化学肥料だと三大栄養素は効率的に施用できるが……
三大栄養素(窒素、リン、カリ)については、ほとんどの生産者が積極的に施用していることでしょう。決まった農作物を繰り返し栽培することにより、特定の元素が不足することによる連作障害も心配され、微量元素も十分に施用されるようになっています。
ところが、日本では土壌中に十分にあるものと楽観視され、今後、欠乏することによる障害が懸念される元素があるといいます。長年、土壌学の研究に取り組み、現在、一般社団法人日本土壌協会の会長も務める、東京大学名誉教授の松本聰さんが、こう指摘します。
「日本は数多くの火山があるために、火山から供給されたイオウが豊富にあるものだと考えられてきました。しかし、2000年に滋賀県でイオウ欠乏によって水稲が黄化する事態が発生しました。誰もイオウが欠乏しているとは考えずに、なかなか原因は特定されなかったのですが、同様の障害は広島県でも発生しており、今後、他の地域でもイオウ欠乏が顕在化していくと心配しています」
古来、日本では豊富に獲れた海産物を発酵させた金肥や、人間が排出した下肥が肥料として田畑に用いされてきました。これらの肥料は生物由来であるため、三大栄養素だけでなく、微量元素も豊富に含んでいたため、イオウ欠乏が起こることはありませんでした。ところが、戦後に普及した化学肥料は、効率的に三大栄養素を施用できる一方で、日本では豊富にあると思われていたイオウが補充されることはなく、イオウ欠乏になりやすい条件ができあがってしまったのです。
硫安では土壌は酸性に傾きすぎてしまう
今後は他の微量元素と同じようにイオウも積極的に施用することが求められますが、松本さんによると、現在、広く利用されているイオウ資材には難点があるそうです。
「イオウを施用するのに、これまでは化学肥料の硫酸アンモニウム、一般的に言う硫安が使われてきました。イオウだけでなく、アンモニアに含まれる窒素も供給できるのですが、強酸性の硫酸と弱アルカリ性のアンモニアが結合した物質であるため、硫安を施用し続けると土壌が酸性に傾きすぎるという問題はありました」
硫安を施用する場合、アルカリ性の資材も一緒に施用して中和する必要があり、手間がかかっていました。そこで松本さんは硫酸カルシウムを用いるとよいとアドバイスしてくれました。
「強酸性の硫酸が含まれていることに違いはありませんが、弱アルカリのアンモニアが結合した硫安と異なり、強アルカリ性のカルシウムが結合したものなので、硫酸カルシウム自体が中性ですから、施用しても土壌を酸性に傾きすぎることはありません。実はこの硫酸カルシウムは石膏の主成分なんです。ですから、建築資材の石膏ボードを再利用して作られた土壌改良材の『エコカル』はお勧めできます」
難溶性のエコカルなら過剰施用のリスクなし
欠乏するイオウを補充するため、イオウ資材の施用が求められるわけですが、畑地の場合、土壌の中まで空気が存在するために還元的な環境になることはありません。さらに豊富な雨水による流亡によって、過剰なイオウ施肥による硫化水素の心配はほとんどしなくてもいいのですが、水田では過剰施肥に注意が求められます。特に硫安は速効性のために気を付ける必要があるのに対して、「エコカルなら心配無用です」と、松本さんが太鼓判を押す。
「エコカルは難溶性なので、イオウやカルシウムはゆっくり溶け出します。すぐに水稲に吸収されるため、土壌中に高濃度のイオウが残留して、硫化水素を発生させてしまうようなことはないでしょう」
そのため代掻きの前に元肥として施用することで、長期にわたって徐々にイオウが供給されます。不足すると思えば、ペレット状のエコカルを散布することも可能です。水稲の場合、1反(10アール)あたり5~6袋(1袋20㎏)の施用であれば、硫化水素を発生させることなく、不足するイオウを補うことができると言います。実際、イオウが不足する圃場でエコカルの効果を比較したところ、未施用区では多くの稲が倒伏したのに対して、施用区では倒伏することなく、無事に収穫することができました。
イオウ欠乏が心配されるのは水稲だけではありませんから、露地栽培の畑作なら元肥として3~5袋を土壌に混ぜ、追肥として2~3袋を施用するといいでしょう。希少成分のフルボ酸を含む「フルボ酸入りエコカル」も販売されており、欠乏するイオウを補うためだけでなく、農作物の生育を促すためにも積極的にエコカルを取り入れることもお勧めできます。
エコカルを製造販売する石膏再生協同組合は2022年10月12日~14日に幕張メッセ(千葉県)で介される「農業Week」に出店を予定しています。この記事でエコカルに興味を持った読者の皆様、農業Weekでエコカルの効能を体感してはいかがでしょうか。
※9月29日~10月4日の間、一部誤った記載があり、取材させていただいた松本聰先生のご指摘により該当箇所を削除いたしました。現在の内容が最新版となります。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。
<取材協力>
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