代々続く農家の思いを引き継ぎつつ、次代への挑戦は続く
全国的には、四日市コンビナートなど工業のイメージで知られる三重県四日市市。県下最大の人口を有し、名古屋市への通勤者も多い街ですが、実は古くから農業も盛んです。
商業ビルが建ち並ぶ近鉄四日市駅から車で10分足らずのところにある『すぎやまファーム』は、杉山和広さんが経営する水稲やニンジンの圃場です。杉山さんは「大昔から代々続く農家だった」という妻の実家の農業を継ぎました。現在、約10ヘクタールの稲作と7ヘクタールの麦・大豆栽培のほか、0.6ヘクタールでニンジンを栽培しています。
杉山さん自身は農業機械の販売を行う会社員でしたが、義父の病気を機に、「この地に関わってきた人々の思いを、ここで絶やすのはもったいない」と、農家を継ぐ決心をしました。
「農家になってから気づきましたが、農家って、本当に美味しい米や野菜を食べていますよね。こっそり、出荷しない自分用の作物育てますし(笑)」と魅力を話してくれました。
「米離れなんて言われていますが、食が豊かになって選択肢が増えただけ。みんな米を嫌いになったわけではないはずです。農業って、可能性はまだまだある!と思うんです」と明るく語る杉山さん。
当初は、農業の衰退を目の当たりにしてきた義父と意見が衝突することも多かったそうですが、根気強く義父に農業を教わり早13年。この間、様々な人に協力をもらいながら、常に農業の研究や新たな取り組みにもチャレンジしてきました。
どの農家も抱える繁忙期の人手不足に、JAの本気サポート!
前職で農機に関わっていたとはいえ、杉山さん自身は農業未経験。「農機を売っていても使ったことはなくて。機械の扱いも畝の作り方も一から学び、いろんな人に助けてもらいました」といいます。
農業の知識を補う上では、JAを積極的に活用して情報収集を行ってきたそうです。またそのほかの面でもJAは頼もしい存在だったそうで、「農業に可能性を感じて挑戦したい僕と、リスクを避けたい義父がぶつかった時も、古くから知るJA職員の方が取りなしてくれて、助かりました」。
ニンジン栽培においても、JAの担当者に相談して、新しい品種を試験したり全国のニンジン産地を訪ねて話を聞いたりと、研究や挑戦を重ねています。
このように熱心に農業に取り組み続ける杉山さんを毎年悩ませてきたのが、人手の問題です。特に大変なのが1〜3月にかけて最も忙しくなるニンジンの収穫・出荷作業。これまでは、親戚やご近所さん、妻の友人たちに声をかけてなんとか作業をやりくりしてきました。
そんな中、2020年秋にJA主催の雇用研修会で知ったのが農業人材マッチングアプリ『農mers(ノウマーズ)』。JAからの説明を受けて「コレは使える」と直感し、その日のうちに登録を行いました。以来、農mersと従来の声かけとの2本立てで人手不足解消を図っています。
JAおすすめ『農mers』で人手を無事確保。「使い勝手がよく、助かっています」
「使い勝手の良いアプリで、スマートフォンから簡単に登録できるのが良かったです」と杉山さん。「“週3日“といった契約でなく、”この日のこの時間だけ“という条件でマッチングできて助かります」と農mersのメリットを語ります。
「当初、未経験者に作業をお願いできるのか…と不安はありましたが、指示の出し方などの気づかいをすれば大丈夫でした。何より、農業に関心を持つ若い人材の応募が嬉しいです」とのことです。
三重県菰野町に生まれ育った20歳の男性も、そのひとり。
祖父が米や麦の農家だったことから漠然と「農業をやってみたい」という思いがあったそうです。勤め先の工場は昼・夜の交代制勤務で、週2日の休みを活用して家庭菜園を始めたものの、地元の知り合いは米作農家ばかり。
男性は「本格的に野菜作りを学びたい」と考えていたとき農mersを知り、近所のニンジン農家、すぎやまファームを発見! マッチングが成立し、ニンジンの収穫や選別、箱詰めを手伝いました。その後も不定期で杉山さんのもとで農作業に取り組んできました。
「杉山さんは機械の使い方など何でも優しく丁寧に教えてくれるし、作物に関してもプロの知識がありました。農業関係者との繋がりもできて、ありがたかったですね」と話していました。
男性は、すぎやまファームでの経験をもとに、2021年の秋頃から約10アールの農地でチンゲンサイの栽培を本格的に開始しました。いずれは専業農家になることを志しているそうです。
杉山さんは「これからも人手不足解消のために農mersを使っていきたいです」と話しています。
農作業をしたい人と、農作業を手伝ってくれる人を探したい農家をつなげた農mers。JAの担当者たちも、確かな手ごたえを感じていました。
収穫最盛期の人材マッチングから、農業の実りある未来を
JAグループ三重では、多くの農家が農繁期の人手不足を訴える中で、生産者と求職者がスマートフォンで気軽にやりとりできる農mersに魅力を感じて導入支援を開始しました。若手生産者を中心に好評だといいます。
JAみえきた営農指導課の美濃部孝司課長と担当の井口晶平さんによると、説明会の開催に終わることなく、「普段のコミュニケーションを通じて、登録や活用のアドバイスも日常的にしています」とのこと。また、杉山さんのように1回のマッチングからアプリを超えたつながりや新規就農者が生まれる可能性がある点にも、期待しているようです。
美濃部さんと井口さんは「これからも農家さんにとって頼れる存在であるよう、関係性を強めていきたいです」と力強く語ってくれました。
今後も地域に根ざしたサポートで、生産者の問題解決や農業活性化に取り組むというJAグループ三重。
杉山さんのような志ある農家を応援するべく、ブランド農産物の認知度向上にも前向きで、これからも三重の農業に注目が集まりそうです。
取材協力
すぎやまファーム
お問い合わせ先
JAグループ三重
三重県内のJA営農担当部署まで
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