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品質、食味、収量アップ!家族経営の水稲農家が導入した圃場・栽培管理システムとは

品質、食味、収量アップ!家族経営の水稲農家が導入した圃場・栽培管理システムとは

静岡県西部・浜名湖のすぐそばに、夫婦2人で水稲栽培に取り組む加茂農園があります。特別栽培米や地域のブランド米などこだわりの米作りを実践していますが、近年地域の複数の圃場を任されるなど、省力化と高品質の双方を求める難しさが課題になっていました。そこで営農管理システムを導入し、デジタルデータをもとにした可変施肥を実践。過度なコストをかけることなく、品質の安定化や食味の向上、収量アップなどを実現したその秘密を伺いました。

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品質や食味をもっとよくしたい しかし可変施肥はコストが大きいし、人手も足りない

静岡県浜松市西区雄踏町ゆうとうちょう。この閑静な住宅街にある加茂農園は、代表の加茂文俊さん(53歳)と妻のさとりさん(53歳)の主に二人で水稲栽培を行っています。
家族経営で労働力が限られるなか、特別栽培米「やらまいか」や地域ブランド米「陽の娘ひのっこ」をはじめとする、品質と食味にこだわったミルキークイーンやコシヒカリなどの8品種の米づくりに取り組む篤農家です。

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特別栽培米のもち米も生産している

加茂さんが加茂農園を開いたのは36歳の時。土木関連の会社勤めを辞め、兼業農家だった妻・さとりさんの両親の後を継いで専業農家になりました。当時、圃場面積は作業受け負い分(7ha)を含め14 haほどでしたが、高齢などを理由に近隣農家が手放した圃場を維持していくために借り受け、現在は作業受け負い分(2ha)を含め点在した20 haまで拡大しています。

栽培面積が増えるなかでも、人手が増えるわけではありません。加茂さんはこれまでとやり方を変える必要があると感じたと話します。「これから先、栽培面積がさらに増えると、労働力が足りません。何よりも、面積を増やしつつも、品質や食味をもっとよくしていきたい。そのためには、新しいことに取り組んでいかなければいけないと思いました」。
そこで加茂さんは、家族経営の農家としては地域でいち早くスマート農業に取り組み始めることを決意します。

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加茂農園代表・加茂文俊さん。基本夫婦二人で圃場を管理していますが、娘さんが手伝うこともあるそう

2017年、まず省力化に向けて移植栽培の一部を多目的田植え機による湛水直播を導入しました。これにより苗生産の省力化を実現。その3年後の2020年からは、ドローンによる湛水直播も導入し、さらなる省力化を進めました。
さらにこの年は、品質の安定化や食味の向上を図るための新たな取り組みも開始しました。「私がやりたかったのは、可変施肥。これまでは前年に圃場のこのあたりは出来栄えが悪かったから今年は施肥量を多めにしてみよう、といった感じで、すべて感覚で施肥量を変えていたのです。そうではなく、目にみえる正確なデータをもとにした可変施肥を実践したいと思っていました」。

しかし、一般的に大掛かりな農機を使う可変施肥は、大きなコストがかかります。加茂さんは、可変施肥を行うための手段としてデジタルシステムの導入を決意。持続可能なコストで、可変施肥の実践を進めていきます。

念願の可変施肥を実現!解決のカギは、圃場管理と栽培管理の併用にあり!

可変施肥を行うためには、いつどの圃場に何の品種を作付けしたかといった圃場の基本データに加え、各圃場の生育状態を把握するためのデータが必要でした。

そこで2020年、データの作成・管理がパソコンやスマートフォンなどで行える、全農の営農管理システム「Z-GIS」を導入しました。Z-GISでは、Excel®︎のソフトを活用し、各圃場の場所や面積、作付け日、品種、作業内容などを記録。それだけでなく、各圃場の作付け品種や収量などがひと目でわかる色分け画面表示を行うことなどが可能です。

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圃場の状況が色で区別されるZ-GIS。視覚的にもわかりやすく使いやすいデザイン

●圃場管理や可変施肥マップの作成が簡単に

では、実際にZ-GISを使用した加茂さんはどのようなメリットを感じているのでしょうか。
「これまでは圃場や作業の情報をすべて紙に書いていました。紙だとどこかに無くしてしまったり、圃場に持参した時に汚れてしまうこともあったり・・・。それが、Z-GISを導入してからは、パソコンで簡単に圃場情報の管理ができるようになりました」と加茂さん。

