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農業女子が芸能事務所へ所属 今までにない農家のキャリアに挑戦!

農業女子が芸能事務所へ所属 今までにない農家のキャリアに挑戦!

2022年12月、食用バラを栽培するROSE LABO株式会社代表の田中綾華(たなか・あやか)さんが芸能事務所入りを発表しました。所属先は女優の柴咲コウ(しばさき・こう)さんが代表を務めるレトロワグラース株式会社。
「なぜ農業経営者が芸能事務所に?!」「タレント活動をするの?」そんな疑問を抱きながら取材をしてみると、事務所と田中さんの意外な共通点が見えてきました。レトロワグラースと共に目指すことや今後の活動について、田中さんに話を聞きました。

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受賞歴多数! 注目の若手経営者

田中さんは食用バラ農家で修業を積んだのち、2015年に埼玉県深谷市でROSE LABO株式会社を設立。食用バラの栽培から、商品企画、加工、販売、化粧品のオーガニックブランド事業を手掛け、「さいたま市ニュービジネス大賞(2016年女性起業賞)」、注目の農業者を表彰する「マイナビ農業アワード(2019年最優秀賞)」など数々の受賞歴があります。

①

柴咲コウさんに「ミューズ」として迎えられる

――なぜ芸能事務所に所属しようと思ったのですか?
以前から、講演やトークショーに出演することがあって。子供から大学生まで、次世代を担う層に向けて、農業を将来の職業の選択肢にしてもらえるように農業の仕事や魅力について話す機会が多くありました。その講演の依頼の調整や、当日までの準備などを全て一人でやっていたので、マネジメントをしてもらえるということが一つのきっかけでした。

――以前から複数の事務所から声がかかっていたと伺いしました
はい。以前より数社から「マネジメントさせてもらえませんか?」とお声をかけていただくことがありました。ありがたかったのですが、露出等にタレントっぽい要素も求められており、タレント活動をやりたいわけではなかったのでお断りしていました。

――レトロワグラースは何が違ったんでしょう?
最近ESGやSDGsという言葉がトレンドですよね。
農業とESG、SDGsは密接な関係にあるので、私自身も課題感を強く持っているのですが、「SDGsでもうけよう」という風潮やファッション的に扱われているのを目にして違和感を覚えていたんです。
そんななか、柴咲コウさんが環境や農業に強い関心と信念を持ってメディアで発信されていることを知り、その姿に引かれました。とにかくアクティブさと知への欲求がすごいんです!
私はどうしても農業者の視点で考えてしまうところがあるので、環境問題などの解決に向けて先行して取り組んできた柴咲さんやレトロワグラースさんから幅広い視点を学びたいと思っています。

――レトロワグラースも、田中さんの農業現場から湧く課題感や、農業で解決できるアイデアを求めて田中さんを迎えたのでしょうね!

②

時代に求められる文化人として

――今後、発信していきたい情報について教えてください。
まずは、私が農業経営で取り入れてきた他業界のビジネス視点やノウハウについて農家の方に発信したいです。
ESGやSDGsについて学ぶ中で、改めて農業の重要性を感じますし、農家はもっと世間に評価されていいと思いです。
でも、栽培をしながら販売や経営のことも考えなければならず、ゆとりがない農家も多いのが現状です。
私が今まで他業界に目を向けて「なぜ、このマーケットが伸びているんだろう」「これって農業に活用できないかな?」と取り入れてきたビジネス視点を発信することで、農家の経営の役に立てればと思っています。

③

――田中さんが感じる農業の魅力とは?
農業は「3K」や「6K」といわれてますよね。
私は「それがかっこいいんだけどな」と思うんです。私たちはどれだけ汚くなってもきつくても「いい作物を作りたい」「お客様の笑顔を見たい」という思いで命を削ってやっている。その心が一番美しいと思います。

――一方で、農業をおしゃれで楽しいイメージに変えようとする動きもありますよね。
一つのアプローチとして良いと思いますが、私はビジネス要素のある農業をしっかり発信することが、レトロワグラースにいる使命だと思っています。それぞれの役割分担かなと思っています。
非農家で未経験から始めた身としては、農業経営を続けるには苦しい局面も多々あって、つらい思いや悔しい思いをたくさん経験してきました。それでも今、1次産業を受け継ぐ重要性を実感していますし、そのためのヒントになることを発信したいですね。

――実際、ROSE LABOでは栽培以外にも加工や6次産業化など、ビジネスとしてもさまざまな取り組みをしていますよね。
6次産業化は、途中から始めました。
きっかけは農業でのロスの多さです。食品ロスの量は522万トン(2020年推計値、農林水産省)といわれていますが、この中に農家が出荷せずに廃棄しているものは含まれていません。
農家が何らかの理由で出荷せず、相当量を畑に廃棄しているといわれています。私自身、出荷できないバラの量に驚き、出荷したバラと同じ熱量で大切に育てたものをどうにかしたいという思いから、6次産業化に至りました。
そこで培ったノウハウや販路などを、他の農家の方に使ってもらえるようにもしたいと考えています。

④

持続可能な農業のスタイルを作るために

――ROSE LABO単体というより、農業界全体に向けて今後取り組んでいくということですね。
私は深谷市で新規就農しました。その時に行政や地域の方などが手を差し伸べてくれて、おかげで農地が借りやすかったりと、さまざまな場面で優しさを感じました。ですから、地域や農業界に向けて、何かしらの貢献をしたいという気持ちを強く持っています。

これは一例ですが、本社の屋上にソーラーパネルを設置して、ハウス栽培の暖房機を再生可能エネルギーで賄えないか検討しようとしています。
近年の不安定な気候でバラ栽培が難しくなっており、燃料代の高騰もあって今冬はバラを休ませていますが、やってみようかと。
非効率だったり余計に手間がかかったりとリスクもありますが、成功しても失敗しても、他の農家の方へ情報発信をしていきたいです。自分の発信するものが、誰かのヒントになればうれしいです。

――地域だけでなく全国の方にも役立ちそうですね。
そうして持続可能な農業、「自分の子供に継がせたい」と思えるような形を、しっかりと私たちの代で築いていきたい。そうすることで、農業の高齢化や新規就農者の減少といった課題にも貢献できていくのかなと今は考えています。

⑤

<取材協力>
ROSE LABO株式会社
レトロワグラース

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