~森と地域と人をつなぐ~ 市内面積の約65%が森林の自然豊かな地での「自伐型林業」の重要性とは|マイナビ農業

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~森と地域と人をつなぐ~ 市内面積の約65%が森林の自然豊かな地での「自伐型林業」の重要性とは

~森と地域と人をつなぐ~ 市内面積の約65%が森林の自然豊かな地での「自伐型林業」の重要性とは

鹿児島県出水市の森林面積は21,325ha。市の64.6%を占める広さです。しかし、林業の担い手不足や高齢化の影響で、森林資源の課題を十分に解決できていない状況。そこで、出水市は5年ほど前からNPO法人と連携し、参入障壁の低い「自伐型林業」の取り組みをスタートしました。今回はその取り組みにいち早く反応して参入を決めた山口さんと中尾さんの活動に着目。一般的な林業とはちょっと異なるけれど、小さな一歩を踏み出した二人の情熱から、出水市の林業の未来や面白さを感じてみてください。

眠れる森林資源を
地域や人のためにも活用していく取り組み

放置状態の民有林。重なる枝葉が太陽光を遮り、暗く鬱々とした環境に。木や土壌の健康が阻害されると山の保水力にも影響を与え、土砂災害の一因にもなりかねない

鹿児島県の北西部に位置する出水市。日本一の渡来数を誇るツルの越冬地として知られ、400年前からほぼ変わらない町割や武家屋敷群があるなど、自然と歴史に彩られた地域です。北部が八代海(不知火海)に面する出水平野には、街の賑わいとのどかな田園風景が同居。一方で南部には、深い山々が連なります。中心街が平地にあるので認識しにくいのですが、民有林における人工林率は約70%と高く、林齢50年前後の森林が多いことから、自治体としても適正な整備や保育事業を進めていきたいと考えていました。
出水市が森林所有者に意向調査を行ったところ、相続どころかどの山を持っているのか分かっていない人、手放したいと考えている人が多いとの結果が。所有者が高齢になれば山の手入れは疎かになり、例え手入れをして材木を販売するにもコストが見合わず。そんな現状で多くの民有林が見向きもされなくなり、荒れていくのは必然と言えるかもしれません。

「自伐型林業」で整備を進めている最中の山林。短伐期皆伐施業では樹齢50年ほどの木を全て切るが、自伐型では良い木を残して1本ずつの付加価値を上げる狙いも

そうした問題に対し、出水市は「森林・山村多面的機能発揮対策交付金」を活用し、里山林整備を行う活動組織に対する支援を打ち出しました。日本の林業人口を増やしていく目的を持つNPO法人自伐型林業推進協会の協力を得て、地域で研修会を開くなど、林業の裾野を広げる取り組みを進めています。ちなみに「自伐型林業」とは、森林所有者が自ら施業をしたり、山守と共同で実施したりする林業のこと。50年単位で皆伐と植林を行う一般的な林業(短伐期皆伐施業)とは異なり、100〜150年以上かける多間伐施業が特徴です。小規模施業を基本とし、機械も小型で作業道も2.5m以下でOK。一気に切ってドンと儲けるスタイルではなく、じっくり上質な木を育てて持続的に収入を得る手法でも注目されています。

アウトドア&アクティビティー活用で
親しみやすく楽しめる森づくりを

公園やキャンプ場の環境整備から林業に興味を持った山口さん。自伐型林業は兼業でもできるため、本業を持ちながらでも取り組めるのは大きな魅力になっている

鹿児島県推奨の“森林浴の森”に指定されている出水市の『たかのやま公園』は、キャンプ場や親水広場なども併設された市民憩いの場所。出水市から業務委託を受け、この公園の管理・運営を行っているのが「NPO法人ひと・まちサポートいずみ」の山口光一さんです。2014年に青少年育成や地域安全活動を目的としてNPO法人を設立し、公園の環境整備や体験学習などを通じて、地域貢献に取り組んでいます。
山口さんが自伐型林業に興味を持ったのは、この公園管理がきっかけでした。指定管理業務で入った当初は、お世辞にも整備されているとは言い難い環境。周囲の森は荒れ、鬱蒼として暗い雰囲気だったと言います。
「まず手始めに、荒れていた森の木々を200本ほど切ったんです。すると視界がパッと開けて高野山ならではの眺望が出現。海抜100mほどですが、八代海や天草を望めます。地元の人から、ここから海が見えることを知らなかったと言われました(笑)。少し手を入れただけで、見える景色が変わり、利用者の明るい声が増えたのは驚きでした。キャンパーが景色を見ながらコーヒーを飲んでリラックスしている様子を見ると、やっぱり嬉しいですね」。

林業では危険が伴う作業が多いため、安全に関する知識や行動は不可欠。山口さんは個人的な活動や研修会などを通じて技術・知識を高めている

そこから山口さんは、公園整備に注力。その中で出水市の支援を活用し、自伐型林業の研修会にも積極的に参加して技術・知識を磨いています。低迷していたキャンプ場は、山口さんたちの手により今では予約を取るのが難しいほど人気に(コロナ禍の為、2022年3月時点では利用が制限されています)。手腕を生かし、現在は社会教育施設である『出水市青年の家』の敷地にある山林の整備に着手。子どもたちが思うままに遊んで、自然と触れ合える森づくりを目指しています。
また、この学びを通じて次に紹介する中尾さんとの出会いもありました。地域の里山林整備を行う『出水里山よくし隊』では、ともに里山林所有者や地域住民とコミュニケーションを図りながら、里山林の価値を高め、地域の風景を守る一助になればと奮闘中です。
「私にとって林業は、地域や人をつなぎ癒す手段の一つ。自伐型林業に参加したことで、正月の鬼火焚きの手伝いに参加したり、庭木の剪定を頼まれたりと地域とのつながりも増えているんですよ。公園や施設に付随する森林整備だけでなく、どう活用させるかがこれからの課題であり夢でもあります。フォレストアドベンチャーといったアクティビティーに特化した森づくりも面白そうですよね」。

