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新型コロナで外国人材の受け入れが激減。窮地のブランド産地を救う労働力確保の一手とは

新型コロナで外国人材の受け入れが激減。窮地のブランド産地を救う労働力確保の一手とは

ミニトマトの一大生産地である北海道仁木町。販路を全国展開するブランド産地として、外国人労働力の確保も積極的に推進してきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による入国制限の影響で、生産現場では大きな影響を受けています。労働力不足解消に向け、JA新おたるで新たに始めたのが他業種や他地域との連携による労働力確保です。

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今や外国人労働者が欠かせない生産現場

JA新おたる営農課の島さん

札幌駅から車で約1時間、余市郡仁木町に本所を置くJA新おたるは、仁木町のほか小樽市・積丹町・赤井川村の4市町村で構成されています。

仁木町では、約500戸弱の組合員のうち125戸がミニトマトの生産者です。令和3年のミニトマト生産量は3,039トン。生産額は24億5千万円に達し、北海道の中でもトップの生産量を誇ります。仁木町のミニトマトはほとんど道内に出回らず、関東や関西などへ出荷されます。

「この地域は、元々果樹の産地でした。リンゴやサクランボ、ブドウの栽培が盛んでしたが、50年ほど前から天候に左右されにくい施設栽培を目指す取り組みが始まり、次第にトマトやミニトマトを生産する農家が増えていったのです」と、JA新おたるの島さんは産地の歴史を振り返ります。

ハウスでのミニトマト栽培が広がるにつれて、収穫作業に従事する人手の確保が重要な課題となったそうです。

「平成16年に外国人研修生として中国から10名ほど迎え入れたのが、外国人材活用の始まりでした。そこから少しずつ拡大して、平成28年には中国やベトナムなどから133名が仁木町の農家で働きました」

受け入れの当初は、言葉の問題など苦労したことが多かったそうです。しかし、次第に外国人労働力に頼らなければ農業を続けることや面積を拡大することが難しいというほど、地域に外国人材が定着していきました。

「そのような状況の中で、新型コロナウイルス感染拡大の影響により外国人の受け入れが困難になってしまいました。中には、人手をどうしても確保できず栽培面積を泣く泣く減らした農家さんもいらっしゃいました」

窮地に立たされた仁木町のミニトマト栽培。そこでJA新おたるでは、問題解決のため新たな取り組みを始めたのです。

他業種や他地域の人材を仁木町へ派遣

収穫作業の様子

JA新おたるでは、令和3年から株式会社JTB、ホクレン農業協同組合連合会と連携した農作業支援プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトでは、同じくコロナの影響により観光客が減少している小樽や札幌などのホテル従業員が副業として農作業に従事したのです。

「先に同様の事業を始めていた山形県の事例も参考にしました。試験的な運用でしたが、2戸の農家の下で延べ68名のホテル従業員が農作業に従事し、一定の成果に繋がったと思います」

基本的なスキームとしては、農家から要請を受けたJAがJTBと連携し、JTBが取引先企業やパートナー企業などのつながりから労働力を確保して雇用契約を結びます。これにより、農業現場において外国人に代わる働き手の確保が実現しました。

「取り組みを進める中で、農家さんからは『長期的に働く人材ではなく農繁期だけのスポット的な雇用をしたい』という声が多く寄せられました。需要にマッチする人材を確保するために、さらに地域を越えた連携への取り組みを始めました」

農林水産省の農業労働力産地間連携等推進事業を活用して、新たに福岡県のJA全農ふくれんや大分県の株式会社菜果野アグリと連携。九州地方から働き手を迎えることができました。

「令和4年は、九州から45名が仁木町に来てくれました。農繁期は8月〜9月なので、8割以上は夏休みの大学生です。他には、観光関係の企業が社員研修の一環として協力してくださったり、全国を農繁期にあわせて渡り歩いているという方にもお越しいただいたりと、さまざまな方が農作業に従事しました」

この取り組みに関わった11軒の農家にアンケートを実施したところ、「スポット的な雇用が叶って良かった」「今後も継続してほしい」といった好意的な意見が集まったそうです。

また、JTBが働き手の方へ行ったアンケートでは、初めての農業体験に刺激を受け、農業の労働力不足に関する課題を卒業論文のテーマにしたという大学生もいたそうです。「大学生の方にとっても良い効果があったようで良かった」と、島さんは話します。

今後は自走できる仕組みづくりを

九州から仁木町へ来て農作業に従事

JA新おたるでは、今後のさらなる展開として「援農ツアー」を計画しているそうです。

「今回の事業を通じて、JAとしても農家さんのニーズに応えられるという実感を得ました。今後は自分たちだけで事業を続けるためにも、参加者から費用を徴収する形で援農ツアーを実施したいと考えています。道外では既に実現している地域もあるので、できることは色々とやっていこうという思いです」

また、産地間の連携においては、人材を効率よくシェアするために全国的な連絡協議会組織の立ち上げを将来的な目標に掲げています。

「大分や福岡と連携する中で、九州では1月頃からあまおうの収穫期を迎え、労働力が不足するということがわかりました。同じ時期、仁木町では農閑期に当たるので町内で農作業に従事していた方が九州に赴き、農繁期になったら戻ってきて働くという仕組みを作りたく、今年から本格的に取り組む予定です。今までは労働者を派遣してもらうだけだったので、今後は相手にお返しする形で貢献したいと思います」

産地間での連携をきっかけとして農繁期、農閑期のずれに着目し、新たな手法で労働力の確保を進めるJA新おたる。農業従事者の高齢化、離農が進む中で、今後もさらなる労働力不足が続くことが予想されます。地域の農業を維持し続けるためにも、このような労働力確保の取り組みはより重要になっていくことでしょう。

お問い合わせ

新おたる農業協同組合
〒048-2493 北海道余市郡仁木町北町3-4
TEL:0135-32-2525
FAX:0135-32-3333

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