飼料タンクの見える化で飼料流通の合理化を支援
『Milfee(ミルフィー)』は、飼料タンク内の残量を高精度に計測・管理するシステムだ。
飼料タンク内に後付けしたセンサーで残量を計測して、クラウドでデータを管理、パソコンなどの端末で見ることができる。
飼料流通の合理化を支援するため、株式会社YEデジタル(ワイ・イー・デジタル/福岡県北九州市)が開発に取り組み、2022年4月に量産品をリリースした。
畜産の現場では、家畜の餌を切らさずに発注するために、毎日の飼料タンクの残量確認が欠かせない業務になっている。タンクの高さは標準4~6mで大型基は8mを超え、大規模農場では50基ほどが点在する。雨、風、雪の日も屋外のタンクのはしごを昇降しての確認は、労力の負担が大きく、高所作業の危険も伴う。飼料タンクに窓はあるが、飼料は中央から減っていくため外からの確認は難しい。目測の誤りや確認漏れで残量減の把握が遅れて直前発注になることもあり、飼料メーカーにとっては人手不足の中での飼料製造・配送への対応も課題だ。
飼料タンクの確認・発注をオフィスワーク化すれば、労働負担や危険を回避して、生き物と向き合う時間を増やすことができる。また、飼料メーカーと残量情報を共有することで、計画的な飼料の生産ができ、直前発注の防止にもつながる。
「開発のスタートは目視確認の省力化でしたが、残量をより高精度に計測できればデータとして付加価値がつきます。当社はそこを目指しました」と、同社組込・制御システム本部の小舟啓介さん。現場の声を聞き、従来の他社製品では対応できなかったマッシュ飼料でも高精度な計測を実現。IoT技術にソフトウエアやクラウドの機能をかけ合わせ、経営指標や経営判断の根拠となる情報を読み取る製品開発にシフトした。
82の農場がトライアル導入 「高精度で使いやすい」の声多数
設置の容易さも製品化のポイントだ。防水型の通信端末を強力なマグネットでタンクの蓋の内側に取り付けるだけで、所要時間は1台あたり5分程度。専門業者による工事は不要だ。
クラウドや端末の設定を全て行った状態で出荷するのでスイッチを入れるとクラウドにデータが上がり、タンクの残量情報を見ることができる。同社のサービスセンターが運用をサポートしているので心強い。
これまでに牛、豚、鶏で74の農場がトライアル機を導入。飼料メーカーからの推奨、ユーザーのクチコミで導入した農場もある。南九州、北関東、東北、北海道が主な地域だ。
トライアルの主な目的は、精度の検証とクラウドの使い勝手を体験してもらうこと。「想像以上に計測の精度が高く、目視と置き換えることができる」と評価され、農場全体に展開するため量産品の予約も入った。
ユーザーの声を反映して、管理画面はシンプルにタンクの写真とアイコンで残量が一目で分かるビジュアル表示。発注タイミングを自動で判断してアラームで通知する。発注を管理画面上で完了する受注連携機能を、今秋をめどに実装する予定だ。
計測でデータを活用し畜産経営の見える化を実現
飼料タンクの目視確認を省力化する装置はこれまでもあったが、『Milfee』はより高精度な計測でデータの活用を実現。例えば、原価の6~7割が飼料代といわれる畜産経営で、収益性の指標となる飼料要求率(動物の体重を一定の量に増加させるために必要な飼料の重量)をリアルタイムで確認し、経営判断に役立てることができる。
飼料タンク残量管理システム『Milfee』は、農林水産省が取りまとめた「スマート農業技術カタログ(畜産)」に掲載。飼料流通合理化検討会においても、課題解決に残量管理のシステム化が有効とされ、両事業で補助金の対象になっている。
「残量計測から得られるデータにアイデアと機能を付加して、飼料にまつわる全てをこれで完結できるマネジメントシステムとして『Milfee』を成長させていきます」と小舟さん。製品・機能ともに自社開発だからこそ、畜産業界のニーズに柔軟に対応できることも強み。各業界でDXを進めている同社のビジネスノウハウも展開できる。
働き方改革、安全管理、環境負荷軽減など、これからの時代に求められる農場管理のサポートシステムとして、また、KPI(重要業績評価指標)策定などの経営ソリューションとして、畜産DXの第一歩となる『Milfee』のポテンシャルに期待したい。
スペック情報
商品名:『Milfee(ミルフィー)』
https://www.ye-digital.com/jp/lp/tank.php
問い合わせ先
(株)YEデジタル
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