午前7時、夜明けとともにトラックが出発
JR知床斜里駅から車で2分、まだ周囲が薄暗く寝静まる町に一箇所だけ慌しく動き回る場所があります。それが、丸米産商の出荷工場。サイズごとに色分けされたラインが目を引く『しれとこ人参』の化粧箱がうず高く積まれ、まさに今、出荷するトラックの後ろには、まだまだ運び込み途中の『しれとこ人参』の箱がズラリと並んでいる。それらを乗せたフォークリフトが、規則的かつ無駄のない動きで別のトラックに次々と運び込んでいる。今日が特別な“出荷の日”なのではなく、夏の収穫時期は毎日がこれだと言われ、驚いた。
1日の出荷量はおよそ65t。写真の箱にしておよそ6500箱分にも及ぶ。先ほど見送ったトラックは、当日の夕方から夜にかけて苫小牧港から出発するフェリーに乗るという。北海道知床から日本各地に届けられる『しれとこ人参』のこだわりを紹介しましょう。
播種から収穫、そして出荷・流通まで。
農家のイメージを覆す、にんじん商社
丸米産商では、自社運営の圃場のほか、コントラクター事業と呼ばれる近隣農家所有の圃場に蒔き付け・収穫を行なっている圃場があり、これらを合わせ約140haほどの広さになります。人参の播種は例年4月中旬頃から始まるそう。「人参は発芽がいのち」であり、発芽すれば7割成功と言われるほど発芽が難しい作物。そう教えてくれたのは、営農部課長の鈴木さん。取材の日も、収穫を行なっていました。
同じ条件に見える圃場でも、防風林など周辺環境により温度や日照量が異なり作物の生育に差が出るもの。播種後は、徹底した防害虫管理と合わせて、一つひとつの圃場の状況を見ながら圃場管理を行います。人参は土に埋まっている作物のため、収穫時期にならないと正確な出来上がりはわからないそう。「大きく立派な人参を収穫できたときは、圃場の持ち主である農家さんも嬉しいし、僕たちも嬉しいしやりがいにつながります」。取材に訪れた圃場は、鈴木さんも大満足の仕上がりで、収穫機に備え付けられたフレコンバックと呼ばれる大きな収穫用の袋に大きく形も綺麗な人参が続々と収穫されていました。
圃場で収穫されフレコンバックに詰められた人参はすぐに工場に運ばれます。この工場も丸米産商の自社の施設です。
圃場の土がついたまま運ばれた人参は、工場入り口にある深さ3mもの流水タンクに入れられます。工場のラインをめぐるうちに、みるみる光り輝いていく人参たち。洗うというよりも、磨くという感覚に近い。選果工場で使われている水がすごく綺麗だったので聞いてみると「うちの工場で使っているのは、すべて知床の湧き水なのだ」と教えてくれました。収穫したら素早く冷水で冷やしながら洗浄して磨きあげ、サイズごとに箱詰めされすぐに冷蔵庫へ。このスピーディな一連の作業が『しれとこ人参』の鮮度を支えています。
通常の農家であれば、圃場での収穫から先は農協などの卸先が行うのが通例ですが、丸米産商では自社工場で行なっています。さらに、注文も自社で受けているため消費者の生の声も届く。手書きの伝票には、ちょっとした季節の挨拶を添えることもあるそう。作り手と受け手が直接つながる人情的な温かさのみならず、消費者や市場の変化などもこうしたところから感じ取ることができたのでしょう。丸米産商は、1925(大正14)年から3代続く知床有数の農業経営体となり、『しれとこ人参』は一つのブランドになりました。1964年東京五輪の際に先代がデザインしたという人参の箱を見ながら「人参にこうした化粧箱を取り入れたのは、うちが最初なのではないか」と総務部長の高橋さんが教えてくれました。
播種から収穫・収穫そしてブランド化まで、にんじん商社としてのノウハウをインターンシップで学んでみませんか?
知るほど楽しい農業の深み
丸米産商で働くスタッフの多くは、働くうちに興味があることが出てきて「圃場の管理の仕事をしたい」「選果の効率化を図りたい」など自分から声をあげてそのポジションに就くことが多いそう。最初の頃はあまりに業務範囲が広すぎて、覚えることに精一杯になるけど作業を覚えるうちに、気づけば自主的に調べているような感じだと言います。
すべて一貫して自社で行うからこそ、部署も豊富です。営農部や営業を行う部署のほか、特記したいのが、製氷部。『しれとこ人参』を冷やすための氷も自社で製造しており、なんと知床の漁師までもがこの氷を買い求めに来ます。48時間をかけて不純物と純粋な水を分けて製氷された透明度の高い氷は、融解速度が遅く生鮮品の品質保持に重宝されています。氷や雪を使った氷室など、丸米産商の品質へのこだわりを感じ取れる施設もインターンシップでは見学が可能です。ぜひ、受け身ではなく、お話を聞いていて「興味がある」「もっと知りたい」と思ったことは積極的に発信してみてください。
知床斜里町は、こんなところ
世界自然遺産に登録された知床半島の麓に広がる知床斜里町。空港は、中標津空港と女満別空港が最寄りのアクセス。海と畑に囲まれているので海の物も畑の物も両方が美味しい、恵みにあふれた土地です。さらに、自然の景観も欠かせません。周囲にはまっすぐ続く道が美しい『天に続く道』や温泉も豊富。自然環境が厳しい土地ではありますが、その代わりに厳しい自然が織り成す数々の絶景を楽しめる素敵な場所です。
ぜひ、農業に興味がある方は丸米産商のインターンシップに参加してみてはいかがでしょうか。
【企業情報】
株式会社丸米産商
北海道斜里郡斜里町本町39番地15
電話:0152-23-3169(9:00~17:00)
FAX:0152-23-3168
https://marukomesansho.co.jp/