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異業種から新規就農し2年で農業法人を設立。「農家がもうかるビジネスモデル」とは

異業種から新規就農し2年で農業法人を設立。「農家がもうかるビジネスモデル」とは

家族経営だった農業を事業承継し、僅か2年で法人化。生産面積を20倍に拡大させ、生産から販売までの独自モデルを作り出した若手農業者がいる。アグベル株式会社の代表取締役、丸山桂佑(まるやま・けいすけ)さんだ。今ではその農業経営を学ぼうと、就農希望者が続々と集まっているという。アグベル独自のビジネスモデルとは何か。そして丸山さんが考えるこれからの日本の農業に必要なこととは何かーー。マイナビ農業の横山拓哉(よこやま・たくや)が対談した。

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■丸山桂佑さんプロフィール

アグベル株式会社 代表取締役
1992年、山梨県山梨市生まれ。同市で60年以上続くブドウ農家の3代目。大学卒業後、リクルート住まいカンパニーに就職し、大手不動産仲介会社に向けた広告営業を行う。2017年、父親の病気を機に山梨へUターンし家業であるブドウ農家を継承。翌年から独自での販売や輸出などを行い、2020年にアグベル株式会社を設立。

■横山拓哉プロフィール

株式会社マイナビ 地域活性CSV事業部 事業部長
北海道出身。国内外大手300社以上への採用支援、地域創生事業部門などで企画・サービスの立ち上げを経験。2023年4月より同事業部長就任。「農家をもっと豊かに」をテーマに、全国の農家の声に耳を傾け、奔走中。

3年で独立を目指すプログラムで若手を育成

横山:丸山さんは3代目だそうですが、もとは家族経営だったんですよね。

丸山:はい。父の病を機に僕が継承して、2年後の2020年に法人化して拡大していきました。生産農地は継承してからおよそ20倍に拡大しています。

横山:アグベルさんの特徴は、一気通貫されたビジネスモデル、耕作放棄地の活用、そして若い世代の生産者の育成、この三つが挙げられると思います。若手の人材育成にはどう取り組んでいますか。

丸山:アグベルのある山梨に移住してもらい、3年間のプログラムを経て独立するというプログラムを実施しています。今は全国から年間で80〜100名の方々から応募いただいています。

横山:せっかく採用するのだから、長く勤めて自社に貢献してほしいというのが多くの法人の考えだと思います。あえて3年という期間を設定しているのはなぜですか。

丸山:果樹は時間がかかる品目で、最初は実がならず、収入が生まれないので新規就農はかなり難しいんです。そこを僕らが雇用という形で補って、一緒に技術を身につけたり、空いている土地を紹介したり、地域の方々とのコミュニケーションの仲介に入ることで、独立後も円滑に農業ができます。これまでそういうサービスや場所がなかったので。

横山:自社に残ってほしいという気持ちはありませんか。

丸山:あんまりないですね。今、山梨県の果樹農家の平均年齢は70歳なので、少しでも若い人が入っていかなければなりません。独立しても同じ仲間だと思っているので、そういう人を多く増やしたいです。

日本農産物の価値を上げるために

横山:輸出を始める際は、海外にある日本企業をピックアップして現地で営業されただそうですね。
丸山:僕は英語がしゃべれなかったので、日系企業だったら日本語が通じるバイヤーがいるだろうと(笑)とにかく行動しないと、課題の解像度が上がらないと思ったんです。そこで初めて解消すべき「負」が見えてきました。

横山:どんなことがありましたか?

丸山:ブドウはいかにフレッシュな状態で届けられるかが肝心です。輸出だと国内に滞留する時間が長くなる上に中間業者も入るので、価格が上がって品質が下がる。
この「負」を解決するために、当社では産地から輸出までをなるべく短い時間で行い、適正な価格でいい品質のものを売っています。

横山:今の取引社数と売上規模について教えてください。

丸山:取引企業は約40社、売上規模は3億円ぐらいです。仕入れ先は、のべ100件ぐらいの生産者がいます。

横山:輸出においては、果物の足の早さに対して、安定した品質をどう担保していくかが個人的には課題だと思いますが、丸山さんはどう考えますか。

丸山:そこは川上側の努力だと思います。脱粒(実が房から外れてしまうこと)をしないようなブドウを作ったり、品質が良いものを最短で日本から出られる流通に体制を整えたりする努力がもっともっと必要だと思います。

他国は国策で農業に取り組んでいますから、生産のレベルや味はどんどん上がってきています。今後は日本にしかできない品質や品種開発をビジネスで守りながらアピールできる農業に切り替わっていくと思います。日本も変わるべきタイミングだと思います。

横山:今後、輸出と国内販売のバランスはどうとっていく予定ですか。

丸山:今、売り上げは大体50:50になってるので、このバランスは保っていくと思います。ただ、日本の胃袋は1億人分で、海を越えれば80億人分ですから、必然的に輸出が増えていくだろうと考えています。そこに向けた農業をしていきたいですね。

メガプレイヤーが出てくることで業界は成長する

横山:今後の果樹業界、ひいては日本の農業の今後の未来はどうあるべきかを教えてください。

丸山:人が減って高齢化していく中で、既存の流通経路で供給していくのは難しい時代になり、このままだと衰退産業になっていくと思います。
だからこそ農業をビジネスとして捉えて、引退した方の農地を集約し、規模を拡大していく。そういう企業が産地に現れれば、品目ごとのメガプレイヤーが品目、ひいては業界を牽引(けんいん)していく動きになる。私たちは、まずブドウでその立ち位置になることを目指しています。他の品目でも農家を引っ張るメガプレイヤーが出てくることで、日本の農業の成長につながると思います。

横山:各品目、各地域で徐々に頭角を現している方がいっぱい出てきていますよね。

丸山:新規就農者にとっても、品目ごとに目指すべきビジネスモデルや人物がいると盛り上がりますし、若い人の参入も増えてきます。独立だけではなく、法人に勤めながら農業をやっていく雇用型の農業も、浸透していくといいなと思いますね。

横山:アグベルさんがこれからの模範的な形になるかもしれないですね。

丸山:まだまだですけど、なれるように頑張ります!

(編集協力:三坂輝プロダクション)

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