日本初&世界初!「いちごのヘタの真上で切断する」技術で農家の抱える課題を解決
※「日本初&世界初」特許出願中
福岡県八女郡広川町にあるいちご栽培のハウス。アグリス社製高設栽培ベンチには宝石のように艶々としたブランドいちご・あまおうが赤く色づいています。実はここ、株式会社アイナックシステムの自社農園。世界初の自動いちご摘みロボット『ロボつみ』のフィールド試験を行うことを目的に、同社の稲員重典社長のご実家の協力を得て実際にあまおうを栽培しているハウスなんです。よく見ると、『ロボつみ』が栽培ベンチの間を自走しています。
実家が代々農家を営む稲員社長。いちご栽培を行う家族を間近で見てきて、エンジニアとして何らかの形で応援できないかと、長年考えてきました。というのも、いちご需要は年々増す反面、就農者の高齢化や後継者・労働力不足、品質基準の厳格化などにより、作付面積は減少傾向に。特に、短い期間に短時間で作業を行わなければならない収穫の時期には、労働力不足は深刻でした。
その解決策として社長が4年前に思いついたのが、熟練者の手の代わりとなって収穫ハンドとなる自動いちご収穫ロボットです。早速、社長自ら1号機を製作。その後、有能な技術者たちが参加して改良を重ね、この度3号機が完成。それが、今回の自動いちご摘みロボット『ロボつみ』というわけです。
『ロボつみ』の最大の特徴は、AIでいちごの色づきを判断し、特許を取得した特殊な二段階の刃でいちごに触れることなく茎をヘタの真上でカットして、トレーに等級ごとに収穫できるということです。人間の手で触れることなく、しかも茎を短く切断するため、周りのいちごを傷つけて品質を落とすリスクも少なくなります。
さらに実家が農家である稲員社長としては、どんなに有能な機械であっても、農家が購入できないほど高額なものでは本質的な問題解決にはならないというのが譲れないポリシーです。そこで同社では、日本初・世界初の自動いちご摘みロボットを自社開発することにより、農家でも導入可能な価格帯での販売を目指しているのです。
社員代表3人のプロフェッショナルの聞く、
『ロボつみ』開発秘話
実際に『ロボつみ』の開発に関わった3人の技術者のみなさんに話をお聞きしました。
企画開発室の最初のメンバーであり、入社当時から社長の「ロボット作って!」「AIやってみて!」というリクエストに応えてきたのが、田志宗一郎さんです。『ロボつみ』の心臓部である、いちごの色づきを判断するAIや特殊な収穫ハンドを開発しました。
現在、AIでは4段階でいちごの色づきを判断するようプログラミングされているそうで、「今日はレベル1~2、今日は2~4を収穫しようという計画をあらかじめ設定できるようになっています。将来的には、各都道府県が指定している規格に合わせることを想定しています」と田志さん。
「何もない状態からAI開発を始めたので、試行錯誤の連続でした。それでも、機械に強いメンバーが加わって、知恵を出し合いながら少しずつブラッシュアップしていきました。データ上ではプログラミング通りに動いても、機械を組み立てて動かしてみないと、細かい動きは分かりません。実際にAIが安定して動作してくれた時には、ガッツポーズでしたね」と『ロボつみ』完成の喜びを語ります。
田志 宗一郎さん 2020年3月入社。医療関係SE歴17年。ガンダムが好きで、形のある「ものづくり」がしたいと思っていたところ、ロボットを作りたいという社長の夢に惹かれて入社を決意。現在は企画開発室で、主に『ロボつみ』の心臓部であるAIを担当しつつ。3Dモデリング、造形なども担当。 |
昨年11月にメンバーに加わった時松賢治さんが主に関わったのは、電気のハードウエアの部分。どのようにすればいちごがうまく採れるか、試行錯誤を続けたそうです。
「実際に農家の方が買ってもらえるような価格にできるよう、コスト意識は大切にしましたね。そういう点では、自分が農業に従事していた経験はすごく役立っています。普通だったらこうだろうという常識や概念をいったん取り払って、チャレンジ要素をいっぱい取り込んで開発したロボットになりました。農業機械ではドローン以外で活躍しているロボットはまだ非常に少ないので、この『ロボつみ』がきっかけとなって、さらに農業にとってロボットが身近なものになればいいですね」と『ロボつみ』への想いを熱く語ってくれました。
時松 賢治さん 2020年12月入社。薔薇農園経営から産業機器メーカー勤務経験あり。機械の設計からソフトウェアまで多能にこなす。元農業従事者経験ならではのコスト意識を大切にしつつ、『ロボつみ』のシステム全体構築と機械設計を担当している。 |
谷口太一さんが関わったのは、センサーから受け取ったデータから、車体の角度などを計算し、予定通りの方向に行くよう、モーターに渡すデータを作ることだそうです。最も苦労したのは、「理論上の計算と実際の動きには誤差があること」だそう。計算通りに動かない度に、修正を加えていったそうです。3号機では、2号機になかった自走という機能も加わり、実際に制御できるレベルに到達。「ずっとプログラムの開発をやりたいと思っていたので、毎日が楽しいです」と笑顔を覗かせます。
谷口 太一さん ロボット関係の仕事に憧れて、2019年9月入社。事務系ソフトウェアの管理や改修が得意。『ロボつみ』の2号機製作からメンバーに加わり、現在は主にロボット制御部を担当している。 |
2022年3月に大阪で実演デビュー!
4月には福岡県内から予約受付スタート
全国へアイナックシステムの技術を浸透。
農家をサポートできる企業を目指す
そんな『ロボつみ』がこの4月、福岡県内から予約受付をスタート。11月には納入開始の運びとなりました。3月8日〜10日には、大阪で開催される第5回 農業WEEK関西で実演デビュー。ついに本物を見て触れる機会がやってきます。
実演デビューについて、「構想から4年、ようやく私の待ち望んだいちごの収穫ロボットをお客様にお見せできる段階になりました。インターネットで『ロボつみ』を見た北海道のいちご農家の方からお電話で問合せや、農業団体から取り組みに盛り込みたいという連絡もいただいています。今後は、農家のみなさんの意見も反映させながら、さらに理想のロボットに近づけていきたいですね」と話す稲員社長。
いちごの高設栽培から従来の土耕栽培、さらにはいちご以外のりんごやトマトなどの収穫ロボット開発も視野に開発を進めるアイナックシステム。「これからの農業をワクワクさせる収穫ロボットを創造して生み出していきます」という同社から目が離せません。
まずは農業WEEK関西で、本物に触れてみませんか?当日のイベントの様子は、次回のマイナビ農業の記事でもご紹介します。どうぞお楽しみに!
※『ロボつみ』は株式会社アイナックシステムの登録商標です
※「事業再構築補助金第1回公募採択事業」を実施しています
【問い合わせ先】
株式会社アイナックシステム
〒839-0809
福岡県久留米市東合川4丁目1-1-101号
TEL:0942-48-0451
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担当:稲員(いなかず)