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桃畑でフォトウエディングの撮影!?  異業種の目線も取り入れた“農園の価値”生むアイデア

桃畑でフォトウエディングの撮影!?  異業種の目線も取り入れた“農園の価値”生むアイデア

熊本県で桃やメロン、ブドウを生産する西川農園。4代目夫妻が試みる観光農園では、九州では珍しい桃狩りが体験できるうえに、桃畑を開放した写真の撮影会や人気アーティストを呼んでのライブドローイングなど、目から鱗(うろこ)のアイディアで人気を集めている。

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畑そのものの価値を見いだす

熊本市北区貢町。果樹栽培に適した土地とされ、スイカやメロンなどが盛んに栽培されている。

今回訪れた西川農園では、メロンやブドウ、小ネギ、そして6品種の桃を生産している。
桃畑の面積は30アール、約55本の桃の木があり一本の木には約1500個の果実が実る。

西川農園では、毎年6月上旬~8月上旬頃まで土日祝日限定で“桃狩り体験”を行っている。
桃の収穫期間は1週間から10日間ほどとなっているが、6品種が順番に収穫時期を迎えることで“桃狩り体験”を長期間にわたって提供することができるそうだ。

九州内で桃狩り体験ができる農園は少なく、熊本県内を中心に福岡などからも来訪者がいるという。更に最近では香港からの観光客がツアーで訪れることも増えているそうだ。

西川農園は現在、家族のみで農園を運営している。
桃畑を管理するのは4代目の西川徹(にしかわ・とおる)さん。農業大学卒業後に就農し、現在で19年目だ。
西川農園では元々メロンを栽培しており、先に就農をしていた兄がブドウを始めたため、徹さんは桃を始めてみることにしたのだという。

筆者:なぜ桃を選んだのですか?

徹さん:農業大学時代に恩師に、なんかいい作物ないっすかね? って聞いたら「桃がいいよ!」って言われたのがきっかけかなぁ。
あと、桃は可愛いし女の子にモテそう! って思ったから(笑)。

筆者:まさかの不純な動機!?

徹さん:実際、合コンとかでウケは良かったですよ〜(笑)。
「小ネギ作ってます」って言ったら「ふーん」という反応だけど「桃作ってます」って言ったら「えー! 遊びに行きたい!」って盛り上がったりして。

でも、実際育ててみると桃畑って美しいなぁって思うんですよね。
緑の中にピンク色があって、桃の香りがして、この空間自体にも価値があるんじゃないかなって思っています。

元々は知り合いだけを呼んで行っていた桃狩りだったが、好評ゆえに知り合いが知り合いを呼び、「やりたい」「行きたい」という声が大きくなっていったことが観光農園として開放したきっかけだったそうだ。

喜んでくれる人々や子供たちの様子を見ていて、自分たちにとっては当たり前の風景が、普段畑と縁のない人にとってはとても価値があるものだと気付いたのだという。

生い茂る葉っぱの間から差し込む光や、実る桃の鮮やかなピンク色はどこか童話の世界のようで、魅力がある。
西川農園ではこの美しい風景を生かした数々のイベントや体験活動を発信している。

その一つが、桃畑での撮影会だ。
桃狩りをしている様子や、桃畑を背景にした写真をプロのカメラマンが撮影してくれるというもので、親子連れを中心に人気を集めている。

西川さんは、ウェディングの前撮りを桃畑で行った様子や家族写真などをInstagramで発信しており、
「こんな素敵な写真が撮れるなら、自分たちも撮りたい!」という反応につながっている。

普段はあまりなじみのない場所だが、緑や果実に囲まれた空間は自然と笑顔になる。加工をしなくても、余計なものが映らない幻想的な背景もまた魅力の一つなのだろう。

桃畑で桃畑を描く

また、アーティストを呼んでライブドローイングをしたりと、ただ桃を栽培している場所としてではなく、人々が集まる空間としての活用法は、今までにない斬新なアイディアだと感じた。

