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耕畜連携とは? 「地域内循環」は飼料や肥料の価格高騰対策、自給率アップにつながるか

耕畜連携とは? 「地域内循環」は飼料や肥料の価格高騰対策、自給率アップにつながるか

複雑な国際情勢を反映して飼料や肥料の価格が高騰し、その影響は農家を直撃している。その解決策として注目を集めるのが「耕畜連携」だ。この耕畜連携を推進することで地域内の資源が循環し、輸入に頼らない営農が可能になりそうだが、こうした取り組みが隅々まで普及している状況とは言い難い。普及へはどんな土壌づくりが必要なのか、専門家に聞いた。

耕畜連携とは

耕畜連携とは文字どおり、野菜やコメを作る「耕種農家」と、牛乳や鶏卵、食肉などを生産する「畜産農家」との連携を指す。耕種農家で生産した飼料作物などを畜産農家に提供し、それを食べた家畜から出たふん尿で作った堆肥(たいひ)を畑に戻し、飼料作物やその他の農産物の生産に役立てるというものだ。
現在、畜産飼料の多くは輸入に頼っており、その自給率は2021年度のデータでは飼料全体の25%(カロリーベース)。店頭に並ぶ国産肉も、その多くが外国産の飼料を使って生産したものだと言える。しかし、輸入飼料は国際情勢等によってその価格や需給が大きく左右され、そのたびに畜産農家は苦境に陥ることになる。一方、作物生産を支える化学肥料の原料も輸入に依存しており、耕種農家も輸入肥料に頼らない、より安定した土づくりのための資材を求めている。
もし地域内で耕畜連携がうまくいけば、畜産農家は飼料の輸入への依存の度合いを下げることができ、耕種農家は化学肥料の使用量を減らすことができる。こうした背景もあって、農林水産省が推進する「みどりの食料システム戦略」や、昨今話題のSDGsの考え方にも合致する取り組みとして耕畜連携は注目を集めている。
この耕畜連携に長年携わってきた山形大学農学部教授の浦川修司(うらかわ・しゅうじ)さんは、こうした背景から「日本はそろそろ腹をくくって耕畜連携に取り組むべき」と語る。耕畜連携の背景と現状、そしてこれからについて浦川さんに聞いた。

■浦川修司さん プロフィール

近藤貴馬 山形大学農学部教授。農学部附属やまがたフィールド科学センター高坂農場長。
三重県畜産研究所主幹研究員、農研機構畜産草地研究所上席研究員を経て、2015年から現職。「庄内スマート・テロワール構築プロジェクト」を立ち上げ、その統括リーダーも務める。

水田で飼料を作る

──飼料や肥料の価格高騰で、耕畜連携に注目が集まっています。そもそも耕畜連携はどのように始まったのでしょうか。

「耕畜連携」はコメの生産調整と密接な関わりがあります。高度成長期に入り日本人の食生活が変化し、以来コメは余っています。そんな中でいわゆる「減反政策」の一環として、水田で飼料用作物を作ることになりました。しかし、水田で麦や大豆、飼料作物を栽培すると湿害(水分過多による生育障害の被害)を受けることが多い上、大型の農業機械を使った作業が困難なことも多い。一方で、農林水産省は水田を維持する政策を推進していて、畑への永久的な転換は難しかった。そこで、コメの生産調整の強化にともなって稲を飼料用として活用しようとなったわけです。
早くに始まったのが「稲ホールクロップサイレージ(以下、稲WCS)」です。ホールクロップ(whole crop:作物全体)ということで、トウモロコシや大麦などを実ごと刈り取って、円柱状にまとめた“ロールベール”にしてからフィルムで包んで密封し、乳酸発酵させた貯蔵用飼料がホールクロップサイレージです。稲WCSの場合は、もみごと刈り取ってサイレージにします。

サイレージ

サイレージのロール(画像はイメージです)

──稲WCSは主食用米の稲でも作れるものですか?

主食用米の稲でも作れますが、特に茎葉部(わら)が多収な専用の「WCS用稲」が育種されています。WCS用稲は主食用品種と違って、もみが少ないものが良いとされます。牛がコメを覆うもみを消化できず、コメの栄養を吸収できないからです。そこで、穂が非常に短くて茎葉部が多い極短穂型の専用品種として、「たちすずか」「つきはやか」などが農研機構で開発されています。

WCSプロジェクト

──飼料米を生産している農家が増えている印象です。

もみ米や玄米だけを利用する飼料用米も、新規需要米として推進されるようになりました。元々、玄米は家畜全般の飼料として、MA(ミニマム・アクセス)米と呼ばれる輸入米やクズ米が使われていましたが、2010年から飼料用米の生産にも助成金が支払われることになり、それ以来、作付面積が増えています。主食用米と同じ技術と機械で作れるので、農家の方々が取り組みやすいのもあったと思います。
飼料用米は食味よりも多収であることが求められるので、現在は各地で専用品種も開発され、利用されています。

