日本政策金融公庫農林水産事業本部では、食品に関する消費者の意識や購買行動などを把握するため、毎回、消費者の関心が高いテーマを設定し調査を実施している。2022年7月には、全国の20~70歳代の男女各1000人を対象に「食品の値上げに関する消費者動向調査」をインターネットで実施した。
食卓に影響するのは 米・野菜・肉の価格
値上げの影響度が大きいと感じる品目順に上位3つを質問する項目で、消費者が最も多く1位として選んだ品目は「米」で27.8%。しかし、1位・2位・3位すべてを合計した場合、値上げの影響度が大きいと感じる品目に最も多く選ばれたのは「野菜」で59.7%、次いで「肉」の42.7%である。
いずれも直接農家が生産する農産物が上位。日常の食卓に欠かせないものであるだけに、消費者はその価格に敏感なようだ。
値上げしても買わざるを得ないのが農産物
近頃、各食品メーカーから値上げが発表されている。実際に消費者もパンや小麦粉、食用油といった加工品の値上げを感じているようで、「値上げを感じる生鮮・加工食品」の上位には加工品が並ぶ。
しかし、1位のパンに次いで2位となったのは野菜だ。
実際2022年の春にはタマネギの価格が高騰し、9月現在は落ち着いたものの平年に比べると高値感が残っているようだ。一方、その他の野菜の価格は平年並み だ。
ただ、値上げを感じたからと言って消費者が野菜を買わなくなるかというとそうでもないらしい。野菜の値上げを感じた人の中で「今まで通り購入する」と答えたのは46.6%。パンの43.4%に比べても、やや多い。しかし、「購入量を減らす」が20%、「安く販売している店で購入」が16.6%、「安い価格帯の商品を購入」が8.7%、「割安になる分量で購入」が5.8%と、消費行動を変える人も多いようだ。
消費者が納得する「値上げの理由」とは
同調査では、消費者の「食品の値上げ要因に対する納得感」についても調査している。
82.9%の人が「納得できる」「やや納得できる」としたのが、「天候不順などによる不作・不漁」という項目だ。農産物の価格はもともと需要と供給のバランスに大きく左右されるもので、その背景となるのは天候や作況であるということが一般的に知られているというのも、納得感の高い理由だろう。
その次に納得感が高かったのが「原材料の価格の上昇」で、76.8%。また「運送・物流費の上昇」や「円安の影響」についても、7割以上の人が「納得できる」「やや納得できる」としている。これらは他の加工食品などの値上げの要因となっているもので、農産物についてもこうした理由での値上げは容認される傾向にあるようだ。
現在、肥料や飼料をはじめとした農産物の生産に必要不可欠な資材の価格は高騰しているが、その分農産物の価格が上昇しているかといえば、必ずしもそうではない。市場の動向や消費者心理を背景とした野菜の価格設定について、再考すべき時は近づいているのかもしれない。
【資料提供】日本政策金融公庫 農林水産事業本部