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食品残さが原料のバイオスティミュラントで肥料使用量削減、脱炭素化へ

食品残さが原料のバイオスティミュラントで肥料使用量削減、脱炭素化へ

昨今の肥料価格の高騰に限らず、地球温暖化や地政学的リスクもあって、肥料の使用量の削減に関心を持つ農業者は多いのではないだろうか。しかし、肥料を減らすことで収量が落ちてしまえば、農家の収入は減ってしまう。そんな課題を解決する可能性があるのがバイオスティミュラント(BS:生物刺激剤)だ。このバイオスティミュラントを活用して農業をめぐるさまざまな課題を解決しようという組織、「Eco-LAB(エコラボ)」が設立された。

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食品残さからバイオスティミュラント!

2023年9月7日、「バイオスティミュラント活用による脱炭素地域づくり協議会(Expert COuncil for Low carbon Agriculture in Biostimulant technology、以下Eco-LAB)」が設立され、その発表会が東京都内で行われた。Eco-LABの代表は農業ベンチャー企業の株式会社AGRI SMILE(アグリスマイル)、参画団体は5つのJA、さらに金融機関等を含む全14団体。Eco-LAB設立の目的は、「日本の農業産地がバイオスティミュラントを活用しやすい環境づくりを行い、食品残さを活用したバイオスティミュラントの社会実装を図ること」だという。今後、食品残さ由来のバイオスティミュラントの研究開発や評価、栽培体系の確立などを進め、持続可能な農業を推進するとしている。

食品残さから生まれたバイオスティミュラント

食品残さから生まれたバイオスティミュラントで循環型農業を実現する。発表会資料より引用(画像提供:株式会社AGRI SMILE)

バイオスティミュラントとは、植物の免疫系を活性化することで植物が本来持っている能力を引き出す農業資材で、農作物の収量増加や品質向上などの効果が期待されている。発表会で登壇したAGRI SMILE代表取締役の中道貴也(なかみち・たかや)さんによると、特定の機能を持つバイオスティミュラントの活用によって、農作物がリンなどの肥料成分を吸収しやすくなるため、肥料の使用量を削減できるとしている。

バイオスティミュラントの機能

バイオスティミュラントの機能。発表会資料より引用(画像提供:株式会社AGRI SMILE)

AGRI SMILEでは食品残さを活用してバイオスティミュラントを開発する研究を行っている。2022年には赤パプリカに独自の加工処理技術を施すことでバイオスティミュラント素材の開発に成功したことを発表した。
バイオスティミュラントを使用する農業現場では、その効果がわかりにくいという現場の声があった。中道さんは京都大学在学中からバイオスティミュラントの効果の評価について研究を続けて来たとのことで、「AGRI SMILE社内の研究所内では効果を評価できる指標が確立できている。産地ではどのようなものがより生産者に受け入れられるのか、エコラボを通じて集約して、現場で応用できる形で評価のルールを作っていきたい」と話した。

肥料使用量削減と脱炭素化を実現する取り組み

Eco-LABはさらにバイオスティミュラントの活用を通じて、農業界の脱炭素化にも挑戦しようとしている。バイオスティミュラントを活用した産地や生産者が炭素クレジットを受け取れる仕組みを整備し、生産者の新たな収入源とすることを目指しているのだ。

炭素クレジットとは、企業などがCO2などの温室効果ガスの削減のための取り組みを行い、その削減量などをクレジット(排出権)として発行し、他の企業などと取引できるようにする仕組みのことだ。Eco-LABでは、農家がバイオスティミュラント資材を活用することで温室効果ガスの削減をクレジットとして取引できるようにすることで、農家の収益向上につなげようとしている。設立のメンバーに金融機関が含まれている背景には、こうした金融面での脱炭素化の取り組みを重視していることがあるようだ。

農業界が抱えるさまざまな課題を、バイオスティミュラントを軸として解決しようとする今回の取り組み。持続可能な農業と脱炭素、さらに生産者の所得向上につながることに期待したい。

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