どうせやるなら面白い仕事を!
熱い夢を持ち続けるフォレストワーカー

整備や保全を担う山林の定期的な見回りを欠かさない。すぐに結果が出ない仕事ではあるが、未来の環境を残せる壮大な仕事でもある

『株式会社WOODLIFE』の代表を務める中尾雄基さん。祖父の代から素材生産を行う林業を営んでおり、中尾さん自身も高校卒業後すぐに家業へ。27歳で事業継承するまで、代々受け継いできた仕事に疑問を持つことはありませんでした。

『WOODLIFE』に入社して約2年の後迫さん。もともと自然や屋外で体を動かすのが好きだったため、林業にもすんなりと馴染んだそう

「意識が変化したのは、事業継承してから。具体的なきっかけは無いのですが、自分の会社をもっと面白いものにしたいという気持ちは大きくなっていました。単に伐採して丸太を作るだけでなく、森に入る個人的な楽しみのためだったり、大好きな地元のためにどんな林業ができるかだったり。そんなことを考え始めた頃に出会ったのが自伐型林業なんです」。
すでに林業従事者としてキャリアを重ねていた中尾さん。自伐型林業の魅力は、社会貢献につながることだと瞳を輝かせます。現在は、会社がある地域をメインに森林所有者と10年間の契約を交わし、荒れた山林を整えている最中。山の中に道を造り、間伐や枝払いをして、良い木をよりよく育む環境へ変えていく作業です。すでに整備を終えたエリアを案内してもらうと、すぐ隣りにある未整備の山林との違いは歴然! 木漏れ日が地面まで届き、健やかな空気に満ちた気持ちのいい空間になっていました。

整備前には入念な下見を行い、作業道をどう通すか、間伐はどうするかの計画を立てる。「将来の山の姿をイメージしてデザインしていきます」と中尾さん

「私たちが取り組んでいるのは、10年先を造る仕事。契約期間中はずっと整備を続けていくのがポイントです。定期的なチェックを行うので再び荒れることが無いし、整備用の道を造る際や間伐時はその後の水はけにも配慮するため水害対策にもなります。作業をしながら思うのは、私たちの手で再生させた山林が山主さんの自慢になること。誰にも売りたくない、継承したいと思ってもらえる山をつくっていきたいですね」。
中尾さんは幼い頃から森や林業が身近にあった人。周囲とのつながりも強く、自分を育ててくれた地域や環境や人に、自分ができることで貢献していきたい思いを持っています。その先に、林業や森に対する新しい価値観を作りたいという大きな夢も。

間伐などの作業を円滑に進めるため、まずは作業道を確保する。重機や機器のオペレーションに興味がある人や経験者にも魅力的な仕事かもしれない

2年ほど前にWOODLIFEに入社した後迫信一郎さんは、そんな中尾さんの思いに触れてますます山が好きになったそうです。「林業は未経験でスタートしました。現場で業務を覚えながら、出水市をはじめとする外部の研修会に参加して知識と技術を学んでいます。肉体的な大変さはあるけれど、キレイになった山を見ると苦労も吹っ飛びますよ。それに山で食べる昼ご飯が美味しくて」と笑います。

自治体の後方支援で自伐型林業を推進。
まちの魅力アップや活性化につなげます

「自伐型林業」が増えれば、森林が蘇り、地域の環境や人の心にもよい影響を与えると信じる3人。山や森の魅力を高める活動は今この時も続いている

「私たちの思いに共感する仲間づくりを進めていきたい」とは、山口さん・中尾さん共通の思い。林業の経験が無くても、山やアウトドアが好きな人、まったく別の業種を経験した人などが興味を持って参加することで、可能性が大きくなるとも考えているようです。機械化によって林業女子が増えつつある現状があるなど、女性を受け入れるステージが整ってきました。自伐型林業が広がることで森林の維持・管理のための雇用創出のほか、U・I・Jターン希望者の求心力や地域の魅力アップも期待できます。
出水市農林水産整備課の上原さんによると、「第一次産業である林業の活性化は大きな課題。後継者や新規参入者の確保につながる取り組みを継続して行う必要があります。自伐型林業の推進もその一つ。現在は山口さんや中尾さんが中心となっている小さな輪を、自治体との一体感がある活動で、“出水市の林業は面白そうだな” “出水市の森林整備に関わってみたいな”と注目される大きな輪にできたら」。
出水市の豊かな森林資源を活かし、次世代につなげていく種はすでに芽吹きました。これからどんな風に枝葉を伸ばし、根を広げていくのか楽しみです。

出水市では、林業就農や移住支援を積極的に行っています。この記事を読んで「林業の仕事に興味が湧いた」「出水市についてもっと知りたい」方はぜひ、電話・メールでお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。

【問い合わせ先】
出水市 農林水産部 農林水産整備課 林務水産係
〒899-0292
鹿児島県出水市緑町1番3号
TEL:0996-63-2111
FAX:0996-63-4134
E-mail:nosui_c@city.izumi.kagoshima.jp(課代表)

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