4年ぶりのリアル開催、期待高まる展示商談会
「最大級の国産農産物の展示商談会で、創意工夫を重ねる農林水業者・加工業者と国内外の熱意のあるバイヤーが結びつき、国産農産物の消費拡大の輪が広がることを祈念いたします」
野中厚(のなか あつし)前農林水産副大臣の挨拶で第16回目のアグリフードEXPOが幕を開けました。今回は輸出拡大支援として、国産酒類を一堂に集めた「グローカル酒類パビリオン」の設置など新たな試みがなされ、またコロナ禍を経て4年ぶりのリアル開催とあって、この時を待ちわびた出展者とバイヤーで会場は活気を帯びていました。
「アグリフードEXPOは、北海道から沖縄県まで全国の都道府県から出展者が一堂に集まる国産農林水産物・食品に特化した展示商談会ということが最大の特徴です。多様なバイヤーが商談の機会を求めて訪れます」と、主催の日本政策金融公庫の細谷哲郎さん(広報報道担当)は語ります。今回は、全国各地から 465先の農林水産業、食品企業等が出展し、入場者数は 8,889 名、商談件数 は 21,844 件(※)を数えました。
アグリフードEXPOで今を時めく3人の農業経営者に、出展の狙い、ブースの工夫、商談のコツなどを聞いてみました。
(※)開催結果に関するニュースリリースより
ぶどう畑から世界を見据えたワインづくり、輸出の機会を求めて初出展/KUSAKA VINEYARDS(栃木県)
今回が初出展のKUSAKA VINEYARDS(クサカ・ヴィンヤード)は、栃木県市貝町の醸造用ぶどう生産者。グローカル酒類パビリオンに、自社ブランドワインを紹介するブースを構えました。代表の日下篤(くさか あつし)さんは、脱サラ後、山梨県でぶどう栽培と醸造技術を学び、2016年に地元の栃木県にぶどう園を立ち上げました。委託醸造で自社ぶどうを使ったワインを生産し、県内の酒販店、道の駅で販売。コロナ後は販路拡大を目指して都内のマルシェにも出店しています。
「8年前に植えた苗木が育ち、今年はワイン用ぶどうの生産量が増えます。首都圏に販路を見出すことと、海外輸出に期待して出展しました」と日下さん。2022年産から自社畑100%使用のワインが製造できる収量になり、仲間内で話を聞いていた「アグリフードEXPO」への出展を検討。ぶどう管理の手が空く8月下旬の開催だったことで実現しました。
これまではBtoCがメインで、展示商談会は初めてという日下さん。事前のオンラインセミナーに参加し、そこで得た情報から、さらに関連動画を視聴して出展のイメージを掴んで、スムーズに準備を進めることができたと言います。「自社ワイナリーの設立はまだこれからですが、規制緩和で日本にワイナリーが増えているので、まず自分たちのワインを知ってもらうことに重点を置いています」と、今回の出展の意図を語ります。
海外を意識したワインづくりをする日下さん。強みは、農家が原料からつくっていること。「長野や北海道などがブランド化されていますが、産地として知られていない栃木にこんなワインがあると海外の人を驚かせたい」と、農業人であり栃木県人として抱負を語ってくれました。
出会いが魅力で継続出展、情報収集から商談のPDCAを回す/株式会社れんこん三兄弟(茨城県)
茨城県稲敷市のれんこん三兄弟は、家業かられんこん部門を独立させて2010年に設立。長男で代表取締役の宮本貴夫(みやもと たかお)さんら三兄弟と、非農家出身の若い社員たちが、栽培面積32haでれんこんを生産・販売しています。10年前に初出展して以来、自社の状態や市場の動向を見ながら出展を重ねてきました。主な販路は飲食店でしたが、コロナ後は小売店への売上が伸びています。その糸口となったのはこのEXPOでした。
「小売店への販路開拓を目的に出展しましたが、最初は話をもらっても条件が整わず断念するケースが多くありました。次第に、価格、ロット、輸送など、小売店に届けるためにクリアすべきポイントがわかり、出展前に準備できたことで商談がスムーズになりました」と宮本さん。
ブースに用意された販促物も出展を続けてきた成果。小売店での棚作りをイメージして、POPを立てたり、商品にロゴのシールを貼っています。生活者に対して自社のれんこんの良さや違いを伝える情報を形にして残さなければ、どんなにおいしくてもリピートにつながらないからです。
「展示商談会の一番の魅力は集客です。『商品を買いたい』というお客様が全国から集まっているので、先方から声をかけてもらえますし、出展者同士でお客様を紹介し合うこともあります」。
今後も出展していくという宮本さんが、「展示商談会は自身の経営の振り返りができる場です。生産方法を見直したり、物流を改善することで、販路拡大につながります。畑の中で自己満足して作っているだけでは、お客様の気持ちはわかりません。だから、外に出る必要があります」と、販路拡大を目指す若手生産者にアドバイスを送ってくれました。
目を引くデザインでブースに集客、商品展開にもアイデアを一貫/株式会社たけやま(千葉県)
「No rice No life」を掲げたブースが目を引くたけやまは、千葉県山武市で米の生産・加工・販売・卸売を手がける会社です。最終工程の精米と保管に重点を置き、直接販売に力を入れた10年前に初出展。今回で6回目の常連です。
代表取締役の伊藤享兆(いとう たかよし)さんは、「お米は他との差がつきにくく、匂いもないので、足を止めてもらえるブースを作りました」と話します。低温精米のこだわりや生産者の思いを伝えるために出展したにもかかわらず、通り過ぎる人ばかりで目的を達成できなかった過去の経験から、小間数を倍にしてブースのデザインを刷新。これまでの農業のイメージを刷新して若い就農希望者に訴求する狙いもあります。
展示商品は3種類の精米のみ。産地銘柄は大きく謳わず 『房の黄金米』のブランド名でシリーズ化し、売場で目立つ赤、青、緑のパッケージで展開しています。メインターゲットは、食べ盛りの子供がいる家庭。手頃な価格帯で毎日食べられる安心安全なお米を目指して、余分な工程を削って生産コストを下げています。 例えば、カメムシ防除の農薬散布は一切行わず、規格外の米粒は精米の過程で分別して加工品原料に。「商談会に出なければターゲットは見えないし、私たちの努力も伝わりません」と明言します。
「展示商談会の一番の目的は、情報収集と新しいアイデアの発見です。ここでは、いろいろな生産者が、いろいろなものを、いろいろな売り方をしています。お米だけしか売っていないイベントでは恐らく何のアイデアも出てこないでしょう」と伊藤さん。商談では顔を売ることを意識して、バイヤーからお米のことなら何でも、他県産のことも、聞かれるようになりました。
「お米の情報は田んぼにはありません。外へ出て多くの方と話をしてほしい」とメッセージを送る伊藤さん。出展を重ねるごとに会社を強くしています。
次回は2024年8月21日(水)〜22日(木)に開催予定
実りある出展となるよう、アグリフードEXPOでは出展前のサポートも充実させています。その一例として、企画団体によるオンラインセミナーでは、ブースの作り方や商談スキル向上などのオンラインセミナーを数回に分けて開催し、アーカイブ配信も行っています。
「今年は初出展者が全体の41%を占めました。国産にこだわり、調達意欲のあるバイヤーと出会える場なので、これからも若い農業経営者にどんどん出展してほしいと思います」と細谷さん。
次回のアグリフードEXPOは、2024年8月21日(水)〜22日(木)に開催予定。出展に興味のある方は、気軽にお問い合わせください。
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