縁に導かれつくばへ ブルーベリー観光農園を立ち上げた広告デザイナー
「つくばは農業をするのにいいところですね。サポートが手厚いので、新規就農するために東北や関西から移住してくる人もいます」。
そう話すのは、ブルーベリー観光農園アオニサイファーム代表の青木真矢さんです。自身も出身は京都府。「若い生産者が多く、市の支援も手厚いので、これからますます発展していく地域だと思っています」。
もともと、東京で広告デザイナーをしていた青木さん。つくば市で就農するきっかけとなったのは、ブルーベリー観光農園の開業プロジェクトでした。仕事のために京都へ妻と移住して広告デザインの仕事を担う傍ら、ブルーベリーのスマートシステム栽培と併設カフェのピザの作り方を学んだそうです。
妻が茨城県つくば市の出身で、義理の祖父は芝生農家だという青木さん。かねてから、祖父の土地を利用して農業に挑戦してみたいという思いがありました。
実は、つくば市は日本三大ブルーベリー産地のひとつ。「就農に向けて点と点がつながりました」。青木さんは京都での仕事を終えた後、就農を決意します。2019年につくば市へ移住し、自身の農園を立ち上げました。当時について、「わからないことにはつくば 市の担当者が丁寧に答えてくれたのでありがたかったですね。移住の翌年、2020年に認定新規就農者としてスタートを切ることができました」と振り返ります。
若手農業者が口をそろえる「ほしかったもの」とは
ブルーベリーは成木になるまで5年かかります。2年苗で栽培を始めた青木さんは、本格的な収穫を翌年に控え、2022年6月に農園をプレオープンしました。大切に育ててきたブルーベリーは23品種900株。完熟の実を食べ比べでき、焼き立てのブルーベリーピザも味わえます。初日から県内遠方や東京からも集客があり好調な滑り出しです。
農園づくりと栽培の傍ら、市内の農業者の情報発信にも取り組む青木さん。交流サロンで人脈を広げ 、農業を学ぶ大学生にインタビューしてもらい、自園のホームページで紹介しています。そこで出会った農業者が口をそろえて言うのは、「横のつながりがない」ことでした。
就農直後、自身もそんな悩みがあったと青木さんは振り返ります。「就農するにあたって、市に申請する 書類の作成に苦労していました。どんな計画書を書いたらいいのかわからず、当時同じ悩みを持つ就農者に相談できたらいいのにと自分も思っていたんです」。
そんな若手農家の悩みを解決したいと、つくば市は農業関連施策の一環として「つくば市若手・担い手農業者交流サロン」を開始します。年数回会合の場を設け、販路開拓などのテーマで講師を招いてグループワークを行います。農業者間のネットワークづくりの一役を担うことが狙いです。初年度の2021年、市から案内を受けた青木さんは早速参加しました。
コラボも商機もここから 「つくば市若手・担い手農業者交流サロン」
青木さんが参加した昨年度の「つくば市若手・担い手農業者交流サロン」の成果について、つくば市農業政策課の大野さんは「コロナ禍で対面での交流機会が減少するなか、農業者同士で同じような悩みを共有し合うことで、抱えていた課題の整理に役立ったと好評いただきました」と話します。
青木さんは「市内の農家さんとの情報交換を通じて、こんなにおいしいものを作っているんだという発見や、こんなビジネスをしているんだという驚きがあり、つくば市の農業の魅力をあらためて感じることができました」と振り返ります。ワークショップの講師陣との交流を通じて販路の開拓につながった参加者もいたそうです。
「この縁を生かし、地域の農業者でマルシェなどのイベントにも挑戦したいですね」と、交流サロンを通じてさらなる目標が見えてきました。
2022年度は全3回を予定している若手・担い手農業者交流サロン。今年度は、生産者ひとりひとりが「農業経営を通して実現したいことは何か」を明確にした上で、経営や商品のコンセプトづくりについて試行錯誤していく予定です。また、東京駅にある「日本の御馳走えん」での実践販売プログラムも予定しています。
講師陣は販売のプロフェッショナルと農業経営のプロフェッショナル。2つの視点から、これからの農業のあり方について学ぶことができます。
つくば市農業政策課の大野さんは「講師を同じ方に担ってもらうことで連続性を持たせ、昨年度構築された人的ネットワークをさらに大きく強固にしていきます」と力強く答えてくれました。
