レタス生産の動向
レタスの栽培は天候の影響を受けやすい作物です。暖地の厳寒期どりトンネル栽培においては、暖冬年には生育の前進や形状の乱れが問題となり、一方で厳冬年には肥大不足や生育遅延が発生します。各年の不安定な作柄は、供給量や青果価格を大きく変動させます。
また、一部の産地で発生しているレタスビッグベイン病は土壌伝染性の病害で、低温条件で発生が助長され、収量の低下や生育遅延が慢性的な問題となっています。レタスべと病は、トンネル栽培など湿度が高い環境で発生しやすい病害で、毎年のように各地で発生が見られ、生産者を悩ませています。
この状況にタキイでは、厳寒期どりトンネル栽培での玉肥大と、在圃性に優れ形状が安定している品種、さらにはビッグベイン病とべと病に強い品種の育成を進め、「Fブロウ」として発表しました。
品種特性
玉肥大が安定し、在圃性に優れる
厳寒期どりのトンネル栽培で草勢が安定し、ボリューム感のある大玉に仕上がります。結球スピードは比較的遅いため、収穫適期が長く在圃性に優れます。外葉は濃緑(こみどり)で葉面の凹凸が多く、見た目が特徴的なサリナス系中生(なかて)種です。
形状が安定し、高い秀品率
トンネル内での温度変化に比較的鈍感で、球形状はきれいな豊円形で安定します。また、球尻のまとまりがよく、タコ足など異常球の発生も少ないため、秀品率の高い品種です。
ビッグベイン病とべと病に強い
低温期に発生する土壌伝染性病害であるレタスビッグベイン病に対して高いレベルの耐病性を示し、発病による生育の遅延が少ないので、安定した生育が期待できます。また、多湿と低温で発生しやすいレタスべと病にも比較的強く、トンネル栽培においても安心して栽培することができます。
栽培ポイント
トンネル被覆管理
従来のサリナス系中生種の栽培体系に準じたビニールトンネル栽培を基本とし、平均気温が10℃になる12月上中旬を目安に被覆を開始してください。草勢が比較的旺盛なため、外葉展開期はトンネルの裾を上げ、換気して冷やし気味に管理し、外葉が立ち上がらないようにします。結球の進行とともに徐々に換気を少なくし、収穫期近くには玉肥大を促してください。また、朝晩の冷え込みによる凍霜害を防ぐために、トンネル内に不織布などによるベタがけを設置するのも有効です。
スムーズに生育を進める
在圃性がすぐれる反面、過度の乾燥や低温により生育が停滞すると結球が進みにくくなり、計画よりも収穫時期が遅れるおそれがあります。乾燥が続く場合には適宜かん水を行い、生育をスムーズに進めることで結球を促してください。結球中期以降の過度なかん水は形状の乱れや病害発生につながるため、結球開始〜結球初期の圃場水分量に注意して生育を順調に進めることが重要です。
病害の早期防除
レタスべと病はレース分化が起こりやすく、一部の産地においては「Fブロウ」にも罹病(りびょう)する事例がわずかに見られています。
トンネル内は菌核病や灰色かび病など他の病害が発生することも懸念されるため、各病害に登録のある薬剤を予防的に散布してください。また、ビッグベイン病に対しては圃場の条件次第では十分な耐病性を示さないことがあるため、土壌消毒や登録薬剤のかん注などと併せて、総合的な防除が必要になります。
ビッグベイン病耐病性品種の使い分け
暖地のトンネル栽培においては、12~1月どりと3~4月どりは「Jブレス」、特に玉肥大が求められる1月下旬~3月上旬どりは「Fブロウ」と使い分けることで、大玉で秀品率の高いレタスを安定的に出荷できます。「Jブレス」でビッグベイン病耐病性が不十分な場合には、より耐病性が安定する「シスコビバ」をご使用ください。「Fブロウ」は「シスコビバ」並みのビッグベイン病耐病性で低温肥大性もあるため、厳寒期におすすめの品種です。「Jブレス」と「Fブロウ」は、べと病にも比較的強い品種ですが、レース分化により発病する可能性があるため、品種を問わず登録薬剤による早期防除に努めてください。
(執筆:タキイ茨城研究農場 岡田 有平)