【北海道栗山町】農家になって叶えた、オリジナルの暮らし

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【北海道栗山町】農家になって叶えた、オリジナルの暮らし

【北海道栗山町】農家になって叶えた、オリジナルの暮らし
最終更新日:2020年11月04日

北海道の玄関口である新千歳空港から車で45分に位置する栗山町。栗山農業振興公社では、かねてより新規就農者の受入を積極的に行ってきました。栗山町の農業を一言で表すと『自由』。一人ひとりが、自分のライフスタイルに合わせた“農”を取り入れ、オリジナルの暮らしをクリエイトしています。『アグリ(栗)エイティブ』する町、栗山町に移住し新規就農を果たした3名のスタートと今をお伺いしました。

大阪出身サラリーマンから、
パティシエから指名をもらうイチゴ職人に

栗山町を見晴らすハウス群の前で「おがファーム」の園主、小川晃寛さんに会いました。ハウスをのぞくとこんもりしたイチゴの畝が4本ずつ伸び、中に朱色の果実が見えます。このイチゴ農園を受け継いだのが、大阪出身の小川さん。もとは食品流通系のサラリーマンで、農業とは特に縁のない生活でしたが、農業に対しては良いイメージを持っていました。東京の農業就活フェアに参加したことがきっかけで、北海道・中富良野町の農業法人へ思いきって転職したのです。現場で他のスタッフと共に、麦、大豆、ばれいしょ、タマネギなど有機栽培を経験。4年目になり、周りのスタッフが独立をしていくのを目の当たりにし独立を考え始めた時、資金状況や希望に合った選択肢として、第三者経営継承を選びます。第三者経営継承とは、後継者を求める農家さんの農園と就農希望者を結ぶ仕組み。後継者を求める農家さんと条件や相性が折り合えば、農地や設備はもちろん、生産と経営のノウハウも受け継げるのが大きな魅力です。

出荷を待つイチゴ

継承農家を探す中で出会ったのが、引退予定のイチゴ農家・寺島さんでした。「信頼できる親方さんに出会えて、また農業法人の元同僚たちがイチゴ農家になった話も聞いていたので、すぐに一からイチゴをやる気持ちが決まりました」。一から農園をおこすのではなく、軌道に乗った農園を栽培ノウハウごと継げるのは新規就農者にとっては心強いことです。1年目は親方夫妻と一緒に畑に出て、徹底して教わった通りにイチゴの仕事を覚え、2年目は自分がパートさんを使って働き、3年目の2015年、ついに独立することができました。「親方さんは、自力でやっていけるように教えるよという方。幸運でした」。

主力の四季なりイチゴ、すずあかねの収穫ピークは5月、7月、9月下旬〜12月。北海道の四季なりイチゴは本州産地の端境期に出荷するのが強み。インターネットを通じて、道外に店を構えるケーキ店のパティシエから直接注文がくるほど。ヘタのギリギリまで赤く色がのるように育てたイチゴは、見た目も愛らしくお菓子に向いていると好評です。継承後も売り上げ目標を着実にクリアしています。
興味が湧いたら飛び込んでみる行動力と、そこから生まれた人の縁がつくった、小川さんのおがファーム。「仕事は大変なんだけど、実は観光農園も4棟だけやっていて…。直接おいしいねって言われると、やめられないんです」。インタビュー中に何度もこぼれる笑顔に、今の小川さんの健やかな気持ちが窺えました。

