マイナビ農業TOP > 林業・水産業 > 持続可能な水産業を目指して 海を守るため、漁師がしていること 私たちができること

持続可能な水産業を目指して 海を守るため、漁師がしていること 私たちができること

持続可能な水産業を目指して 海を守るため、漁師がしていること 私たちができること

2015年の国連サミットにおいて、世界の「持続可能(サステナブル)な開発」のため、2030年までの15年間で17の目標を達成することが決められました。これが最近良く聞くようになった持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」です。
「持続可能な開発」とは何か。簡単に言い換えてしまえば、「いろいろな問題を解決して、すべての国の未来を豊かにしましょう」ということ。

SDGs17の目標

SDGsの17の目標のうち14番に掲げられているのが、「海の豊かさを守ろう」です。
この記事では、水産業の仕事に就きたいひとも、そうじゃないひとも知っておいてほしい、海を守るためのお話を紹介します。

twitter twitter twitter

このままでは魚がいなくなる? 資源管理について考えよう

漁業における資源管理とは?

世界的な健康ブームに加え、加工や保存、輸送技術が発達して魚介類の消費が手軽になったことから、水産物の需要は世界的に高まっています。その結果、違法な漁業や過剰漁獲などが増えていて、世界の水産資源の34%が「獲られすぎ」というデータが出ています。これに対し、漁獲拡大の余地のある資源全体の6%に留まっています。このままでは海洋資源は減少の一途をたどり、安定供給どころから私たちの食卓からなくなってしまう恐れもあります。


※出典元:水産庁「令和2年度 水産白書

2020年に改正された漁業法においても資源管理の体制が強化され、現在日本の漁業の現場では、過剰漁獲を防ぐために以下の3つの管理方法を導入しています。沿岸漁業であっても、沖合漁業であっても、まずは漁業者自身が「ルールを守ること」が資源管理の大前提となっています。

▶︎インプットコントロール
漁業許可制により、操業隻数や操業期間、漁船のトン数、漁船の馬力制限など資源に対する漁獲の圧力を入口で制限。
▶︎テクニカルコントロール
禁漁時期、網などの漁具、漁獲の効率性、産卵親魚や小型魚の保護など、技術的な制限。
▶︎アウトプットコントロール
漁獲可能量(TAC )の設定や、個別割当方式(IQ)などで漁獲量を制限。

資源管理のため、私たち消費者ができることは?

海の上でのルールは、私たち一般消費者には遠い話に感じますが、実は私たち消費者のニーズこそ、漁師たちを動かしています。人気のある魚には高値がつきますし、その需要に答えようと漁師もその先の小売店も無理をしがち。「不漁の資源を過剰に求めない」というちょっとした心がけが、資源管理に繋がります。
例えば、秋の味覚の象徴でもあるサンマやサケが獲れないというニュースを聞いたら、同じ時期に獲れる今まで食べたことがなかった魚を食べてみる、というのも良いでしょう。実は、温暖化などの影響で魚の旬が変わったり、これまで獲れなかった魚が獲れるようになったりしています。今まで食べる文化がなかっただけで、食べてみるとおいしい……! という魚がたくさん水揚げされているにも関わらず、消費がなければ水揚げされた魚は行き場を失ってしまい、漁師も儲けを得ることができません。今獲れている魚を大切にいただくことは、資源を無駄にしないということだけでなく、漁師や水産業界への後押しにもなります。


そして、もうひとつ。みなさんは、サステナブルシーフードという言葉を聞いたことがありますか?
サステナブルシーフードとは、将来も変わらずに魚を食べ続けられるよう、持続可能で環境に配慮した漁業、養殖業による水産物のことを言います。