──稲わらの活用についてはどうでしょうか? 近年、中国からの輸入が滞ったとの報道もありましたが。

稲わらは水稲のもみを取った後のものですが、国内で生産されたものが有効活用されていない一方で、輸入も多くされてきました。特に肥育牛にとっては重要な粗飼料ですので、稲わらも耕畜連携で取り組む飼料資源として位置づけられますね。

──栽培技術は、WCS用稲と主食用の稲では共通しているのでしょうか。

栽培技術はそんなに変わりません。しかし、耕畜連携プロジェクトのはじめの頃、コメ農家さんは「しょせん牛のエサだろ」という意識で……。刈り取ってみたらほとんどがヒエなどの雑草だったこともあります。
でも、雑草が入るとWCSがうまく発酵せず、栄養価が落ちてしまうんです。
「稲WCSは換金作物で、品質も重要なんだ」と伝えることでコメ農家の意識も変わり、栽培技術も定着してきました。今では雑草だらけということはなく、品質の良い稲WCSを作ってもらえるようになっています。

──刈り取り用の機械なども、主食用米と同じものが使えるのですか?

主食用米の収穫に用いられている自脱型コンバインでは刈り取りながら脱穀してしまうので、もみごとサイレージにすることができません。また、牧草用の機械を用いてWCS用稲を収穫することも可能ですが、収穫時期に大型機械が作業できるような地耐力(地盤の強さ)がある田んぼに限られます。そこで、比較的軟弱な田んぼでも作業ができ、小回りが利くクローラー式のものが開発されました。

アイキャッチ_耕畜連携

稲WCS用の刈取機

──飼料米やWCS用稲の栽培の土壌は整ってきているというわけですね。

耕畜連携を支える仕組み

──稲WCS専用の機械はとても高そうですが、農家さんが個別に購入しているんですか?

いえ、機械の導入は組織を作って補助金等を活用しています。また、機械を保有して刈り取りの作業を請け負う組織としてコントラクターが増加しています。コントラクターというのは農作業を請け負う団体のことで、全国各地で組織され、補助金等を活用して機械をそろえているようです。耕畜連携では、収穫や調製などさまざまな作業をやってくれています。

──コントラクターは稲WCSを運んでくれたりもするのですか?

コントラクターが運搬を行ってくれることも多いのですが、運送の専門業者に委託する場合もあります。いずれにしても、稲WCSは1ロールの重さが300~400キロぐらいありますし、フィルムを破らないように取り扱いには注意が必要です。

──農家の方がこれを取り扱うのは本当に大変そうですね。

実は耕畜連携は、畜産農家が飼料用作物を作って完結している場合もあるし、大型の農業組織が大型の畜産組織と組んでいる場合もある。しかし、地域のそれぞれの農家が取り組もうと思うと、地域に合った生産体制が必要になります。

──コメ農家が飼料用米や稲WCSの売り先を見つけて、さらに売り先の畜産農家から堆肥を運んでくるのも大変そうです。皆さん、どうしているのでしょうか。

飼料用米の場合は、「全農スキーム」といって全農が直接生産者から買い取る全国流通の仕組みができています。また、個別の農家で取引することもありますが、収穫から乾燥まで主食用米と同じ施設が使えるので、扱いは難しくありません。
稲WCSの場合は、地域の耕種農家と畜産農家で個別に取引されていますが、自治体やJAなどの関係機関が耕種農家と畜産農家をマッチングすることも多いようです。でも、価格の決定や保管などについては耕種農家と畜産農家の契約次第です。ロールの保管はどちらがするのか、売買契約はどの時点で成立するのか、品質不良だった時の補償はどうするかなど、きちんと決めておかなければなりません。

──確かに、稲WCSの場合は開けてみないと品質がわからないですよね。

ですから、稲WCSはトレーサビリティーが重要になります。外側のフィルムにナンバーを書いてだれがいつ作ったものなのかわかるようにして管理し、もし不良があればすぐに対応する。こうして信頼関係を築くことが、耕畜連携を長続きさせることにつながると考えています。

流通の流れ

WCS用稲と飼料用米の栽培から流通までの流れは違う

高騰する飼料用トウモロコシも国産可能?

──畜産農家が長年使い慣れたトウモロコシの需要も高いと思います。今はこの価格高騰で畜産農家の方は大変ですが、子実トウモロコシの国産化についてはどうでしょうか。

トウモロコシについては、過去も国際情勢によって価格が左右されてきました。ですから、これも耕畜連携の中で生産すべきだと思います。中国をはじめとする新興国の需要を考えたら、今後トウモロコシをはじめとした飼料用作物の価格が下がる要素はありません。