小さくても農家は一種の起業です。何が作りたいか、どんな場所でどんな生活がしたいか、とにかく自分の希望が固まるまで農業に携わってみてほしい、と小川さん。

パプリカを買ったことがなかったパプリカ農家が取り組む、
「楽しい、おいしい、続けられる」農業

畑の中にある数棟のハウス。中には、濃い緑の中に見え隠れする鮮やかな赤や黄色が!ここは「下向ファーム」の敷地内で、「池田農林」代表の池田真人さんが1ヘクタールを借りて営農しています。池田さんは千葉県出身。約10年の会社勤務を経て、親子4人で栗山町へ移住しました。
「農業には縁があるというか無いというか…」と前置きして話してくれたのは、農業への思い。母方の実家が銚子で農家を営んでおり、高校生の頃、頼みこんで手伝わせて貰ったという池田さん。世界の食糧問題を解決するのは農地を守る砂漠緑化だ!と北海道大学農学部を志望。入学後は森林科学科で緑化に深く関わるキノコの一種、菌根菌の研究をしていました。「就活でも植林ができそうな企業を探し、決まったのが航空機で地図測量を行う会社でした」。緑化研究を志望しつつ営業職で入社しましたが、その仕事の面白さに目覚めました。経営企画部では東証上場プロジェクトを担当するなど、多忙でやりがいがある職場。でも、池田さんの希望は北海道に永住することでした。
「今の環境で希望が叶わないなら別の仕事を探そうか。ならばやっぱり農業だと思ったんです」。大学の研究室で同期だった妻のほろかさんも、同意見でした。

収穫したてのパプリカは、はちきれんばかりの瑞々しさ

そこで研修先を探して、栗山町で農業研修を受け入れている下向義雄さんの農場へ。夫婦で下向さんの農場で、就農前研修を行いました。「下向さんの指導法は感覚的というか、とにかく実地でやってみて覚えなさいというスタイル。それが僕らには合っていました」。実は、下向さんはメロンとパプリカ栽培の名人。特にパプリカは道内で栽培が始まって以来20年の、草分け的存在です。土耕の、とあえて呼ばれるのは、日本で流通するパプリカの約9割は海外で水耕栽培され、土で育てたパプリカが希少品だから。「特に秋のパプリカは、常温で2週間パリッとして品質が変わりません」。日持ちがし、味が濃くてみずみずしいパプリカは購入者から評価が高い。2年半の研修を終えた池田さんは下向さんから事業継承のオファーを受け、農園内に土地を借りて、独立を果たしました。就農3年目となる2020年は、畑4反でコーンとカボチャを、ハウス5棟でメロンとパプリカを栽培しています。「今、うちのメロンやパプリカが喜んでもらえるのは、下向さんの技術の凄さです。何十年もかけてつくられた土という財産を、受け継がせて頂く。だから、僕も下向さんと同じ路線で営農していきたいと思っています。」

「本当言うと、自分でつくるまでパプリカって買ったことなかった」と、池田さん

コーンやメロンと共に、北海道の土耕パプリカを広く知ってもらうための販路拡大にも取り組んでいます。師匠の下向さんから引き継いだ販売先に加え、地元の新規就農者が集まって立ち上げたECサイトを通じての販売も始めています。大量収穫ができる時には、お知らせメールを送ると、購入を希望してくれるような特定のファンも増え始めたそう。
 迷ったり悩んだりした時、立ち返る言葉があります。それは、池田農林の立ち上げ時に夫婦で話し合って決めた、「楽しい、おいしい、続けられる」です。「悩んだ時は、それは楽しめる?それは長続きする?と考えてみる。それで、ブレずに悔やまずに進んでこられたんです」。楽しかった、で終わるように行動を選択していこう。もちろん、自分たちも畑の土も元気で、長く続けられるやりかたで。立ち返る場所、という発想は、池田さんがハードなサラリーマン時代に学んだ事の一つです。
「来年、下向さんが小麦と大豆を作付している10ヘクタールを、うちがやらせてもらうことになりました。ちょうど3人目の子どもが生まれる予定なので、僕1人でどこまでやれるか、来年は勝負の年かも知れません」、と池田さん。今は第三者継承への途上ですが、栗山町に本格的に根を下ろす日は近そうです。

