変わる気候、異常気象を乗り越えるには?気象予報士×現役農家×資材メーカー座談会【ダイジェスト】
公開日:2022年09月01日
最終更新日:
昨今の気象がもたらす農業への影響。その解決策となりうるテクノロジーとは? 気象予報士の根本美緒さんの司会で、ノウカノタネのつるちゃん、デンカ(株)アグリプロダクツ部の坂下さんをゲストに迎えて座談会が行われました。「各分野の専門家と話せるのが楽しみ。この機会にぜひ詳しく聞いてみたい」と鼎談前の意気込みを語る三者。気象予報士、現役農家、資材メーカー、それぞれの視点でテーマを深堀りしたトークをダイジェストでお届けします。
今回の座談会参加者のみなさん
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司会:根本 美緒(フリーアナウンサー、気象予報士)
大学卒業後、東北放送アナウンサーとして活躍。気象予報士の資格を取得し、05年1月よりフリーに転向。主にテレビ番組などの「お天気コーナー」で担当キャスターを務める。現在、大学院博士課程で熱中症のリスクモデルを研究中。 |
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ゲスト:鶴 竣之祐(ノウカノタネ株式会社 代表)
「ノウカノタネ」で農系YouTuber/Podcasterとして活動する多品目野菜&果樹農家。落葉果樹を専門にフリーランス園芸指導員としても活動。作物を買ってもらうことに全く面白みを覚えず、植物を切ったり繋いだり実験することが大好きな珍しいタイプの若手農家。 |
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ゲスト:坂下 普志(デンカ株式会社アグリプロダクツ部)
大学で植物栄養肥料学を学んだのち、1992年デンカ株式会社へ入社。肥料事業に関しては新潟にある工場で20年間、肥料であり農薬でもある石灰窒素の研究、製造に携わった。2017年に本社営業部門に異動し、技術分野を担当している。 |
九州の夏は野菜が採れない!? 現在の気候と農業への影響について
根本美緒(以下、根本)
みなさん、こんにちは。MCの根本美緒です。私たちの生活に大きな影響を与える天気。農業界も例外ではありません。そこで、今回は異常気象を乗り越える農業テクノロジー最前線と題してお伝えしていきます。ゲストはこちらのお二人です。
鶴竣之祐(以下、鶴)
坂下普志(以下、坂下)
根本
さて、今年は梅雨明けが6月でとても早かったですね。その後は、暑い日が続いて農家さんは本当に大変なのではないでしょうか。作物に影響がありますよね?
めちゃくちゃあります。前までは夏に温度が高くなると野菜が採れすぎていましたが、今は逆に暑すぎて8月は九州で野菜が採れなくなっていると、市場の方から聞きました。
鶴
根本
根本さんに聞いてみたいんですけど、農家の実感では明らかに気温が高くなっていますが、データを持ち出して地球温暖化はしていないという人がいたりしますよね。
鶴
根本
懐疑派ですね。一定の割合でいますが、国際的な研究報告会でも地球温暖化は起きているというのが定説になってきました。海水温が上がっているのは明らかで、水蒸気量が増え、雲が大きくなりやすく、激しい雨が降ります。それで、1時間に50㎜以上の雨が増えているんですよ。
私も根本さんに聞きたいのですが、天気予報で「数十年に一度の」と言うのは、変化が激しいことの表現 なんですか。
坂下
根本
気象庁は、注意喚起をするために「数十年に一度あるかないか」のような表現をします。寒暖差が激しいとか、今まで雨が降っていないところで降るとか。今年は東北で川が氾濫するほどの雨が降りましたが、激しい現象が起こることを言いたいわけです。
自分のいる福岡市で降らなくても、福岡県南部や熊本県の北部は毎年のように大洪水で、農業ができなくなっています。
鶴
根本
暖かく湿った空気が山にぶつかるエリアでは、いつまでも影響を受けるところが出てきますね。植物に影響が出ることはありますか?
雨が多いのもそうですが、今年は少なすぎて影響を受けています。カンカン照りで毎日37℃。咲いた花が全部落ちていく状態です。
鶴
根本
正直、どうしようもないです。農業は暖房で温度を上げることはできますが、温度を下げることは難しくて、九州で夏に野菜は無理だとなりつつあるんですよ。
鶴
根本
デンカさんは、農家さんへの気象の影響を御覧になって、会社としてどのように向き合っているのですか。
私たちメーカーにできることは何だろうかと常々話しています。その中で、ひとつの提案としてできることが、土づくりです。
坂下
根本
そうですね。植物は動くことができません。そこで、植物がいる環境をよくすることが最善となります。それが土づくりです。もう一つは、後ほどお話しさせていただきますが、植物自体の能力を引き出すことです。まずは土づくりに改めて目を向けていただきたいです。
坂下
鶴
肥え持ちや水持ちをよくしたり、空気の量をたくさん含ませてふかふかにして、土のキャパシティ(許容量)を増やしておくことで、気候変動においても土の能力で補いましょうと。
坂下
(土の)バッファ(緩衝能)を増やすんですね。科学的にどういうことをしたらいいんですか。
鶴
堆肥を入れるのが、ひとつです。土づくりの基本中の基本ですね。
坂下
鶴
農家さんの土にもよりますが、よくあるのは牛糞堆肥。土のふかふかさを増すのに粗大な有機物が入っているものがいいとされています。
坂下
鶴
それよりは、EC(電気伝導度)の低さです。資材中の塩分が少ないほど施肥設計がしやすくなります。
坂下
鶴
樹皮を発酵させたバーク堆肥です。特に堆肥の中の腐植酸が重要で、統計資料によると、堆肥1tに1.8kgの腐植酸が含まれているというデータがあります。ただ、堆肥が大事なのはわかっていても、撒くのは大変。良質な堆肥を手に入れることも大変です。補完する資材の中でも、私たちが持っている資材のひとつ「アヅミン」は、腐植酸を約50%含んでいるので40kgで堆肥1tとほぼ同量の腐植酸がまかなえる計算になります。
坂下
根本
それは助かりますね。鶴さんは実際に使っていますか。
昔から使っています。僕は山の中の農家なので、1tの堆肥を持ち込むのはすごく大変ですが、アヅミン2袋で同量の腐植酸を入れることができるので楽なんですよ。
鶴
根本
それが、結果的に環境の変化に対応できる土になるということですよね?
