家族経営で大規模化、田植え期の重労働が課題
千葉県・外房の九十九里浜の南端に位置し、サーフィンの名所として知られる一宮町(いちのみやまち)。この地で水稲を生産するキクチファームの菊地大輔さん(41)は、農家の3代目となる娘婿。一宮から始発・終電で通勤する会社員生活から転身し、家業に入って今年で就農10年目です。義父の代に園芸作物から水稲に切り替え、自前で農業機械の整備ができる強みを生かし、この10年で経営面積を10haから30haに広げています。
水稲生産は主に義父母、妻、菊地さんの家族経営。農繁期の田植えには、親戚や妻の姉妹が手伝いに駆けつけますが、平日の人手はどうしてもリタイア世代や女性に限られます。
「男性が田植え機を運転するので、苗箱を軽トラックに積むのは女性の仕事になることが多く、その上げ下ろしや運搬、田植え機にセットするのも重労働で相当な負担がかかっていました。腰は痛くなるし、暑い中での作業なので気持ちも滅入ってしまいますよね」と、菊地さんは以前抱いていた課題を振り返ります。
当時の経営面積は10ha強で、作る苗箱は約2000枚。重労働にたまりかねた義父が、「苗箱を軽量化するのに何かいい方法はないか」とJAに相談して紹介を受けたのが、水稲育苗用ロックウールマット『こめパワーマット』でした。
苗箱の運搬がスムーズにできる境目の5kgをクリア
それまで育苗では、床土として肥料入りの培土を購入して土苗を作っていました。土入れから播種まで機械で自動化していますが、土の入った苗箱を腰をかがめてハウスに並べるところから身体への負担の連続です。
潅水して水を含んだ苗箱は重さ6kgほどにもなります。田植え時には軽トラックのラック上段まで土苗を積み上げ、畦畔へ運んでは下ろし、田植え機にセットすること延べ2000枚分。何度も上げ下げを繰り返すのは本当に重労働でした。
まずは試しに200枚の『こめパワーマット』を導入。乾燥時のマット1枚の重さは僅か140gと軽く、マット苗は潅水しても重量約4kgで土苗と比べると約2kgも軽量化することができました。
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人がスムーズに荷物を持てる重さの境目は5kgだと言われています。
一般社団法人人間生活工学研究センターが20代から80代の男女214名を対象に行った調査によると、4kgは男女ともに「楽に持てる重さ」という調査結果もあり、約6kgの土苗に比べ、約4kgのマット苗は軽く、人に優しいということになります。
【出典】般社団法人人間生活工学研究センターホームページより(https://onl.sc/bNPkYYJ)
苗箱の軽量化に抜群の効果、保水性や洗浄フリーも魅力
「使ってみるとやっぱり軽い!」と菊地さん。試用の翌年は様子見で苗箱の半分を『こめパワーマット』に切り替える話もありましたが、何よりも軽さにメリットを感じた義父が全面導入を決断。以来使い続けて5年、「以前の土苗の重さはもう忘れた」という菊地さんですが、たまに苗が足りなくなって土苗を分けてもらうと「重いっ」と実感するそうです。
「マットに保水力があることも助かっています」と、第2の効果を挙げてくれた菊地さん。毎朝6時から7時までに苗に潅水をしますが、気温が上がりハウスを全開にして通風すると、以前は昼頃に乾いてしまい2度目の水やりをしなければなりませんでした。「マット苗に変えてからは、午後2時から4時頃まで水が保てるので、昼にハウスを見に行かなくてよくなりました」と、見回りの省力化にもつながったようです。『こめパワーマット』は1枚あたり2リットルの水が入るため、忙しくてハウスを見に行けないときも安心です。
第3の効果もあります。「田植え後に苗箱に付着した土の洗浄がいらなくなりました。消毒のみで済むため、その労力も軽減されています」と菊地さん。
育苗ハウス面積の都合でこれまで3回に分けて6000枚を育苗していましたが、2023年度は3棟から5棟に増やし、前半に早生品種を中心に4000枚、後半に飼料米用など2000枚の苗を作りました。
「稲作は『苗半作』と言いますが、仲間はみんな「苗作りが7割」だと。私もそう実感しています」と、菊地さんは育苗の難しさを語ります。仲間と資材や水稲品種の情報を交換しながら、良い苗を作るために試行錯誤して、失敗からも学び、この数年で軌道に乗ってきたそうです。
ケイカル資材としても有用、水稲栽培の持続性に心強い味方
水稲育苗用ロックウールマット『こめパワーマット』の成分は、ケイ酸4割、カルシウム3割。マット表面には肥料成分が塗布されているので、使い続けることで稲のケイ酸吸収量が多くなります。根張りがよくなり、倒伏しにくくなるなどの報告もあり、品質・収量向上にも効果が期待されています。また、土苗と比べて田植え機の爪の摩耗を軽減できたという声もあがっています。
菊地さんは、「まだケイカルの効果を実感できるまで至っていませんが、育苗資材として安心して使えるのは確かです。うちの田植え機は8条植えなので交換の頻度を減らせるのは経済的ですね。一番の課題だった苗箱積み下ろしの重労働を軽減できたことと合わせてトータル的に費用対効果は大満足です。もう土苗には戻れません」と話してくれました。
水稲の若手生産者として、農地集約・集積化、米の消費拡大など、過渡期を生きる菊地さん。「仲間と情報交換しながらできるのが楽しいし、楽しそうにやっていれば、子どもたちも農業をやってくれるんじゃないかな」と、やや控えめに抱負を語ります。
重労働だった苗箱の運搬作業を軽く、身体への負担を楽にしてくれる『こめパワーマット』が、その一助になってくれることでしょう。
【お問い合わせ】
日本ロックウール株式会社
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