※出典元 MSC「海のエコラベル」:一般社団法人MSCジャパン、ASCラベル:ASCジャパン

MSC「海のエコラベル」は水産資源や環境に配慮した漁業で獲られた水産物、ASCラベルは環境と社会への影響を最小限にして育てられた養殖の水産物の証です。消費者がこれらのサステナブルシーフードを選ぶことは、重要な海の資源を守る行動にもなり、日常からSDGsに取り組むことにも繋がります。お店や飲食店で見かけたら、ぜひ積極的に購入をしてみてください。

海洋プラスチックゴミ問題と向き合う

海の豊かさを守るために知っておいてほしいことがもうひとつ。それは、私たちの普段の生活とも大きな関わりを持つ、海洋プラスチックゴミ問題です。毎年少なくとも約800万トンものプラスチックが海に流出し、海の生き物が間違って食べてしまったり、体に突き刺さったりして命を落とすなど、たくさんの被害が確認されています。実は、海洋プラスチックゴミの問題は想像以上に深刻で、あと30年で海の魚の量を超えるという予測も出ています。

海洋プラスチックゴミを減らすため、私たち消費者ができることは?

「自分は海にゴミを捨ててないから大丈夫」とは言い切れないのが、海洋プラスチック問題の根深いところ。私たちは日々の生活の中で、ビニール袋やペットボトル、食品トレイ、ストローと、非常に多くのプラスチック製品を使っていて、それらをゴミとして排出しています。プラスチックゴミが、何らかの理由で飛ばされたり運ばれたりして最終的にたどり着くのが、海です。プラスチックは自然に分解されることはありません。さらに問題となっているのが、海に流れ着いて細分化され、5mm以下になった「マイクロプラスチック」です。マイクロプラスチックは、海流の影響で広範囲に広がり、小魚の体内に蓄積され、食物連鎖によって私たちの食卓に並ぶ可能性もあり、最近の研究では「人体に影響を及ぼす」 とも言われています。消費者の私たちができることとして、まずは海洋プラスチックゴミの問題を人ごとと思わないこと。日常生活の中で、どうしたらゴミの量を減らせるかを考え、買い物にはマイバッグやマイボトルを持ち歩くなど、できることから心がけていきましょう。

漁師を目指す人に知っておいて欲しいこと

魚を獲るときに使う網、養殖物を育てるのに使うロープや浮き玉など、漁業に使われる道具のほとんどがプラスチック製です。それらが万一ゴミとして漂着した場合、どうしてもほかのゴミに比べると目に付きやすく、それゆえ漁師が悪者にされがちです。普段から「漁師は海を守って、命懸けで頑張ってるんだ」と胸を張って言えるように、一人ひとりが自分の漁具の管理や行動に責任を持つ必要があります。例えば、タバコのポイ捨て。タバコのフィルターは、プラスチック粒子でつくられたもので、自然に還ることはありません。有害であるタバコを魚が間違って食べてしまったら……? 海の環境を良くすることが自分たちの仕事にも直結するので、「稼げる海を自分たちがつくる」という意識を持つようにしましょう。

漁に出ているときも船内のゴミを分別している漁船の様子

船の上でもゴミを分別させるなど、乗組員の意識改革を進めている漁船もあります。

豊かな海を、みんなでつくろう

2021年に発表された世界のSDGs達成ランキングでは、上位を占めているのは北欧の国が多く、日本は18位でした。目標14の「海の豊かさを守ろう」については、17の目標の中でも達成度が一番低い状況で、多くの課題が残っています。国をあげての施策が必要なことは明らかですが、一人ひとりが海を守るためにできることがあるということを知り、これからもおいしい魚を食べ続けられる海を、未来へ繋いでいきましょう。

あわせて読みたい記事5選

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

公式SNS

「個人情報の取り扱いについて」の同意

2023年4月3日に「個人情報の取り扱いについて」が改訂されました。
マイナビ農業をご利用いただくには「個人情報の取り扱いについて」の内容をご確認いただき、同意いただく必要がございます。

■変更内容
個人情報の利用目的の以下の項目を追加
(7)行動履歴を会員情報と紐づけて分析した上で以下に活用。

内容に同意してサービスを利用する