子実トウモロコシ

子実トウモロコシ

──水田の転作作物としての子実トウモロコシにも注目が集まっています。

水田に戻すことが前提の畑でトウモロコシを栽培するのは、排水対策などが大変です。永久に畑地化できるのであれば、湿害の可能性は小さくなります。
一方、畑作は水田作と違って連作障害があるため、大豆や小麦と輪作していくことが非常に大切。実は、輪作体系の中にトウモロコシが入ると、ほかの輪作の作物にも良い影響があります。
トウモロコシは深く根を張るので、畑の排水性が良くなります。また、子実は飼料用に取ってしまいますが、葉茎部は残渣(ざんさ)として畑に戻します。耕畜連携であればこれに畜産農家からの堆肥も加わって畑が肥え、次に植える小麦や大豆の収量アップにつながります。子実トウモロコシの栽培は「畑への投資」なんです。

──投資とは良い表現ですね! 一方、子実トウモロコシ自体からの収益も気になります。

農水省の調査では、子実トウモロコシは作業時間あたりの収益が高いとしています。また栽培技術や品種改良などもあって収量も上がっていて、3年後に反収800キロを目指して研究を進めているところです。

──子実トウモロコシの飼料としての品質は、輸入物と比べてどうでしょうか?

国産で遺伝子組み換えでないというのは、強みです。さらに地元のものなら、輸送を経ておらず新鮮というメリットもあるのではないでしょうか。もっと子実トウモロコシの栽培面積を増やすためにも、国産のメリットを見つけていかなければと思っています。

耕畜連携は「地域内連携」が理想

──これまでお話を聞いてきた飼料用米や稲WCS、子実トウモロコシを食べた家畜のふん尿が、飼料を生んだ田畑に堆肥として戻って循環が成り立つわけですが、畜産県では家畜のふん尿処理に困るという話も聞きます。

私は畜産こそが循環型社会の要だと思っています。畜産がなければ地域の農業はうまく回りません。そのためにも、なるべく地域内での循環が重要だと思っていますが、ある程度の飼料用作物と堆肥の広域流通も必要でしょう。堆肥はそのままで広域流通をさせるのは大変なので、ペレットにするなどして流通しやすくする工夫も進んでいます。

──しかし、広域流通は輸送のコストやエネルギーがかかるので、持続可能性に課題があるように思えます。

私は地域内の耕畜連携の循環をうまく回すためには「地消地産」が大事だと思っています。

──地消地産? 地産地消ではなく?

はい。私の言う地消地産は「地域の消費者が求めるものを地域で生産する」という意味です。必要なものを輸入など外に求めるのではなく、消費者が望むものをある程度地域で賄えるようにすることです。

──地域の畜産農家が望む飼料を地域の耕種農家が作り、地域の耕種農家が望む堆肥を地域の畜産農家が作る、というのもその一つの形でしょうか。

そのような形で、耕畜連携は耕種農家と畜産農家が互いに目に見える関係で行われることが望ましいと思います。実際、耕畜連携が長続きするのは、一方的に耕種農家だけが飼料を提供するのではなく、堆肥がちゃんと田畑に戻って循環している事例です。
さらに私はその循環の中に、消費者も入ってほしいと思っているんです。最近では下水汚泥の堆肥化の事例もありますね。自分が食べて出したものが堆肥として農業に役立つことで、自分も地域の農業の循環の輪に入っているんだという意識になってもらえたら。
今はまだ下水汚泥の活用は限定的ですが、自分が農業生産に関わっているという意識が、地元の農産物を愛してしっかり買い支えるという行動につながるのではないでしょうか。そうなれば、もっと強力な耕畜連携と循環型社会が作れるのではと思います。

──実際に、そうした取り組みも実践しているそうですね。

はい。「庄内スマート・テロワール」と言って、農業と食を循環させ、持続可能な食料自給を実現しようという取り組みを山形県庄内地域で行っています。

スマートテロワール

──具体的にはどういった取り組みなのでしょうか?

スマート・テロワールは「地域の風土を生かした強靭(きょうじん)で持続可能な循環型農村経済圏」のことで、カルビー元社長の故松尾雅彦氏が提唱しました。
庄内は豚の産地なので庄内産の飼料用米や子実トウモロコシを豚に与えて育て、その肉で加工食品などを作って地元のスーパーで販売しています。このように、地域の消費者が望むものを地域の生産者が地域の資源を使って生産し、地域の加工業者や販売業者もその循環に関わるという取り組みです。

──消費者の反応はどうですか?

コロナ前は店頭で試食会なども行っていて、反応も上々でした。開発した「山形大学あらびきウインナー」がやまがたふるさと食品コンクールで県知事賞を受賞するなど、商品としての評価もいただいています。
庄内スマートテロワールは、商品の背景である地域内循環といったストーリー性もあって、エシカル消費につながっています。

──耕畜連携を超えた社会的な取り組みと言えそうですね。

耕畜連携という枠にとらわれず、地域全体で資源の循環に取り組むことが大事です。今のままでは、日本の農業は国際的な価格競争に左右され続けます。私は地域のあらゆる人が「団体総力戦」で、そうした影響から地域の農業を守っていくことが必要だと思っています。

──耕畜連携をきっかけに、地域のだれも取り残さない農業と食料供給が可能になりそうですね。ありがとうございました。

【取材協力・画像提供】山形大学 浦川修司

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