五感で楽しむ農園

西川農園が提案しているのは“五感で楽しむ農園”。
美しい桃畑を目で楽しみ、ハウスの中にあふれる桃の香りを感じ、実際に収穫して触れ合い、口に運ぶ。

西川さんにとって、農業は食べるための手段でもあるが、農業の楽しさや喜びを発信していきたいという思いがあるのだそうだ。

農園のSNSでは桃畑での活動のほかにも、桃を使ったレシピなども紹介している。

日々桃を収穫していく中で、食べる分には問題がないが商品としては出すことはできない傷やイタミのあるものがどうしても出てくる。

桃は繊細な果物で、そうした規格外品の数は決して少なくはない。そこで、元パティシエという経歴を持つ妻・真代(まさよ)さんが発信し始めたのは、廃棄予定の桃を使ったレシピの紹介だった。

真代さん考案の桃を使ったスイーツやコンポートなどのレシピとともに、「訳アリの桃を本日○○個販売しています」という情報をInstagramで紹介。
それを見たフォロワーが、実際に購入しに訪れ、その日のうちに桃を販売できるという流れだ。

顧客にとっては安くおいしい桃を購入することができる。また、真代さん本人から直接レシピを聞けるというのも魅力の一つのようだ。
農園は廃棄する予定のものを販売につなげられる。実際にほとんどロス無く運営できるようになったという。

現在収穫時期の桃「嶺鳳」

「妻は本当に、戦略的結婚? っていうくらいありがたい存在ですね(笑)。自分はSNS関連はさっぱりなのですが、妻は発信することが元々好きだったみたいだしセンスもあって、桃や農園をとても魅力的に紹介してくれるんです。自分にはない目線で見てくれるから、助かってます」(徹さん)

SNSでの発信は真代さんが担っており、SNS活用のセミナーや勉強会にも積極的に参加しているそうだ。

味や視覚などさまざまな方面からアプローチをかけていく西川農園のInstagramはフォロワー数3000人を超えており、こちらも人気コンテンツの一つとなっている。

農業の楽しさを伝えていきたい

桃畑の活用法やSNS投稿など、目から鱗の視点で運営している西川農園だが、その発想力の源について尋ねてみた。

「僕自身いろんなことに興味があって、異業種との交流も積極的に行っているんですよ。いろんなところに顔を出したり、面白そうって思ったらやってみたり。そこで農家とのギャップを感じたんですよ。生まれてからずっと農家の自分には当たり前のことも、他の業種の人たちは、『すごい!』って言ってくれたりして。自分が持っている価値を何十倍にもして見てくれるなって」(徹さん)

異業種からの目線を入れることによって、自分たちが当たり前と思っていることが実は当たり前ではないことに気付かされ、そこに自分が想像している以上の価値を見いだしてもらえたという。

「僕の得意なことって、人を楽しませることだったり、人と仲良くなることなんですよ。だからそれをやっていたら、結果的にいろいろ生まれた感じですね。妻は妻でSNSやスイーツを作ったりが得意だからそれをやっている感じだし、それぞれ得意なことをやればいいんじゃないかな。自分が得意なことは何かを見つけたもん勝ちですよ!」

西川夫妻は、今後どのようなことをすれば盛り上がるか、改まった会議などはせず日常会話や日々の生活の中で自然と情報を共有する程度だという。何よりもいろいろなところで得たつながりから発展させ、新たな試みや発想が生まれ、それをただ楽しんで取り組んでいるのだそうだ。

そんな徹さんに今後の展望を尋ねてみた。

「やっぱり一番は、農業の楽しさを発信し続けたいなと思っています。農業は本当に楽しい! キツイところとか厳しい時ももちろんあるけれど、こんなに楽しく仕事ができて、自分はとても恵まれているなぁって感じますよ。最高の仕事だと思っています。自分が生き生きしてるのを見せるのも農業の魅力発信の一つかなって思います!」

西川農園
Instagram @nishikawa.noen

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