土の基礎体力づくりに役立っていると思います。土づくりは手間がかかるわりには、効果がなかなか見えないんです。平年並みの気候のときは、ますます見えにくい。だからこそ、今のような気候が大きく動くときに、土づくりを見直していただければと思います。
坂下
植物の環境対応力を高めてあげる? 気候と付き合っていくためにできること
根本
続いて、異常気象がもたらす農業への影響に対して私たちができることを聞いていきたいと思います。政府の気象研究には緩和策と適応策があり、緩和策はCO2を減らすなど、適応策は異常気象を受け入れて品種改良や別の物を作る提案がよくありますが。
最近、東北でミカンができるようになったとよく聞くので、九州はパイナップルを作ろうとか。冗談みたいな話ですけど、実際に植えたら実がなったので、本当にできちゃうかもという感じはありますね。
鶴
そこまで劇的に変えるのは、農家さんのこれまでの経験や実績をオールクリアにしてゼロから始めることになりますが、私たちは今までの技術の中でなんとかできることを提案するという発想です。
坂下
根本
そのひとつが、バイオスティミュラントというカテゴリーの資材です。
坂下
根本
日本語に置き換えると生物刺激剤になります。もともと作物が持っている環境に対応する力を助けるもので、農薬でもなく、肥料でもない、新たなカテゴリーの資材になります。
坂下
根本
肥料は植物の中の構成要素を提供する資材で、窒素、リン酸、カリは多量に使われる代表的な成分です。それに対して、バイオスティミュラントは、作物の本来持っている力を刺激する資材なので多量には必要ありません。
坂下
肥料成分がほとんど入っていないのに肥料として売られていたり、肥料と違って効いているのか実感しにくく、バイオスティミュラントは正直、わかりにくいものが多いです。
鶴
メーカーとしては上手に説明しなければならないところですね。
坂下
鶴
バイオスティミュラントは多量には使用しないので、肥料成分は最低限度にとどめています。それには、農家さんの施肥設計に影響させたくないという意図があります。
坂下
根本
それも説明させてください。農薬は害虫や病気などのいわゆる生物ストレスを軽減する資材。一方のバイオスティミュラントは非生物ストレスを軽減する資材です。
坂下
わかった! 虫とか病気などの外敵は農薬で退治するけど、暑さや乾燥などの異常気象がきたときの薬(資材)として新たにバイオスティミュラントが出ましたよと。
鶴
根本
刺激を与えると植物が自分の能力を出すなんてことが起こるんですね。
昔から経験的に知られていたことが、昨今の環境ストレスで再評価されました。分子生物学的な研究が進んで、それをもとに作られた資材もあります。つまり、過去の経験と新しい知見の両方があるのがバイオスティミュラントです。
坂下
鶴
概念的にはそうです。ただ即効性もあるようで、台風の影響を受けた苗に撒いたら回復したという農家さんの報告もありました。
坂下
これまで気候変動には、対症療法しかなかったんです。農薬を撒く、肥料をやる、水をやるとか。それを内側から変えていく方法が提案されて選択肢が増えました。
鶴
農家さんに喜んでもらえるとメーカーとしては嬉しいですね。
坂下
根本
天候は農業にとって切っても切れない存在です。企業さんのアイデアと力をお借りして、農家さんに頑張って気候変動と闘っていただいて、日本人の食卓をこれからもよろしくお願いしたいです。
※気象に関しては様々な意見があります。座談会の内容はあくまでも各者個人としての見解となります。
まとめ:気象情報とサイエンス&テクノロジーで持続可能な農業へ
「まだまだ聞きたい」とゲストの二人が言うように盛り上がりを見せた座談会。天気と共生する未来を作るためには、農家には新しい技術を受け入れる姿勢が、企業には農家に寄り添う姿勢が大切であることがわかりました。
後半で話題になったバイオスティミュラントのカテゴリーで、デンカが提供している資材の一つが、腐植酸液状複合肥料「レコルト」です。2021年10月より本格販売を開始しました。腐植酸である活性フルボ酸の働きにより、根張りを向上させ、作物の環境ストレスへの耐性を高めることが期待されます。根元施用と葉面施用に対応し、あらゆる作物に使用することができます。
「この暑さで、実際に作物の状況はどうなっているのか。また、そこに寄り添う企業さんの話を具体的に聞くことができました。本日の話を頭に入れて気象情報をお伝えしたいです」と、根本さんが鼎談の感想を話してくれました。
座談会オフショット。撮影後も天候や農業の関する話が続きます
正しい情報を基に、今ある技術を上手に使って、持続可能な産業を一緒に作っていきましょう。
座談会の完全版は動画でご視聴いただけます。
【ノウカノタネTV(前編)】
【Denka Channel(後編)】
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