ここでしか聞けない魅力的な講話!理想の農業経営を実現するための出会いが待っています
ここで、今年度の講師陣を紹介しましょう。
まずは、日本の御馳走えん運営統括責任者の有馬毅さん(株式会社ビー・ワイ・オー)。販売のプロフェッショナルです。
「日本の御馳走えん」は、日本全国の美味しいものを集めた和のグロサリーショップ。毎日の美味しいをつくるをコンセプトに、地元メーカーの食品、土地に根付いた伝統的な四季の味覚など、生産者や作り手の顔が見える商品をセレクトしています。
ネット社会が一気に進み、そのスピード感、価格、サービスに慣れた消費者に訴求する商品・サービスのキーワードとして、同店は「商品力」「継続利用の仕組み」を挙げ、「食」にチャンスありとしています。特に、これまで同店で人気のあった商品には共通して「ストーリー」や「エピソード」があります。それらの事例を、交流サロンで紹介してくれます。
「ないものをつくるのではなく、あるものを時代に合わせて変化させる工夫が大事。皆さんの毎日の中に消費者が知らないストーリーが隠されています」と有馬さん。7月に開催する「若手・担い手農業者交流サロン」では、ワークを通してモノづくりの楽しさを再発見するとともに、売り方の工夫を学ぶことが出来そうです。
そして、株式会社わくわくお米本舗の亀田泰志さん。生産者であり中小企業診断士として農業法人など様々な経営者の経営サポートも行っている、農業経営のプロフェッショナルです。
わくわくお米本舗を経営する亀田さんは、栃木県佐野市で米の生産と米加工品の販売の傍ら、中小企業診断士の資格を持ち、経営コンサルタントの仕事もしています。「わくわくする楽しいこと」をまずは考え、それを「どうすれば実現できるのか」を徹底的に考えた結果が今につながっているそうです。家族と一緒に過ごす時間とお金を得るために、機械化が進んでいる米に集中し、生産者直販と六次産業化を進めてきました。
13年前に農地・農具・知識なしで新規就農。やってみてわからないことは近隣の農業者に聞いて教わり、今に至るという亀田さん。若手・担い手農業者交流サロンでは、自身が新規就農までに苦労したこと、新規就農してから悩んだこと、失敗したこと、心がけたこと、これからやっていきたいことなどを話してくれます。
何をすればいいのか迷える人も、漠然と将来に不安を抱える人も、農業にわくわくしている人も、「気軽な気持ちで遊びに来てください。参加しても何も変わらないかもしれませんが、参加しなければ絶対に何も変わりません」とエネルギッシュなメッセ―ジをいただきました。
つくば市では、「多様な力がつながり実現する持続可能な農業」を掲げ、新規就農を考えている人はもちろん、ベテラン農家、農業関係者など、様々な人が交流できる場づくりを目指しています。
興味のある方は、今年度の若手・担い手農業者交流サロンへ、奮ってご参加ください。
日 時:2022年11月17日(木)16時~18時
場 所:つくば市役所本庁舎2階201会議室
参加条件:つくば市内で就農している方またはつくば市在住の就農者、または将来的につくば市での就農を希望される方
【内容】
テーマ:販売力強化研修
・第1回のおさらい
・商品を売るために必要なポイント
・意見交換
・店舗販売会に向けたワークショップ
【このようなお悩みをお持ちの方はご参加ください】
・農業で儲かる方法を知りたい!ノウハウを教えてほしい!
・喜びや痛みを分かち合える仲間に出逢いたい!
・これからさらに勢いに乗る方法を学びたい!
・改めて自園の販売戦略を考えて消費者様に喜んでもらいたい!
備 考:オンライン(Zoom)での参加も可能です。ご希望の方は交流サロン窓口(agri-seminar@mynavi.jp)までお問い合わせください。
※既にお申込みいただいた方も別途ご案内いたしますので、上記アドレスまでご連絡ください。
取材協力
アオニサイファーム ブルーベリー観光農園
茨城県つくば市上郷 2223-1
お問い合わせ
つくば市 経済部農業政策課 農業政策係
茨城県つくば市研究学園1-1-1
電話:029-883-1111(内線6325)
FAX:029-868-7622
MAIL:農業政策係宛 eco013@city.tsukuba.lg.jp