家族と過ごす時間を軸に、大好きな農業で暮らす。
主体的選択の先にあった幸せ。

2016年に新規就農で生まれた農園「自然菜園らっちゃこ」では、長崎県出身の榎本和樹さんと埼玉県に実家のある妻の亜沙さんが無農薬無化学肥料の野菜を栽培しています。農業を志して移住した北海道の研修先で出会って結婚。2人の就農までの足どり、そして就農5年目の思いを聞きました。
和樹さんが農業に興味を持ち始めたのは、大学生の頃。その時はまだ憧れの気持ちだけで、現実の進路は地方公務員を選択しました。しかし、役所の業務を続けながらも「広い北海道で就農したい!」と想いが募ります。そして4年目の2010年、就農への思いは強かったにしても、まだ何のあてもない段階で退職してしまったのです。
「何も具体的なきっかけはないんです。ただ、自分にとって何かが違うという違和感が積み重なった感じです」。それは決して軽い気持ちではありませんでした。実は和樹さんには小学生の長男がいて、息子のためにも転職を成功させるという強い意志を持っていたのです。和樹さんは親子2人で札幌市に引越し、アルバイトをしながら農業への転職を模索します。そして、農業イベントで勧められた恵庭のとある農園へ。ここで、同じく研修生として農業を学んでいた亜沙さんと出会います。
 
「収穫した時に、達成感を感じられる作物を育てたい」という二人の想いからメロンづくりの師匠を探し求めていた榎本さんたちは2014年、メロンの匠と呼ばれる栗山町・土門農園のことを知ります。初めて訪ね、食べさせてもらったメロンのおいしさ、そして親方の人柄に触れて感動した2人はその場で研修を願い出て、親方の土門さんも快諾。2人は2年間懸命に親方の技術を学び、2016年に町内の農地0.9ヘクタールを借りて、独立を果たしました。
2020年現在、自然菜園らっちゃこは無農薬無化学肥料でメロンとトマトを栽培、直販しています。安全性や自分たちの健康について考え、今まで様々な農家の先輩たちの姿を見聞きした結果、農薬は不使用。有機栽培の決め手になる土づくりは難しく、自分たちの畑にベストの方法を試行錯誤を重ねています。それでも、おいしくて安心な作物づくりを目指して工夫した結果、メロンの作柄は安定し、目指していた味にかなり近づいています。メロンは個人直販がメインで、味の良さで売れ行きも好調。トマトは研修期間に和樹さんが納品を担当していたスーパーとの縁で、「ご近所やさい」として近郊の店頭に並んでいます。
 
現在二人のお子さんがおり、下の子は今年1歳。今は家族で過ごす時間を最優先にしていると言います。「私たちにとって農業とは、働き方を自分で選べる職業です。会社勤めと違って、働き方も労働時間も自己責任で決められる。それが私たちの性に合っているんです」。収入を上げたい人は面積を増やし、長時間働ける。でも自分たちは家族のことを中心にして、好きな畑仕事で生計を立てられるのが幸せ。自然豊かな栗山町で、自らが舵取りできる農家という暮らし方に、榎本さん夫妻は心から満足しています。

この日も午後17時前には作業を切りあげ、保育園で待つお子さんをお迎えに。18時以降は家族で過ごす時間なのだそう

自由な農業を後押しする栗山町の受入体制

栗山町では、新規就農の際の作物の縛りも、販路の縛りもありません。作りたいものを、自分のスタイルで栽培する、そんなスタイルの新規就農者の生活がありました。作物を作る上で、重要になるのが販売経路。その点においての栗山町の魅力はアクセスの良さ。本州と結ぶ空港からも近く、また北海道一の大都市である札幌とも車で1時間以内。この立地が、新規就農者の販路開拓を支えている要因です。さらに、自然を楽しめる場所で暮らしながらも、博物館・美術館といった文化的な要素は大都市の施設を気軽に訪問できる。これは、子育て世代の家族にとっての魅力にもつながります。
必要なものが身近に揃っている町で、自分たちに必要なものを自分たち目線で選んで、暮らしを創造していく。アグリ(栗)エイティブな町、栗山の神髄がここにあります。

問い合わせ先
一般財団法人
栗山町農業振興公社
〒069-1512北海道夕張郡栗山町松風3丁目252番地
TEL 0123-73-2500
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