酪農ヘルパーとは?
酪農家に代わり、毎日のお世話や搾乳といったお仕事をする職業です。酪農ヘルパーのおかげで、酪農家は休みをとることができたり、人手が必要な時に要請することができます。
酪農ヘルパー組合とは?
ヘルパーを利用したい酪農家たちが加盟する組合員でつくる集まりの名称です。『十勝清水町酪農ヘルパー有限責任事業組合』では経験豊富なヘルパーをチーフヘルパーと呼びます。チーフヘルパーは、組合の運営にも関わる仕事をまかせられるリーダー的な役割を果たします。
■□■お話を伺ったのはこちらの方々■□■
■谷野比奈子さん
宮城県出身の21歳、酪農ヘルパー2年目。農業高校、農大を経て、同組合でインターンシップを体験したことがきっかけとなり新卒で就職。
■小畠富見尾さん
北海道湧別町出身の46歳、在籍13年目でチーフを務める。以前は特定の牧場に勤務していたが、たくさんの牧場を回って毎日変化がある方が性格に合っていると酪農ヘルパーに転職。
■藤田卓芳さん
組合長を務める。組合員と酪農ヘルパーの橋渡し役。双方の関係性が良好であるのも組合長の力。
■若原幸雄さん
組合の事務局を務める。組合員からのヘルパー利用の受付窓口。JA十勝清水町畜産部部長。
特色は「裁量権の大きさ」と「確実なステップアップ」
『十勝清水町酪農ヘルパー有限責任事業組合』は2007年に設立しました。在籍する酪農ヘルパーは組合の正社員として採用され、現在は20~40代の専任ヘルパー8人(うち女性3人)で町内84戸の酪農家をサポートしています。珍しいのは10年前後勤務のベテランヘルパーが3人もいること。この定着率の高さの秘訣はどこにあるのでしょうか?
一番の特徴は何でしょうか?
小畠先輩:「一番の特徴は、依頼が来た酪農家さんにどのヘルパーを派遣するか、新人と先輩の組み合わせはどうするかなど、シフトの調整は僕たちチーフヘルパーが中心となって決めていることだと思います。他の組合では事務局が行うことが多いと聞きますが、十勝清水町では酪農ヘルパーの成長段階を見て、チーフヘルパー側で決めています。これは何よりも酪農家さんが受け入れてくれ、また事務局からも信頼されているから成り立つシステムですね」
藤田組合長:「それぞれの酪農ヘルパーのレベルや働きぶりは、私たち酪農家よりもチーフヘルパーのほうが把握しています。事故なく安全に仕事をするには、いつも近くで見ているチーフヘルパーにシフト決めや人員配置をおまかせするのがベストだと考えています。このシフト組みをまかせる文化は、組合設立当初から続いています」
JA若原部長:「酪農ヘルパーさんのことを一番知っているのはチーフヘルパーさんです。だからシフトもキャリアプランを立てるのもチーフヘルパーさん側におまかせしています。この裁量権の大きさが、長く働いてくれる理由の一つだと思っています」
新人ヘルパーのキャリアアップにはどのように関わっているのですか?
小畠先輩:「酪農ヘルパーの仕事は搾乳や餌やり、牛舎の清掃などです。毎日同じような仕事をしているように思えますが、実はヘルパーは1、2、3年目ではできることや求められていることがそれぞれ違います。 始めはとにかく作業を覚えることが中心ですが、徐々になぜその作業をするのか理解し、段取りを考えて動くことが必要になってきます。チーフヘルパーは新人ヘルパーの近くで仕事ぶりを見て、酪農家さんの意見も聞き、その人のペースでステップアップできるように段階に合わせて仕事内容を変えています。3年というのは、乳牛が生まれて、搾乳ができるようになり、酪農家の経済を支えることができるようになるまでのサイクルでもあるので、仕事内容を覚えるにはとてもいい期間なんです。そこまで頑張って続けられたら面白さも奥深さもわかると思うので、しっかりとフォローしていこうと思います。」
酪農ヘルパーの意義とやりがい
酪農ヘルパーとはどのような存在ですか?
