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生産者と農林水産省がスマート農業について意見交換。現場と施策をつなぐ会をレポート

生産者と農林水産省がスマート農業について意見交換。現場と施策をつなぐ会をレポート

2021年2月24日、農業生産者と農林水産省のオンライン意見交換会が実現しました。生産者のFacebookグループ「アグリ2050」が企画し、農林水産省や各地の農政局も参加。42人が集い、スマート農業をテーマに、予定の2時間を超え、3時間にもわたる活発な意見交換がされました。その内容の一部をレポートします。

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全国からオンライン意見交換会に集う

アグリ2050が企画し実現

「アグリ2050」は、主に生産者によるFacebookグループです。生産品目は、米や野菜、花きなどばらばら。
このたび、アグリ2050の企画による、全国の生産者と、農林水産省や各地の農政局が参加する意見交換会が実施されました。

全国からの参加はオンラインならでは

アグリ2050の各メンバーが農業を営む地域も日本全国各所に散らばっています。この日も、北は北海道、南は高知県まで19人の生産者が集まりました。
一方、農林水産省の複数の局から、また、中国四国農政局や九州農政局からも参加がありました。このような地域や立場が異なる多様な参加者が集まったことが特徴でした。
遠くの人同士が距離を超えて、また複数でも意見交換ができるのはオンラインならでは。
参加者皆が、今後のスマート農業のあり方について話し合いました。

異なる立場からスマート農業について議論

「スマート農業ビジョン」についての発表

当日は16時にスタートしました。挨拶と趣旨説明の後、第1部の「生産者の『私のスマート農業活用ビジョン』」が発表されました。

まずは、アグリ2050によるスマート農業アンケート結果(回答29人)を発表。

アグリ2050内でスマート農業に「すでに取り組んでいる」生産者は46.6%という結果が発表されました。しかし過半数は取り組んでいません。

スマート農業が進まない理由についてのアンケートでは、「費用対効果」がもっとも大きな要因として回答が集まっていました。質疑応答でも、やはり費用対効果、そして通信インフラの整備について関心が集まりました。
さらに第1部では、AGV(自動走行ロボット)の活用事例や、5Gを活用したスマート農業構想など、現場での具体的な取り組みなどについて発表がありました。

生産者の本音と現場の事例

質疑応答では、参加した生産者それぞれのスマート農業の取り組み度合いに関わらず、活発に意見が交わされました。
「ハイテク技術を取り入れるよりも先に、経営改善の視点でアナログなことに取り組んで初めて、スマート農業の効果が表れるのでは?」
「そもそも、スマートフォンやタブレットを使うにしても電波が途切れてしまう地域なので、通信環境を整備してほしい」
などの本音には、うなずく生産者もいることでしょう。

「スマート農業推進の方向性」について情報提供

続く第2部は、農林水産省からの施策紹介。
「スマート農業推進方向性」について、現状の日本の農業の課題などを共有したうえで、最新の取り組みなどの情報提供がありました。

各種のスマート農業に関する事業を解説

2019年には農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)により、農業データ連携基盤「WAGRI(ワグリ)」の運用が開始。これはICTベンダーや農機メーカーなどの事業者間で農機やセンサーなどのデータ連携を可能とするものです。また同年、スマート農業の社会実装を加速させていく事業「スマート農業実証プロジェクト」も始まりました。
2020年3月には、新たな「食料・農業・農村基本計画」が閣議決定されました。そのなかでも、農業の持続的な発展を図るための取り組みとして、農業生産流通現場のイノベーションの促進、スマート農業の加速化が盛り込まれています。
年々進むスマート農業への施策は歩みを止めず、2020年10月には引き続きスマート農業導入による経営効果の実証・分析や普及などを進めるための「スマート農業推進総合パッケージ」が策定されています。
また、農林水産省は、2021年度から情報通信環境整備対策として通信環境に対する財政支援を行うことを概算決定しています。
これら最新情報について、資料を画面で共有しながら解説がありました。

活発な全体意見交換

問題解決と悩みの共有の場に

最後に、第1部、第2部を踏まえたうえでの全体意見交換が行われました。
「どんな技術があるのか、メーカーがあるか分からない」という質問には、「やりたいことから製品などを検索できる『つながる農林水産技術サイト(略称:つな技<ぎ>サイト)』というものがありますよ」などの具体的な回答もあり、不明点の解消にもつながったことでしょう。

しかし一方で、スマート農業は発展途上の分野。「各メーカーのデータの互換性などがないため困る」「生産者と技術者とが、もっとつながっていくと農業は面白くなる」など、現状の悩みや意見を共有する場にもなっていました。

共に貴重な機会として次のステップへ

アグリ2050の生産者からは、次のような言葉が聞かれました。
「引き続き、こうした議論はアグリ2050の中だけでもやっていきたい。今度は農機メーカーさんを呼んで、やってもみたい」
農林水産省からも「貴重なご意見ありがとうございました。参考にしながら今後ともスマート農業に関する事業を進めてまいります」との声がありました。
それぞれ異なる立場だからこそ、意見交換は有意義なものがあります。予定を超えた3時間の意見交換会は、熱を帯びたままに終了しました。この日の熱が、今後もスマート農業だけでなく、農業界全体への活気につながっていくことでしょう。

つながる農林水産技術サイト(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/needs/need.html#techinfo

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