葉ネギは薬味として生食するほか、焼いたり煮たり年間を通じて食卓に欠かせない野菜です。用途に合わせてさまざまな規格が求められるため、ハウス直播型の小ネギや露地移植型の中ネギなど栽植密度を細かく設定することで対応します。近年では水耕や業務加工用カット(株刈り)栽培など作型が多様化し、日本各地で栽培されるようになりました。
一方で、気候変動の影響により栽培は年々難しくなってきているのが現状です。特に露地栽培では、強風による倒伏や葉折れ、過乾湿による根傷みで葉先枯れや生育遅延が発生するなど、不良環境下においても収量性と商品性を発揮できる品種が求められています。
この現状を踏まえ、気候変動を受けにくい安定した伸長性、細葉立性草姿による耐倒伏・耐葉折れ、栽培期間全体を通じて葉先枯れの発生が少ないことを育種目標とし選抜を行いました。各地で試作を重ねた結果、秋冬どりを中心に高い適性を確認できたため、このたびタキイ交配「京千羽」として発表することとなりました。
「京千羽」の特性
そろい性抜群で収量性にすぐれる
葉ネギは密植栽培されますが、「京千羽」はクズなどの発生が少ないことが特長です。全長、太さともによくそろい、歩どまりがよく、高い収量性を発揮します。
葉先枯れが少なく、細葉立性で草姿が美しい
「京千羽」は左右対称に規則正しく葉序が展開し、細葉立性草姿であるため、倒伏や葉折れに強いことが特長です。濃緑葉で葉先枯れにも強いため、高い秀品性をもち、荷姿も美しく仕上がります。
低温伸長性にすぐれ 厳寒期どりできる
低温期でも安定して伸長するため、1~2月どりが可能です。厳寒期のトンネル栽培においても持続的に生育するため徒長しにくく、安心して栽培できます。また、耐寒性が強く暖地では露地栽培も可能です。
葉鞘部のしまりがよく、選別、調製作業が容易
葉鞘(ようしょう)部のしまりがよいため常時葉を2枚残しての出荷調製が可能です。移植型の秋冬~春どり作型では葉を3枚残して出荷される産地が多く、葉先枯れの少なさと葉鞘部のしまりを生かすことで、歩どまりを高めることができます。また、そろい性にすぐれ葉鞘基部が肥大しにくいため選別、調製作業が容易です。
栽培のポイント3つ
1. 発芽をそろえる
秋冬どり作型では高温期(7〜8月まき)の育苗となるため、遮光資材などを用いて地温低下と乾燥防止に努めます。均一な潅水(かんすい)を心掛け、換気扇やミスト潅水の併用、また薄まきにして徒長を防止することも重要となります。本葉展開期までは苗立枯病の発生も心配されるため、過湿には注意が必要です。
2. 土づくり
「京千羽」は葉先枯れの発生が少ない品種ですが、より安定的にその特性を発揮させるためには土づくりが重要です。特に露地栽培では豪雨により土がかたくしまり、発根が阻害されることで生育不良につながります。堆肥(たいひ)などの有機質を十分に施用し、通気性・排水性が良好で膨軟な土壌になるよう心掛けてください。暗渠(あんきょ)や明渠(めいきょ)、畝の高さを調整するなど圃場(ほじょう)の排水対策を行い、過湿による根傷みに注意してください。
3. 収穫適期を守る
「京千羽」は伸長性にすぐれるため特に低温期の栽培に適しますが、春〜初夏どりでは温度上昇にともない生育がより旺盛になります。倒伏には強い品種ですが、とり遅れには注意してください。
(執筆:タキイ茨城研究農場 久保佑喜)