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少年時代に育まれた繊細な味覚、シェフが厳選する農産物とは

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

少年時代に育まれた繊細な味覚、シェフが厳選する農産物とは

作物の品質にこだわっている農家なら、自分の育てた作物の味がどう評価されるのか気になるのは当然だろう。それを評価する立場にいるのがシェフ。彼らは何を判断の基準にしているのか。繊細な味覚で食材を選び、こだわりの料理を提供している中村大吾(なかむら・だいご)さんに話を聞いた。

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ソースを使わないこだわりのハンバーグ

東京都港区、地下鉄虎ノ門駅から歩いてすぐのところにあるレストラン「THE GRILL TOKYO(ザ・グリル・トーキョー)」。看板メニューの黒毛和牛ハンバーグを食べてまず驚くのは、その弾力だ。軟らかくかみ切れるのではなく、しっかりとした歯応えがあり、直後に濃厚な肉の味が口中に広がる。
弾力の秘密は、直径が9ミリと粗くひいたミンチにある。中村さんによると普通は2ミリ程度で、大きくても4ミリ。もっと大きくすると、細かい骨の破片などがひき肉の中に入ってしまう恐れがあるからだという。
これに対し、中村さんは自ら包丁を握って丁寧に肉をさばき、骨などを完全に取り除いてから9ミリの穴の機械にかけてミンチにする。そこまでするのは、「肉らしさをはっきり出したい」と考えているからだ。
ハンバーグにソースをかけないのもこだわりの一つだ。代わりに出すのは牛の骨からとるダシの「フォン」。タマネギやニンジン、ニンニクと一緒に16時間ほど煮込んで作る。味の濃いデミグラスソースを使わないのは、やはり肉の味そのものを楽しんでもらいたいと思っているからだ。

看板メニューの黒毛和牛のハンバーグ

中村さんは今44歳。バーテンダーの仕事を長年やった後、勤めていたバーの店舗展開のエリアマネジャーを担当し、さらに飲食店関係のコンサルタントの仕事を経て、東京都渋谷区にレストラン「Bistro Gastros(ビストロ・ガストロス)」をオープン。2018年に2店目のザ・グリル・トーキョーを開いた。
中村さんに話を聞くのは今回で3回目だ。改めてインタビューしてみたいと思ったのは、以前取材したときの言葉が印象に残っていたからだ。
「約20年ぶりにある店でハンバーガーを食べてみて、驚いたんです。見た目はトマトやパンやハンバーグなのに、素材の味を感じることができなかったんです」。コンビニの弁当を食べても、味に違和感を抱くという。
あらかじめ確認しておくが、本稿は普通に売られているハンバーガーや弁当などが体によくないとか、味が悪いとか言いたいわけではない。多くの人はそれらをおいしいと思って食べているし、筆者もその一人だ。
だが中村さんが評価し、追求している味は違う。その背景と、中村さんが選んだ食材の魅力を知るのが、今回のインタビューの目的だ。

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