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セカンドキャリアに農業を選んだアスリート、新たな挑戦への悩みと決断

セカンドキャリアに農業を選んだアスリート、新たな挑戦への悩みと決断

新たなフィールドとして農業を選択した元アスリート。その決断に至るまでに、どんなことに悩み、どのように農業に飛び込むことを決断したのでしょうか。スポーツで培ったことをセカンドキャリアで生かす方法、農業への新たなチャレンジをしたからこそ見えてきたものなどについて、2人の元アスリートが今後のキャリアに悩むアスリートたちに向けて語りました。

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引退後の仕事の選択肢は。アスリートたちの悩み

多くのアスリートは若くしてその選手生命を終えます。その後のキャリアとして選択できるのは、必ずしもスポーツスキルを生かせるものとは限りません。また、スポーツ以外のやりたいことをどのように見つければよいのか、悩む人は多いでしょう。

そんなアスリートたちのキャリア支援を行う株式会社マイナビのサービス「マイナビアスリートキャリア」が企画したのが、「Kurasu(クラス)~アスリートにとってのウェルビーイングな教室~」。Kurasuは「暮らす」と「class」を掛け合わせた言葉です。元アスリートの現在の暮らしからキャリアのエッセンスを得るためのコンテンツを配信していきます。

第1回のWebセミナーのゲストは、元プロサッカー選手の西澤代志也(にしざわ・よしや)さんと、元ラクロス学生日本代表の瓜哲史(うり・さとし)さん。新しいキャリアとして農業を選択した二人に、その選択に至るまでの道のりについて、マイナビアスリートキャリアの鍵圭亮(かぎ・けいすけ)が聞きました。

【ゲスト】
■西澤代志也さん プロフィール

1987年埼玉県生まれ。元プロサッカー選手。浦和レッズでプロのキャリアをスタートさせ、ザスパ草津(現・ザスパクサツ群馬)、栃木SC、沖縄SVの4チームで計16年間プレー。2021年シーズンをもって現役を引退。その後、仲間とともに栃木県宇都宮市で「UTSUNOMIYA BASE(宇都宮ベース)」を立ち上げ、農業に従事することに。地球、環境、そしてヒトに優しい野菜やお米を作り、日本中に発信している。

■瓜哲史さん プロフィール

1987年生まれ。高校時代はバスケットボール、大学時代はラクロスに打ち込む。大学3年次にアメリカへラクロス留学し、帰国後にU22日本代表に選出。大学卒業後は総合商社に入社。東南アジアを中心にヘルスケア関連事業の立ち上げ等に従事。2022年に退職後は、農業関連事業の立ち上げに挑戦している。

【ファシリテーター】
■鍵圭亮 プロフィール

大学で交通経済学を学んだ後、NTT東日本を経て、2017年株式会社マイナビ入社。現在はアスリートや体育会学生の就労支援と人材育成に従事。サッカー歴20年。

農業を選んだわけ

鍵:西澤さんと瓜さんの共通点は「農業」ですね。なぜ農業に携わるようになったんですか?

瓜:兄が大分で自給自足の生活をもう7~8年やっているんです。2021年に初めて行ってみたら、金はないけどすごく美しい暮らしをしていて、それを見た時に「こういう暮らしってすごくいいな」と思ったんです。その後、海外勤務から日本に帰ってきて国内の生産者の方々を回らせてもらったんですが、めちゃめちゃかっこいいなと。それに、農業って単純に野菜を作るだけの仕事じゃない、地球環境を良くする可能性のある産業だと思って。ただ、みんなその価値に気づいてないので、それに気づいてもらうための仕組みを作りたいなと、今はガッツリ農業に携わっております!

鍵:なるほど。具体的に、農業をやっている人のどういうところがかっこいいんですか?

瓜:自分の哲学というか軸を持っているところですね。それが自然と向き合う上で大事なことで。その農家さんの持っている軸を社会につなぐことで、日本がもっとウェルビーイングなほうに行くんじゃないかなというのが、自分の仮説です。

鍵:素敵ですね。確かに私も自分の軸を持っている方と接する時って、その人がすごく魅力的に映ったりします。農業だとそれがより色濃く出てるんですね。
西澤さんはどういうきっかけで農業にチャレンジしようと思ったんですか?

西澤:僕は16年間サッカーだけをやる生活をしていて、引退した後のことなんてのは、本当に一切考えていなかったんですね。でも、ある日をきっかけに引退しようと決意して徐々に考えるようになったんですが、正直、やりたいことがなくて何を探しても興味がわきませんでした。
僕は栃木SCというチームで8年間プレーしてたんですけど、当時、現役のバスケ選手と代々農家の長男と、よく3人で遊んでたんです。それでその2人に「俺、引退するわ」と伝えた時に、「じゃあ何か一緒にやろう」という話になって。だから、農業をやりたいというより、その2人と一緒に何かをやりたいという感じでした。最初から野菜を作るとか、地球や環境にやさしい何かを作ろうとかではなく、だんだんそっちに志向していったというか。でもその2人とだったら農業以外でも楽しめるんじゃないかと思います。

鍵:誰とやるかが西澤さんにとって大事だったんですね。

スポーツで学んだことが生きた場面

3ショット

鍵:瓜さんは大学時代はラクロスをしていて、そのあと総合商社に就職されました。仕事をするうえでスポーツの経験が生きたなと感じることはありましたか?

