時間がかかる「見回り作業」が不要に?
農業では圃場の見回りは必須の作業。野菜の状態はどうか、ビニールハウス内の温度や湿度は適切か、ちゃんと光が当たっているかなど、確認すべき項目は多岐にわたります。最近では畑やビニールハウス内の状態をセンサーで読み取り、自動的に環境制御を行うサービスも多く開発されています。
一方でこうしたシステムは費用が高く、特に小規模農家にとっては導入のハードルは高いと言えるでしょう。
そこで、圃場の温度・湿度・照度の異常を検知し、生産者へ電話・メール・SMSで通知するサービスとして開発されたのが、KDDIウェブコミュニケーションズの「てるちゃん」です。圃場に異常があったときに指定した伝達手段で連絡が入る仕組みで、異常がないのに何度も見回りに行く必要がなくなるため、生産者の見回りの負担軽減が見込まれます。
圃場での実証実験で成果
てるちゃんの導入によって、夜中の見回りの負担から解放された事例も。
沖縄市糸満市の小菊農家では、夜間の電照によって小菊の生育を制御し出荷時期を調整しています。しかし、ブレーカーが落ちるなどして電気が点灯しない日が続くと商品価値に影響が出るため、少なくとも2~3日に1度は電照が始まる深夜に圃場の見回りが必要。生産者は睡眠時間を削ることになり、時間だけではなく体力的にも大きな負担となっていました。
そこで、この農家はてるちゃんの実証実験に参加。電照切れを自動的にセンサーで検知してSMS通知する仕組みを導入しました。電照の始まる時間から一定間隔でてるちゃんが圃場を監視し、異常があった場合は朝7時にSMSで農家に通知があるようにしたところ、月に6~7時間かかっていた深夜の見回りが不要になったとのことです。
その他、マンゴーのビニールハウス内の温度管理でも、見回りのための移動時間が45%削減されるなど、成果をあげています。
酪農・畜産業界にも応用が可能
てるちゃんは温度・湿度・照度の管理が必要なさまざまな農業で応用が可能で、畜産施設での温湿度管理でも使用できます。将来的にはセンサーの種類を増やし、他の農作物や圃場環境にも対応していく予定です。
小規模農家に適した価格帯と操作性
てるちゃんの導入には高価なIoT機器は不要。最小構成(ルーター1台・センサー1つ)なら機器費用は24, 750円、システム利用料は月990円で利用を開始できます。
また、IoT機器に不慣れな人でも簡単に使える設計も魅力で、申し込み後は手元に到着した小型センサーを監視したい場所に設置し、ルーターを電源につなげば設置作業は終了。必要な設定はスマートフォンやPCなどのブラウザ画面からできます。
電話などよく使う連絡手段で圃場の異常を通知してくれるという「てるちゃん」。低価格で導入のハードルが低く、IoT機器に不慣れな人でも使いやすい新たなサービスとして、注目が集まります。
【画像提供】株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