市場を通す「市場内流通」
海産物はまず、水揚げ港に開設されている「産地市場」に水揚げされます。産地市場に水揚げされた海産物は、水産加工会社や冷凍冷蔵業者、鮮魚卸業者などの買受人が購入し、大都市や地方都市など一定の消費人口がいる「消費地市場」に出荷されます(消費地市場のうち、人口20万人以上の自治体にある消費地市場を中央卸売市場と呼びます)。
市場内流通は一見複雑に見えますが、この仕組みがあることで産地から遠く離れた消費地でも、全国で水揚げされたさまざまな魚を店の規模に見合った量だけ仕入れることが可能となります。産地市場は全国に313カ所、 消費地市場は278カ所あり、セリや入札の市況がすべて公表されるため、 取引する際の海産物の参考になる価格(最高値)が判断でき、公正な取引の指標にもなっています。
市場ではどのように魚の値段が決まる?
海産物は種類が多く、季節や天候によって獲れる量や種類が変わる上、同じ種類でもサイズや鮮度によって用途が変わってきます。そこで登場するのが地域の台所かつ、水産物の供給拠点でもある卸売市場です。
卸売市場に水揚げされた魚は、大都市消費、地元消費、水産加工原魚として流通していきますが、公正な取引をするために、3つの方法で価格の取引が行われています。
水揚げした魚は市場で管理・取引されるため、漁師たちも安心して仕事に専念できるというわけです。
市場内流通は、いわば「大きな川」。この川の流れによって上流から中流、下流、はたまた支流と、思いのままに各地の海産物が届けられる仕組みになっています。
セリ
その場で一番高い値をつけた人が競り落とせる販売方法。値段を上げていく「上げゼリ」、逆に下げていく「下げゼリ」があります。古くからの慣習で、指で数字を示す「手やり」が多く使われています。
入札
買受人が欲しい量と値段を書いた紙をセリ人に渡し、高い価格をつけた人が購入できる販売方法。その場で値が変動していくセリと違い、ほかの買受人がつけた価格がわからないので、一発勝負。近年は電子入札を取り入れている市場も増えています。
相対(あいたい)
卸売業者と買い手が、販売価格及び数量について交渉の上、販売できる方法。
中央卸売市場は相対の取引が多く、大手の量販店や飲食店など大量に魚を必要とする大口の業者向けには、事前に品物の告知をして予約販売することもあります。
市場を通さない「市場外流通」
出典元:農林水産省Webサイト「卸売市場データ集」
今やネットショッピングが主流の時代。実際に自分が獲ったり育てたりした魚を売ってみたい!という人も中にはいるのではないでしょうか。近年増えているのが、市場を通さない「市場外流通」です。ネットショッピングだけでなく、例えば業者や飲食店から漁師が直接注文を受けて出荷することもあれば、「今日はこんな魚が入ったぞ!」と漁師自ら船の上で営業の電話をすることもあります。
先ほど市場内流通を「大きな川」と表現しましたが、市場外流通は、その川の流れや方向、働きを自らでつくることができます。
市場外流通のメリットは、市場の動きに合わせることなく出荷ができることや、流通段階でかかる費用を省けるということ。また、消費者と直接繋がれる機会があるのも魅力的です。一方で、自然相手の仕事をこなしながら、販路の確保・開拓、出荷作業をするというのは大変なこと。顧客対応や、市場内流通では起きないトラブルが発生する場合もあります。
市場内流通、市場外流通のメリット・デメリットを理解し、時期や魚種ごとでベストな出荷方法を考えてみるのもいいもかもしれません。
漁協などを通じて販売する「共同販売」
知っておきたい出荷方法がもうひとつ。養殖業の現場では、漁業協同組合(漁協)が行う「共同販売」(共販)が主流です。共販とは、漁協が漁師から仕入れた海産物を一括して仲買加工業者に入札(もしくは相対で)販売するシステムのこと。
養殖業の現場は家族単位の経営体も多く、販路の確保まで行うのは大変です。漁師にとっては、共販で売ることで代金回収の手間や売れ残りのリスクを抱えることなく販売ができるメリットがあります。
魚をどのように流通させるか考えるのも漁師の仕事
流通の仕組みを知ると、たくさんの人の努力があって、今ここにおいしい魚が届いているのだということがよくわかります。近年は市場内流通にとらわれない新しい流通の形も誕生してきています。
もし、あなたが生産者になるとしたら……どのような出荷方法で、どのように魚を流通させていきますか? 魚を獲ったら終わりではなく、生産のその先のことまで考えてみると、新たな楽しみが見つかるかもしれません。
関連サイト:TRITON JOB「【生産のその先】石巻魚市場へ行こう!」「【生産のその先】水産業の流通の仕組みを教えて!」