藤田組合長:「酪農という仕事は生き物が相手なので毎日やらなくてはならない仕事です。明日の仕事を今日前倒しでやるということもできません。自分の結婚式や親の葬儀でも休めませんし、けがや病気で廃業するしかないこともあります。酪農ヘルパーの皆さんが代わりに牛の世話をしてくれるから休めるんです。私たち酪農家にとって欠かせない存在なんです。だから大事にしたいし、しっかり育ってほしいんです」
谷野さん:「休みのない酪農家さんの大変さを知り、だからこそ酪農ヘルパーが必要だと分かりました。人の役に立つ仕事なのでやりがいがありますし、“成長したね”と言ってもらえるのがすごく嬉しいです」
藤田組合長:「新人ヘルパーへの声がけは大事にしていますね。本人へ直接言うだけでなく、『〇〇さんが、谷野さんは最初に比べたらとても上達したねって言ってたよ。』など組合員を通じて聞こえてきた声も教えてあげています。ちょっとしたことですが、本人のやる気にもつながると思っています」
酪農ヘルパーってなに?から始まった。
合同説明会で存在を知り、興味がわき勢いでインターンシップに参加しました!
酪農ヘルパーになったきっかけは?
谷野さん:「もともと農業大学校に通っていたのですが、酪農ヘルパーという職業は全く知りませんでした。合同説明会で存在を知り、興味がわき勢いでインターンシップに参加しました!体験中は先輩が1日中付いてくれて、何も分からない私でも安心して学べました。酪農家によってやり方はさまざまで、覚えることは多くて大変でした。しかし、動物が好きな私にとって牛はもちろん、牧場にいる犬猫などの動物も癒しでした。また、遠くから来た私を十勝の様々な場所に連れ出してくれたり…とにかく十勝清水町の酪農ヘルパーは雰囲気が最高です!また、野菜や牛肉など食べ物がとにかくおいしいのもこの町が好きになった理由の1つです。すべてが自分に合っていたので、2回もインターンシップに来て、そのままの流れで就職しました」
今後の夢や目標を教えてください。
谷野さん:「酪農家さんによってやり方が違うので、今は仕事を覚えるのに精いっぱいです。まずは3年間続けることが大事と言われているので、継続できるよう頑張ります!先輩のバックアップもあり、気候や食も合っている十勝清水ならやっていけそうですね。」
これからインターンシップに来る人にメッセージを!
谷野さん:「慣れないこともあると思いますが、先輩ヘルパーや酪農家さんに聞きやすい雰囲気なので大丈夫です!いつも声を掛けてくれるし、頑張りを認めてくれるので楽しいですよ」
小畠先輩:「午前5時半~9時半と午後4時半~7時半に搾乳、餌やり、牛舎の掃除などをします。長い休み時間はリクエストがあれば観光やご飯にお連れしますよ!」
藤田組合長:「まだまだ酪農ヘルパーについて知らない人が多いと感じています。酪農家にとって欠かせない存在だということを伝えたいですね。正直なところ農家もクセの強い人が多いし、最初はうまくいかずに落ち込むときもあると思いますが、長い目で見て見守り、励まし、褒めることを心掛けています。親のような気持ちで接しています」
事務局に管理をおまかせするだけではなく、チーフヘルパー自らが働き方やキャリアップを考えた運営にたずさわることができる『十勝清水町酪農ヘルパー有限責任事業組合』。同じ作業の繰り返しになりがちな酪農ですが、乳牛の1サイクルを3年間という長いスパンで理解できるように指導してくれるチーフヘルパーと酪農家が十勝清水町にはいます。作業の意味を学べることで、より納得して酪農と向きあえるのでないでしょうか。
興味のある方は、ぜひ一度体験にお越しください!

【お問い合わせ】
十勝清水町酪農ヘルパー有限責任事業組合
https://www.ja-shimizu.or.jp/
〒089-0138
北海道上川郡清水町南2条1丁目8
TEL:0156-62-2603