特命チーム発足とツール導入。複合対策にシフトした大町市の本気
長野県大町市ではサルの群れが増え、里に下りて農作物を荒らす被害が頻発。2005年以降、群れにビーコン発信機を付けて生態調査と日々のパトロールで追い払いをしてきたが、受信機で群れを探して回る方法に限界を感じていた。市内で確認された21群の中には100頭を超す群れも。被害軽減には計画的な捕獲も必要である。
2020年、大町市は農林水産課にサル対策のタスクフォースを設置。それが、傳刀章雄さんら3名(同課庶務係)からなる通称「team猿」だ。「サル対策は複合的にやらなければ効果はないも同然。調査、捕獲、予防、追い払いの4点が重要」と話す傳刀さんを含む2名が狩猟免許を持つ。従来の調査方法では群れの大まかな居場所しか把握できず、対策が後手に回っていた。
そこで遠隔操作でカメラ監視やゲートを落とすことができ、簡単に移動可能な大型檻と合わせて、動物位置情報システム『ANIMAL MAP(アニマル・マップ)』を導入。群れのメス1頭にGPS発信機を付け、管内に設置した基地局で位置情報を取得し、パソコンやスマートフォンで地図上に表示する仕組みである。これでサル被害に先手を打つ。
群れごとの行動履歴をデータとして残せるので生態調査の精度も高まる。大町市では加害群の行動パターンを予測して檻を設置することで、捕獲数はこの2年で導入前の6倍に。被害地域の住民は群れの位置情報をスマホで見ることができ、予防対策に「やる気がでた」と前向きになったことも好循環だ。
調査、捕獲、予防、追い払い。大町市に学ぶ位置情報の有効活用
大町市が成果をあげた背景には、データ活用と実地活動の積み重ねがある。システム導入から1年間、群れごとの季節的な動きを地図上で把握して「なぜその時期にその場所にいるのか」を現場に足を運び調査。住人にも聞き取りを行いながら前年の月次調査報告書と当年の動きを比較調査した。GPSで群れを追い『ANIMAL MAP』で出る場所を特定したら用地交渉をして檻を設置。カメラで監視しながら数週間から数カ月餌付けをして、たくさん入るようになったら遠隔操作でゲートを落とす。群れは夜寝た場所から翌朝活動することがわかり、地域住民への注意喚起にも位置情報を役立てている。
「位置情報を使いこなして計画的な対策に落とし込んでいる現場の意見は、メーカーとしてとても参考になる」と話すのは、サーキットデザインの瓜生大輔さん(営業部 動物トラッキンググループ)。管内の被害多発地域では、開発試験中の移動が簡単な小型基地局を設置して大規模な捕獲をアシストした。「サルが出なくなった。農作物が作れるようになった。ありがとう」といった市民の喜ぶ声がチームの原動力。自治体職員のそんな言葉が、瓜生さんら同社のモチベーションだ。
大町市のサル対策強化事業は今年、節目の3年目を迎える。『ANIMAL MAP』を活用して生態調査および位置情報の把握、その情報をもとにした捕獲、予防、追い払いを自治体・市民・猟友会と協働で取り組んできた。市町村を越えて移動するサルの群れもいるため、近隣自治体とも合同で基地局を設置し、広域的にシステムを運用して対策強化を推進しているところだ。「長期的な目的は、群れを管理してサルと人里との境界をつくること」と傳刀さん。獣害対策の課題は自治体それぞれ。群れの動きを可視化する『ANIMAL MAP』は、地域の対策における弱点の把握にも役立つだろう。
お問い合わせ・キャンペーン情報
株式会社サーキットデザイン
〒399-8303 長野県安曇野市穂高7557-1
TEL:0263-82-1024
MAIL:animal@tracking21.jp
動物位置情報システム『ANIMAL MAP』
動物用GPS首輪を購入した自治体に移動が簡単な小型基地局を無料で貸出(※諸条件あり)!お問い合わせはこちら。