“危険物”とはどのようなものか
危険物は消防法で定められている
危険物とは、火災が発生・拡大する危険性が高いものとして消防法で定められているものを指します。身近なものでは、ガソリンや灯油が危険物に当たります。
つまり、言葉からイメージされるような、単に体に害を与える危険なものといった曖昧な意味ではないことを知っておきましょう。
危険物を扱う場所には危険物取扱者を置く
法律で定められた指定数量以上の危険物を扱う施設には、「危険物取扱者」を置く必要があると消防法で定められています。危険物取扱者を置く現場には、例えばガソリンを大量に扱うガソリンスタンドが挙げられます。
危険物取扱者は国家資格です。資格取得には、試験に合格して免状を得る必要があります。
また、一度取得すれば、そのままいつまでも有効というわけではありません。免状には写真が貼付され、その有効期限が10年のため、交付後10年が過ぎる前に更新する必要があります。
危険物取扱者が扱える危険物の種類
危険物取扱者には、甲種・乙種・丙種の3種類の免状があります。
それぞれ取り扱いのできる危険物が異なっていて、下記の表のとおりです。
免状の種類 | 取り扱いのできる危険物 | |
---|---|---|
甲種 | 全種類の危険物 | |
乙種 | 第1類 | 塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類、臭素酸塩類、硝酸塩類、よう素酸塩類、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類などの酸化性固体 |
第2類 | 硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウム、引火性固体などの可燃性固体 | |
第3類 | カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、黄りんなどの自然発火性物質及び禁水性物質 | |
第4類 | ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類などの引火性液体 | |
第5類 | 有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物、アゾ化合物、ヒドロキシルアミンなどの自己反応性物質 | |
第6類 | 過塩素酸、過酸化水素、硝酸、ハロゲン間化合物などの酸化性液体 | |
丙種 | ガソリン、灯油、軽油、重油など |
農業と危険物との関連は
農家にも身近な危険物
さて、こうした危険物は農業にどのように関わってくるのでしょうか。
想像のつく人も多いと思いますが、ガソリンや灯油などの燃料は、農業にも非常に身近だと言えるでしょう。
農業ではどのような場面で必要か
具体的には、ハウス栽培での危険物の使用が考えられます。
例えば、ハウス内の温度管理を行うためにボイラー設備がある場合は、燃料が不可欠です。
灯油・軽油の指定数量は1000リットルで、これを超える量を貯蔵したいなどの場合には、農家でも危険物取扱者を置く必要が生じます。
また、1000リットル未満でも事業所で200リットル以上の量を扱ったり貯蔵したりする場合は市町村の火災予防条例で規制されます。200リットル未満は届け出は必要ありませんが、破損のない容器を用いるなど、扱いには十分に注意する必要があります。
農業者には「乙4」がおすすめ
しかし、危険物取扱者が必要だからといって、すべての危険物を扱える甲種を取得しなければならないかと言えば、そうでもありません。
危険物の種類には、化学工場や研究所などの専門的な場所で扱うものも含まれ、農業とは縁遠いものもあります。そのため、特定の危険物のみを扱える乙種で十分でしょう。
一方、ガソリンや灯油、軽油などは丙種でも扱うことはできます。ですが、乙種危険物取扱者が立ち会っていれば、危険物取扱者の免状を持っていない人でも危険物を扱えるため、作業時の汎用性も高くなります。丙種では立ち会い業務ができません。
こうした理由から、農業者には危険物取扱者乙種第4類、いわゆる「乙4」がおすすめです。
危険物乙4類を取得する方法
一般的な方法
では、危険物取扱者の資格は、どのように取得できるのでしょうか。
取得には、消防試験研究センターの各都道府県支部で行われる危険物取扱者試験を受けることになります。
試験日程は各都道府県で異なりますが、通常は年に数回行われていて、乙種・丙種なら誰でも受験できます。
乙種の場合、「危険物に関する法令」「基礎的な物理学及び基礎的な化学」「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」の3つについて計35の問題が出され、試験手数料は4600円です。
農業大学校での取得
また、危険物取扱者の資格は、農業大学校でも取得を目指すことができます。
入学後、試験を受ける機会があったり、特別に試験対策の講義があったりもします。
ただし、学科・コースなどによって、取得可能かどうかは異なります。あらかじめチェックしてみてください。
事故を避けるために安全な取り扱いを
危険物は、その名前のとおり、扱いを誤ると大きな事故にもつながりかねません。
安全には十分に気をつけて、扱うようにしましょう。