プラ被膜殻問題解決に向けた業界の取り組み方針
緩効性肥料のうち、プラスチック等でコーティングされた被覆肥料は、従来の基肥・追肥体系で用いられてきた肥料に比べて、作物の生育に合わせて肥効特性をコントロールできることから、減肥による環境負荷低減や農作業の省力効果が評価されてきた。その普及面積は日本の水稲面積の約6割と推定されており(日本肥料アンモニア協会 http://www.jaf.gr.jp/topics/20190507.html)、日本の農業生産において一定の役割を果たしていることが分かる。
しかし近年、このプラスチック被膜殻が水田から流出している問題を契機に、JA全農や肥料業界団体は2022年1月、プラスチック被膜殻の海洋流出防止に向けた新たな取り組み方針を発表した。具体的な内容は以下の3点である。
① 肥料の包装袋やチラシなどを通じ、プラスチック使用製品であることを周知徹底
② 流出防止対策(浅水での代かきや水尻へのネットの設置等)の周知徹底・生産現場の対策実施状況を把握し、より効果的な対策を検討
③ 代替技術の開発と普及により、プラスチック被膜に頼らない農業の実現を目指す
国内トップクラスの肥料メーカーである片倉コープアグリ株式会社は、この問題に対し、ユーザー目線に立った真摯な姿勢で、既に具体的な取り組みを始めている。
「被覆肥料の多くがプラスチック使用製品であることやプラ被膜殻流出防止対策の周知については、業界全体の方針に則って進めているところです。代替技術の普及については、「ペースト二段施肥」の実証を全国各地で実施。省力施肥技術の「流し込み施肥」「空散施肥」とあわせて、当社ならではの代替技術の普及に積極的に取り組んでいます」(片倉コープアグリ株式会社 肥料本部 技術普及部 神田芙美佳さん)
代替技術によりプラスチック被膜に頼らない農業を目指す
同社では2021年より、全国のJAグループや農業者と協力しながら同社製品の現地実演・実証を本格的に始動。一発施肥を可能とする「ペースト二段施肥」の認知度向上を図っている。同社の『ネオペーストSR502』に代表される「ペースト二段施肥」は、粘性を持たせた高濃度の液状肥料を専用田植機のタンクに搭載し、上下二段のノズルから施肥する技術だ。
「ペースト二段施肥は、地域、栽培品種、土壌など、さまざまな環境条件に最適な、上下段の施肥深度・施肥割合を見出すことが重要です。例えば、上段の側条施肥は根の近くに肥料があるので効き始めが早く、特に、東北など寒冷地や密苗※1 技術において『早期に生育を促進させたい』というご要望にマッチしています。
実証で得られたデータから各地の条件に応じた二段施肥設計を検討すると共に、生産者の皆様の声を新商品開発に生かしています。ペースト肥料のタンク品はペースト補給機との組み合わせにより、粒状肥料と比べて補給作業の負担が大幅に軽減されるので、軽労化を実感してもらうことも実演・実証の大きな目的です」(神田さん)
※1 「密苗」はヤンマーホールディングス株式会社の登録商標です。農事組合法人アグリスターオナガ、株式会社ぶった農産、石川県農林総合研究センター、ヤンマーアグリ株式会社の4者で開発されました。
<h2「流し込み施肥」「空散施肥」など省力施肥技術で代替を促進
「流し込み施肥」専用の『おてがるくんシリーズ』は水田の水口にセットして灌漑水と共に流し込む液体肥料で、省力的な施肥作業が可能となる。水田への入水と同時に均一に施肥できるのが大きな特長だ。
「従来は夏の追肥に使用するための商品ラインナップでしたが、硝酸化成抑制剤の働きで脱窒や溶脱による肥料利用率の低下を抑えた、基肥から追肥まで一貫して使用可能な『おてがるくんスーパー』を2019年に発売し、好評を得ています」(神田さん)
追肥労力の省力技術としては「空散施肥」も注目の技術である。近年拡大しつつある無人ヘリコプターやドローンによる、広大なほ場散布に適した肥料が『空散追肥306』だ。同社では今後の普及拡大を目指している。
JA全農や肥料関係団体では「2030年にはプラスチックを使用した被覆肥料に頼らない農業に。」を理想に掲げ、取り組みを進める。各自治体やJAにおいても環境負荷低減と経営効率向上に向け、代替技術の検討をおすすめしたい。
[商品名]
■有機入り緩効性ペースト肥料『ネオペーストSR502』
■流し込み肥料『おてがるくんシリーズ』
■空散用肥料『空散追肥306』
[問い合わせ先]
片倉コープアグリ株式会社
〒102-0073
東京都千代田区九段北1-8-10
住友不動産九段ビル15階
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