自らが現場に入ることで、ICT活用の確かな実績を創る
地域活性化・街づくりをめざして――これは、2019年5月のNTTアグリテクノロジー設立に際して銘打たれた同社の設立背景だ。
多くの地域において、農業というのは基幹産業を担っている。農業の弱体化は地域の弱体化とほとんど同義であり、農業の強化なくしては地域活性化も果たされない。NTT東日本がグループ初の農業専業会社を設立した背景には、NTTの強みとする通信を十二分に発揮して農業を豊かにすること、これにより地域経済、ひいては日本経済の活性化に寄与したいという強い思いがあった。
ただ、農業ICTを十分に機能させる上では、現場に寄り添い課題の本質に切り込むことが不可欠となる。こうした理由から、NTTアグリテクノロジーは設立以降、ある試みに注力。自らが農業に取り組むことで、生産者とともに、現場からICT活用とその効果の実証に臨んでいるのだ。
農業現場で生まれた数多くの実績
NTTアグリテクノロジーが提供する価値は、大きく2つに分類される。環境データを可視化する「IoTサービス」と、円滑かつ高い生産性を目指した次世代施設園芸の要となる「AI収穫量予測」だ。いずれも、通信技術という同社の強みを最大限に発揮した価値といえよう。
独自の武器をもとにして、同社はどんな効果を農業というフィールドで生み出してきたのか。ここでは千葉県木更津市の取り組みと、山梨県小菅村の取り組みについて紹介したい。
千葉県木更津市:鳥獣害対策プロジェクト
千葉県木更津市では、地域農家と猟師、ジビエ業者、NTT東日本などと連携した鳥獣害対策プロジェクトを2019年に設置。檻にセンサーやカメラをつけて遠隔から対象となる動物の確保状況を可視化できる仕組みづくりにより、猟師の移動の効率化や一度に管理できる檻の数を増加したほか、捕獲後にはジビエ業者が迅速に処理できるため特産品の品質向上にもつながったという。
山梨県小菅村:林業の労働災害抑止に向けた実証実験
山梨県小菅村では2021年2月より、NTT東日本、boonboon、株式会社さとゆめと共同し、労働災害抑止に向けた実証実験をスタート。林業は急斜面や高所での作業が多く、労働災害が大きな課題となっている。電波が届かず助けが呼べないことが災害抑止の妨げとなっており、山間部に自営の通信ネットワークを構築して事故の際、子機でSOS発信し、GPSで位置を把握できる仕組みづくりを実施。IoT技術が労働災害の抑止に寄与することが期待されている。
農業ICT成功の鍵は「共創」
このように数多くの実績を農業現場から生み出してきたNTT東日本とNTTアグリテクノロジーだが、およそ2年にわたる取り組みの中で、両社はあることを実感したという。独力ですべてを行うのではなく、豊富な知見や先進的な考え方を持つパートナーとともに課題解決に臨むことが、農業ICT成功の鍵だというのだ。
このことを体現するように、NTT東日本は2020年にバイオマス専業会社のバイオマスリサーチとの共同出資でビオストックを設立し、翌年にはドローン技術を持つオプティム、豊富なドローン販売実績を持つワールドリンクとの合弁会社であるNTT e-Drone Technologyを設立している。
次回からは第2回でビオストックを、第3回ではNTT e-Drone Technologyを取り上げ、NTT東日本が日本の農業の変革にどのようにアプローチしているのかを深堀っていきたい。
アグリビジネスをもっと豊かに――NTT東日本は日本の農業をどう変えるか?
【1回目】現場目線からICT活用の効果を生むために――農業専業会社NTTアグリテクノロジーの設立
【2回目】共創が農業に新しい風を生む――ビオストックを共同設立した狙い
【3回目】ドローンの社会実装がスマート農業を叶える――NTT e-Drone Technology誕生
【お問い合わせ先】
NTT東日本(法人向けICT相談窓口)
TEL:0120-765-000
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