外出自粛要請にはじまり、対象地域への「緊急事態宣言」も発令され、多くのレジャー施設は休業措置をとるなど、苦境に立たされています。それは多くの来園客で成り立つ観光農園も同じこと。春の観光シーズンに多くの人が外出を控えたために観光農園は窮地に陥っています。千葉県長生郡長柄町で観光農園「ママズ・ベリー」を営む斉藤久(さいとう・ひさ)さんは、直販や近隣の道の駅への出荷を強化するなどして、新型コロナウイルス禍を乗り切ろうとしています。

台風で生育が遅れていたイチゴがとれ始めた矢先に……

房総半島のほぼ中央に位置する観光農園「ママズ・ベリー」。高速道路の整備が進んだことで、千葉県の都市部だけでなく東京や神奈川からもアクセスが良く、春の観光シーズンともなれば、午前中にイチゴがなくなって早じまいすることも珍しくありませんでした。

ただし、今シーズンに関しては、2019年に関東地方を直撃した台風15号により、4棟あるハウスのうち1棟が倒壊。建て替えることになったハウスでは定植が遅れただけでなく、本来なら暖房で加温しながら栽培するところが野ざらしになったため、イチゴの生育が遅れてしまいました。シーズン前半の12~2月までは例年の7割程度の生産規模で営業しなければならず、農園を営む斉藤さんは「お客様から問い合わせがあっても断らなければならないことがありました」と振り返ります。

台風15号により倒壊したビニールハウス

それだけに、遅れて定植したイチゴが実をつけ始めた3月からは、より多くの人に喜んでもらえると期待していましたが、その矢先に新型コロナウイルスの感染が拡大。政府から一斉休校、在宅勤務が要請されてからは、客足は一気に遠のいたといいます。

「私自身、感染が広がらないようにするにはイチゴ狩りを休業したほうがいいのかという戸惑いはありましたが、休業補償なども示されていない中では死活問題になりますからイチゴ狩りの営業は続けました。皆さん、学校がお休みになり、在宅勤務が要請されているのに外出してもいいのかという躊躇(ちゅうちょ)もあったのでしょう。3月最初の土日から客足は大幅に減ってしまいました」(斉藤さん)

イチゴ狩りだけでは売れ残る 販売を強化

それでも足を運んでくれた来園客には安心してイチゴ狩りを楽しんでもらおうと、ハウス内では常にマスクを装着してもらい、手を消毒するアルコールを置くようにしました。「他の人が触ったイチゴを食べるのは嫌がる人もいるのではないか」という常連客からのアドバイスを参考に、ビニール手袋を配布して、イチゴを摘み取る利き手に着けてもらうようにしました。

イチゴ狩りの来園客用に消毒用アルコール、ビニール手袋を配置

安心して楽しんでもらえるようにしているとはいえ、客足が遠のいたイチゴ狩りだけでは、実ったイチゴのすべてを販売することは難しく、斉藤さんは販路を増やすことにしました。ここ数年、イチゴ狩り以外では、自分のハウスで直販していただけでしたが、新規就農時に出荷していた近隣の「道の駅ながら」にも再びイチゴを出荷するようにしました。

「外食の自粛からテイクアウト需要は伸びているようですから、道の駅に出荷した分はよく売れました。ただ、イチゴ狩りのお客様が減って困っているのは私だけでなく、近隣のイチゴ農家さんも道の駅に出荷するようになって、徐々に売れ残るようになりました。そこで以前からお世話になっていた長柄町役場の産業振興課の方に相談したら『役場で売っていいよ』と言ってくださいました」(斉藤さん)

さっそく収穫したイチゴをパックに詰め、ビジネス街で昼食時に弁当を売る移動販売車のように役場の駐車場で販売させてもらったところ、多くの役場職員が買ってくれたといいます。「このままイチゴが売れ残ってしまったらどうしよう……と不安に感じていたところで、役場の皆さんに買っていただいて本当にありがたかったですね」と斉藤さんは語ります。

イチゴのパック詰め作業をする斉藤さん

消毒用アルコールやビニール手袋の確保が心配

こうした販売を強化しても、ここ数年、イチゴ狩りを中心にしてきたこともあり、すべてのイチゴを売り切ることは簡単なことではありません。しかしママズ・ベリーでは以前から、生鮮としては売れない小さな実を冷凍してジャム用イチゴとして販売したり、アイスクリームとして加工したりしていたこともあり、加工用に回すイチゴの量を増やすことで、実ったイチゴを無駄にしないで済んでいます。

ジャム用の冷凍イチゴと「ママズ・ベリー」のイチゴで作ったアイスクリーム

冷凍イチゴとして販売するには、一つ一つ、へたを取り除かなければならず、収穫作業の手間は増えることになりますが、「販売強化と冷凍イチゴを増やすことで無駄にするイチゴを出さないでいられるのは、うちの生産規模が小さいからです」と斉藤さんは話します。

「観光バスでやって来る団体客を受け入れていた大規模な農園のほうが大変だと伺っています。今年のイチゴをあきらめて早々に水稲作に力を入れると言う方がいますし、このウイルス禍を機に、これまで取り組んでいなかったジャムなどの加工品の製造を検討していると話す方もいます。皆さん、それぞれに打開策を模索しているようですから、私もシーズン最後まで頑張って、無駄に廃棄するイチゴをできるだけ少なくしたいですね」

千葉県が運営する普及指導センターに問い合わせたところ、「緊急事態宣言」下でもイチゴ狩りの営業を続けられるようで、斉藤さんはゴールデンウイークまではイチゴ狩りと道の駅などへの出荷を並行して続けていく予定です。消毒用アルコールやビニール手袋の入手が難しくなっていますが、「なんとか安心してイチゴ狩りを楽しんでいただける環境を整えていきたい」と斉藤さんは語ってくれました。

斉藤さんが経営する観光農園「ママズ・ベリー」

ママズ・ベリー

(取材・撮影・執筆/斉藤 勝司)

《追記》2020年4月17日
新型コロナウィルスによる緊急事態宣言により営業自粛要請があったため、
ママズ・ベリーは今シーズンの観光農園営業を終了しました。
直売と道の駅への出荷は、イチゴの状態を見ながら5月中旬頃まで続ける予定だといいます。

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