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シェアリングエコノミーとは? 農業における具体例付きで分かりやすく解説

シェアリングエコノミーとは? 農業における具体例付きで分かりやすく解説

所有する資源や資産を他者と共有して利用する「シェアリングエコノミー」が話題です。農業においても個人の資産やスキルをシェアすることで、貸主・借主ともに効率の良い経営につながる場合があります。この記事では、農業におけるシェアリングエコノミーの種類や事例、メリットやデメリットなどを分かりやすく解説します。

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シェアリングエコノミーとは

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シェアリングエコノミーとは、個人がもつモノや場所、スキルや人材などを他者へ貸し出し、共有(=シェア)して利用する仕組みのことです。CtoC(個人対個人)での取引が基本で、共有経済とも呼ばれます。シリコンバレーから始まったと言われるシェアリングエコノミーは、日本でも急速に普及してきています。企業が消費者に直接モノや場所を販売したり貸したりする従来のレンタルサービスとは異なり、企業が関わる場合は個人間の貸し出しを「仲介」する立場になります。

シェアリングエコノミーが注目される背景

家車人

社会の変化により、シェアリングエコノミーが注目されるようになってきました。
2015年の「国連持続可能な開発サミット」において採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が定める「持続可能な開発目標(=SDGs)」が知られるにつれ、環境への負荷を減らし資源を大切にしようとする意識が芽生えてきました。

また、あらゆるモノを所有することへの考え方が変化してきたことも背景のひとつです。モノより心の豊かさを重視する時代になり、何もかも自分で持つ必要はないと考える人が若い世代を中心に増えてきました。

IT技術の進化により、個人がスマートフォンなどを利用して気軽に情報を発信したり、面識のない人とやり取りしたりできるようになったことも、シェアリングエコノミーの普及に一役買っています。

シェアリングエコノミーの市場規模と今後

シェアリングエコノミーは成長を続けており、2022年度の市場規模は前年度⽐8.1%増の2兆6158円に達しました。今後もさらなる発展が見込まれます。現状のペースで成長した場合、2032年度は8兆5770万円と市場規模になると予想されており、これはドラッグストアと同程度の規模になります。

さらに、新型コロナウイルスによる不安や認知度が低いなどの課題が解決された場合、2032年度には15兆1165円まで成長するという試算もあります。

シェアリングエコノミーのメリット

提供者 ・眠っていた資産を有効活用できる
・初期費用がかからない
利用者 ・所有の必要性が減る
・モノやサービスを低価格で利用できる

提供者はすでに持っているものや遊休資産を活用することで、収入が得られます。利用者はそれらを自ら所有することなく使うことができるので、高額なものでも低価格で利用できます。また、広い保管場所やメンテナンス作業も不要で利用できるメリットもあります。モノやサービスをシェアすることで無駄をなくし、省資源になるため環境への負荷も少なくなくなると言えるでしょう。

シェアリングエコノミーのデメリット

提供者 ・不特定多数とやり取りする必要がある
・物損や盗難発生時の責任の所在があいまい
利用者 ・モノやサービスのクオリティは提供者によって異なる
・他人とモノやサービスを共有することになる

提供者は自身の持っているものやサービスを不特定多数の人に貸すことになります。仲介業者やプラットフォームを介していても、何らかのトラブルが起きることがあります。比較的新しいサービスのため法整備が進んでいない部分もあり、物損や盗難等のトラブルが発生した場合の責任の所在があいまいになる可能性は念頭に入れておく必要があります。

利用者側は、モノやサービスの質が提供者によってまちまちになること、複数人でするため自分が利用したい時に使えない場合があることを理解しておく必要があるでしょう。

シェアリングエコノミーのサービス例

シェアサイクル
実際に広く利用されている代表的なシェアリングエコノミーの種類を紹介します。

・スキルのシェア
・空間のシェア
・モノのシェア
・移動のシェア
・お金のシェア

スキルのシェア

例:家事代行、子育てシェア、クラウドソーシング

家事代行の仲介サービスを利用して、個人間で契約する仕組みです。家事や育児が得意で空き時間を有効活用したい人と、家事や育児の時間が取れない人をマッチングします。家事代行業者からスタッフを派遣してもらうのに比べ、安価にサービスを利用できるケースが多くなります。

空間のシェア

例:民泊、ホームシェアリング、駐車場シェアリング、レンタルオフィス、コワーキングスペース

空き家や空き部屋を有効に使いたい人と、宿泊費や家賃を安く抑えたい人、地域の古民家で過ごしてみたい人がマッチングします。2017年6月に成立した住宅宿泊事業法(民泊新法)により民泊を営む要件が緩和され、旅館業法に基づく営業許可を持たない個人でも参入しやすくなりました。