またこの年から、人工衛星から撮影した、圃場の生育状態が色の濃淡でわかる解析画像を購入し、それをもとにZ-GISの機能を活用して施肥の分配量を決める可変施肥マップが作成できるようになりました。
翌2021年には、可変施肥散布が自動で行えるブロードキャスターを試験導入し、Z-GISで作成した可変施肥マップのデータをブロードキャスターに移行することで、念願の可変施肥が行えるようになりました。

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Z-GISはスマートフォンでも使えるため、圃場でも確認が可能

加茂さんの取り組みはそれだけにとどまりません。同年、Z-GISとデータを連携させて活用できる栽培管理システム「xarvio®︎(ザルビオ)フィールドマネージャー」(以降、ザルビオ)を導入。これによって、晴天日の圃場の衛星画像が自由に得られるようになったことで、より正確に生育状態や生育ムラが確認できるようになりました。

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圃場を分割し、それぞれの区域で最適な施肥量を計算してくれる

さらに大きなメリットとして、可変施肥マップが簡単に作成できるようになったと加茂さんは話します。「指定した圃場の面積あたりの総施肥量の数値を入力するだけで、生育の良いところや悪いところに応じて施肥の分配量を算出し、最適な可変施肥マップを自動でつくってくれるのです。おかげで作業がかなりラクになりました」。

●年々品質や食味が向上!収量もアップ!

加茂農園では、Z-GISとザルビオを併用することにより、感覚頼みではない、データにもとづく正確な可変施肥が行えるようになりました。その結果、栽培した米の食味や品質が年々よくなっていると加茂さんは話します。

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加茂さんが栽培する「やら米か」の5合袋。「やらまいか」は静岡県西部の方言で「やってみよう」を意味する

「特別栽培米『やら米か』として販売するには、食味計での測定値が80点以上でなければいけません。以前はその数値をクリアするのに苦労していたのですが、Z-GISとザルビオを活用して可変施肥を行うようになってからは、特別栽培米用に育てた米はほぼすべて基準値を超えるようになりました」。
また収量についてもよい変化が出ていると話を続けます。「品質が安定してきたことで粒張りの悪いクズ米が減り、収量も増えました」。

スマート農業なら、家族経営で30haの高品質な水稲生産も夢ではない

品質や食味を向上させたい。省力化を図りたい。そう考えている農家さんはきっと多いことでしょう。
一方でシステムを導入するには、多大なコストがかかりそう、”スマート農業”なんて難しくて自分には扱えない・・・と思っている方もいるのではないでしょうか。それについて、加茂さんは次のように語ります。
「Z-GISの使用料は税別で年間2,400円、ザルビオは年間12,000円。1ヵ月で考えると、Z-GIS だけなら200円、併用しても1,200円ですから、ほとんど負担を考えなくてもいいぐらいです」。

またシステムを利用する難しさについては、「確かに、使いこなせないほどのいろいろな機能があります。でも、すべて使おうとしなくていいんです。私が可変施肥をするための機能から理解していったように、まずは自分が使いたい機能だけ使い始めればいいと思います。Z-GISなどのシステムは操作さえ覚えてしまえば、誰でも同じように水稲栽培ができますから、事業継承などもしやすくなると思います」。

Z-GISやザルビオを導入するなどしてスマート農業に取り組んできたことによって、食味向上や省力化だけでなく今後の展望が広がっている加茂さん。
「可変施肥を行うようになって品質や食味が安定してきました。次は稲の生育のバラツキをより一層減らすために、追肥をドローンでやっていこうと思っています。そうすればさらに品質や食味が安定し、収量も増加すると期待しています。また昔は一人で管理できる圃場は10ha、二人だと20haが限界だと言われていましたが、省力化に取り組むことで30haぐらいまでは管理できるようになると思っています。今はそのために階段を一段ずつ上っているところですね」。

品質の向上や省力化にお悩みの皆さん。「スマート農業」を忌避せずに、まずはできることから始めてみてはいかがでしょうか。
ただいま全農では、Z-GISやザルビオをおトクに利用できるキャンペーンを実施しています。この機会にぜひチェックしてみてください!

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【取材協力】

加茂農園

【お問い合わせ】\お気軽にお問合せください/

全国農業協同組合連合会 耕種総合対策部 スマート農業推進課
電 話:03-6271-8274
メール:zz_zk_smart@zennoh.or.jp

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