瓜:二つあります。一つは、チームで何かすること。僕はずっとサッカー、バスケ、ラクロスといったチームスポーツばっかりやってたんで、チーム内の役割分担とか気配りとかコミュニケーションはすごく得意だなと思います。
もう一つは考えること。大学のラクロスチームでは、コーチがいなかったんですよ。だから基本的にどんな練習をするかとか、どんなふうに試合を組み立てるのかとか、自分たちで考える。そういう癖がついているので、何か起こった時に考える力があるんじゃないかなと個人的に思います。

鍵:西澤さんは農業をしていて、サッカーの経験が生きたことはあるんですか?

西澤:まず、専門的なことでいうと、何一つないです。夏場に体力があるとか、何か重たいものを持つ力とか、そういうのは役に立ちましたけど。
僕は農業を始めて1年半ぐらいなんですけど、サッカーは5歳から始めて29年間ずっとサッカー漬けだったんです。29年間ずっと同じことをやれるって大したもんだなと自分でも思ってます。一つのことを極めていくっていうとかっこいいけど、でもやり続けるってそれだけですごいことだなと気づいて。
あと、収穫とかの時の集中力もすごいと思うんですよ。新しいことを知りたいなと思って勉強し始めたりとか、一つのことに入り込んだら止まらない。そういう集中力は、スポーツをやっている人は備わっているんじゃないかな。

鍵:めっちゃいい話ですね。でも西澤さんにとって農業はそれほど興味のあるものじゃなかったと思うんですが。そんな中でも続けていくと面白くなっていくものなんですか?

西澤:正直言って、まだ面白さを感じる余裕はないんですけど、なんか楽しいですよ。知らないことを知るっていう楽しさもあるし。それに、イベントとかマルシェの出店とかやるんですけど、そういう場に来てくれるお客さんとのコミュニケーションとかも楽しい。もちろん、農業には100%で取り組むんですけど、やっぱりお客さんと会う機会がないと、なんか物足りないな、と。

新しいことにチャレンジするからこそ見えてきたもの

鍵:お二人の話を聞いていて、新しいことにチャレンジしたからこそ見えてきたものがあるんじゃないかなと感じました。

西澤:僕の経験から言うと、農業という分野に飛び込んでから、いろんなものの見え方が変わりました。前だったら普通にペットボトルの飲み物を買っていたんですが、農業を始めて環境に関する知識が増えて、人生で初めて水筒やエコバッグを持つようになったりとか。
それから、今日は宇都宮はすごい土砂降りだったんですけど、自分の畑だけじゃなくて他の農家さんの畑も大丈夫かなと思ったり。道に花が咲いていたら、昔は何も思わなかったのに、今はきれいだなと思っちゃうぐらい、人が変わっちゃったんですよね。
現役時代はサポーターの方とは一線引いていて、自分の性格も人見知りなので一切コミュニケーションをとらなかったんですけど、農業でイベントをやるにつれて社交的になったりとか。そういった意味で人間的にちょっと大人になったのかなと実感しています。昔のサポーターの方にも、よく笑うようになったねって言われます。

鍵:瓜さんもいろんなチャレンジをしていて、ものの見え方が変わってきましたか?

瓜:そうですね。僕にとっては東南アジアの現地の方と触れ合う機会があったことがすごく大きくて。日本では比較とか競争とかいろいろありますけど、彼らってそれより一日一日や家族を大切にしたりすることが当たり前。それは農業も近いところがあって、当たり前のことを当たり前に感じられるようになるのはいいことだなと思います。

悩みにぶつかった時は

鍵:参加者からの質問です。「次の仕事を農業に決める時どういう人に相談しましたか?」という質問なんですが。

西澤:僕は誰にも相談してないです。誰かのせいにしたくなかったんで、とりあえずいろんなことを遮断して、いろいろ考えて答えを出した感じです。だから、失敗しても自分の責任ですし、納得できるかなという感じです。

鍵:それはよくわかります。自分で決めないと気が済まないというか、誰かのせいにしちゃいそうなんですよね。
ちなみに、「西澤さんは引退する時に農業以外の選択肢はなかったんですか?」という質問も来ています。

西澤:周りが選択肢を与えてくれた感じですね。サッカーで評価されたというよりも、自分の人間性とか性格とかを全部分かったうえで声をかけてくれました。でも、僕の場合、死ぬまでサッカーを超えるやりたいものって出てこないんですよ。なので、さっき言ったように「誰とやりたいか」を考えた時に、スパンと答えが決まったというだけのことです。

鍵:では最後に、今人生に悩んでいたり新しいことにチャレンジしたいと思っていたりする人に、人生を幸せに生きるためのアドバイスなどをお願いします。

瓜:一つ言えるのは、楽しいという感情は大事だということ。頭で考えるのも大事なんですけど、それ以上に動物的に選択することで、結果的に面白いものが生まれるんじゃないかなと思ってます。

西澤:僕は悩むことはとても大事だと思っています。でももう決断して行動し始めているのに、これでいいのかなと悩む時間は無駄なので、たくさん悩んで、決断した後は前だけ向いて突っ走ったほうが、僕はいいと思います。

鍵:今回、僕自身もいろんなヒントをもらえました。西澤さん、瓜さん、ありがとうございました。

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