モノのシェア

例:レンタルサービス

企業が提供するプラットフォームの中で、個人間で物の貸し借りを行います。アウトドア用品や冠婚葬祭にまつわるものなど、使うタイミングが限られているもの、買うと高額になるものが特にニーズがあります。

移動のシェア

カーシェアリング、シェアリングサイクル

1台の車(二輪車や自転車を含む)を複数人で利用します。企業がサービスを提供している場合と、個人間でカーシェアを行う場合があります。個人間カーシェアの場合は、オーナーが車を使わない時間にユーザーに貸し出します。車を有効活用したい貸し手と初期費用や維持費をかけずに車を利用したい借り手がマッチングすることで、互いにメリットがあります。

お金のシェア

クラウドファンディング

群衆(crowd)と資金調達(funding)を合わせた造語の「クラウドファンディング」や「ソーシャルファンディング」と呼ばれます。

個人がやりたいことを広く発信し、コンセプトや商品に共感、賛同する人たちから出資を得て資金を集めます。金融機関からの融資を得られない場合の資金調達に有効な手法です。

農業に生かせるシェアリングエコノミー

トラクター
農業の分野においても、さまざまなシェアリングエコノミーのサービスが生まれてきています。

農業は繁忙期と閑散期の差が大きいため、人的リソースに偏りが生じてしまいがちです。繁忙期の人材不足に悩む農家は多く、働きたい人と農家をつなぐ人材のシェアサービスが注目され始めました。また、使う期間が限られている作業用の機器や大型の農機具についても、シェアサービスの利用という選択肢が出てきています。

・人材のシェア
・農地のシェア
・農業機械のシェア
・ソーラー電力のシェア

人材のシェア

繁忙期の人手不足に悩む農家は多いでしょう。一方で、専門的な知識やスキルはなくても農業や里山暮らしを経験してみたいという人がいます。両者をマッチングさせることで、
農家は繁忙期に臨時スタッフを確保でき、働く側は農業体験をしながら給与を得られます。繁忙期の手伝いの経験が本格的に就農するきっかけになる等、農業界を活性化する効果も期待されています。

農地のシェア

ミニトマト

担い手不足により農地や遊休地を持て余している農家が、農業に興味のある人へ土地を貸し出すサービスです。農業を始めてみたい人、都会に住んだり別の仕事をしたりしながら農業をやってみたい人に農地を提供します。借りる人は農地を所有せずに農業を始めることができます。

編集部おススメのシェアリングサービス

・サポート付き貸し農園「シェア畑」
畑を借りて野菜作りができるサービス。1区画6~13㎡程度から利用でき、菜園アドバイザーのサポートや指導を受けられるので作業は週に一度程度でもOK。農家は農地・遊休地を貸し出して収入を得られる。

農業機械のシェア

効率化のために農機を導入したいものの初期費用が高く負担が大きい、使う期間が限られている、といった場合に一時的に農機を借りて利用できるサービスです。
農業初心者に向けてのレンタルだけでなく、気候が異なる別の地域の農家間など、使わないタイミングで貸し借りすることで営農コストを抑えられます。

編集部おススメのシェアリングサービス

・kubota「農機シェアリングサービス」
農業機械メーカーkubotaが提供するシェアリングサービス。会員登録したユーザーは1時間単位で24時間いつでも利用できる。

農地を生かせるシェアリングエコノミー

ソーラーパネル

農地を生かせるシェアリングエコノミーの仕組みとして、所有する農地で農業を継続しながら太陽光発電を行う「ソーラーシェアリング」があります。「営農型太陽光発電システム」とも呼ばれます。

農地の上にソーラーパネルを設置し、作物の生育に必要な日照や農作業に必要なスペースを確保しながら発電を行います。自家発電による電気代の削減効果があり、電気代の高騰が続く中、注目されている仕組みです。

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農業でもシェアリングエコノミーを活用しよう

さまざまな分野で普及してきている「シェアリングエコノミー」の仕組み。すでに持っている資産や資源を貸し出し、持っていないものは借りて利用することで無駄なコストや手間を減らし、農業経営の効率化につながります。意外な資産・資源を活用できる可能性もあるので、農機等の棚卸しをしてみるのもいいかもしれません。シェアリングエコノミーの活用は、低コストで効率の良い農業経営の手段のひとつになりそうです。

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