土を変えて、産地を変える!農協『JA新はこだて』の挑戦を日本全体へ

公開日:2023年10月27日
最終更新日:
昭和50年代の減反政策をきっかけに、北斗市と七飯町でネギの生産が広がったJA新はこだて。年々生産量が増え、現在は年間8000トンほど出荷しています。一方、連作や異常気象による品質の不安定化で、マーケットからの信頼が問われる事態も。
様々な課題を抱えながら一流産地を目指すJA新はこだてが見つけた突破口が、初代葱師・清水寅社長との協力体制の構築です。二人三脚で「有機肥料で土を変える」挑戦への第一歩をご紹介します。
写真左から、ねぎびとカンパニー 代表取締役 清水さん、JA新はこだて 田山さん、沼山さん、奈良さん
清水社長から問われた「産地」としての本気!
━━清水社長へアプローチする前、JA新はこだてエリアのネギを取り巻く状況はどのようなものでしたか?
田山さん
生産量増加を目指し50年近く化成肥料を使ってきましたが、連作障害が発生し、品質の良いネギを作れなくなっていました。葉枯病などが増え、黄色く変色したネギに市場からクレームが入り、売物にならず単価が下がってしまう状況だったんです。
そこで、販売担当の奈良を中心にどうすべきかを模索していましたね。

JA新はこだて 生産販売部 部長の田山光幸さん:ネギ産地としての未来を想い、藁にもすがる気持ちで清水社長の協力を仰ぐ
━━どのようにして清水社長を知ったんですか?
奈良さん
SNSで清水社長の有機肥料を使った栽培に興味を持った農家さんから「秋の研修視察で山形県天童市の清水社長のところへ行きたい」と話がありました。
ホームページを拝見し、清水社長に大きな可能性を感じて早速連絡を取ってみたところ……「本気で勉強する気はあるのか?」と真っすぐに問われたんです。

JA新はこだて 生産販売部 農産園芸課係長の奈良将裕さん:「市場から信頼される一流産地にしていきたい」と語る
━━いきなりの鋭いジャブですね(笑)
清水さん
当時、うちに年間300社ほど見学者が来ていましたが、来て満足してしまうケースが多かったんです。私の最終目標は「農家さんの売り上げを伸ばし、利益を出すこと」なので、一緒に日本を良くするために「本気でやるのであれば来いよ!」と。

ねぎびとカンパニー株式会社代表取締役 初代葱師 清水寅さん:美味しさを徹底追求しながら世界で戦える企業農家を目指している
━━清水社長から見て、ネギの単価が上がらない理由はどのあたりにあるのでしょう?
清水さん
日本はネギの相場が高い時期と安い時期がおおよそ決まっています。 5・6・7月は収量が足りずに値段が高騰し、安い外国産のネギを使わなければいけない業者さんもでてくるんです。5・6・7月の国産のネギの収量が上がれば、国産のネギの値段も安定し、国産のネギを使ってくれるでしょう。
そもそもコストメリットのために化成肥料が広がりましたが、それが癖になり習慣になり文化にまでなった。この状況を変えるため本気で一緒に取り組んでくれる相手を探しています。
清水社長に習い、全てを変えた若き生産者!その結果は……?
━━清水社長との出会いを通じて、生産者さんに何か変化はありましたか?
奈良さん
最初は七飯地区の農家さん、その後に北斗地区の農家さんが清水社長のもとで勉強しました。自分たちが持っていた栽培ノウハウとは違う情報を得て、知識の幅が広がったようです。

清水社長のもとを訪れ、新たな農家の交流も生まれました
━━その後、清水社長とJA新はこだてで、どのような取り組みを進める方針になったのでしょうか?
清水さん
うちで作っている有機肥料を使えば、JA新はこだてが抱えているウィークポイントを改善できるのでは?と考え、今年から試験的に使ってもらう方針になりました。
奈良さん
清水社長には、これまで3回講習に来ていただいています。若手の農家さんを中心に60人~70人ほど集まり、何に困っているのかを聞くところからスタートしました。
その中の1人、『いわもとふぁーむ』の岩本さんが、最初から最後まで清水社長のやり方で栽培したんです。今年は夏の異常気象などがあり地域全体で生産量が落ちた中、岩本さんは収量を落とさずにシーズンを終える可能性があります。

沼山さん
岩本さんは自身のYouTubeチャンネル『
いわもとふぁーむTV agriculture studio』で、
清水社長に教わった栽培方法や途中経過、収量も発信しているんです。
岩本さんは就農前に農業界とは異なる業界を経験したからこそ、発想が柔軟で、良いものをどんどん取り入れているのだと思います。

JA新はこだて 生産販売部 農産園芸課課長の沼山規章さん:北斗地区や七飯地区のネギ農家は若い年代が比較的多く、後継者が育っていると語る
━━他に来シーズンに向けて取り組んでいることはありますか?
清水さん
農家さん向けのマニュアル作りを一緒に進めています。土を寄せるタイミング、土を寄せた時の形とか。来年の栽培前までに完成させて、JA新はこだてから広めてほしいですね。そのために今は月に1回、ここでの打ち合わせを重ねています。

━━ちなみに「無料」で全国を回っていると聞いたのですが……なぜそこまで?
清水さん
それだけ困っている農家さんが多いんです。実は僕自身も化成肥料とさらに便利な一発肥料に頼った結果、会社を2度潰しかけた経験があります。どうすれば乗り越えられるのか考え抜いた結果、「フィッシュソリュブル」と呼ばれる魚エキスを濃縮した有機肥料と土地改良剤の『超微生物』にたどり着きました。
その経験から「日本のネギ業界を変えたい」と、3年前に技術を解禁して全国を回っています。……タダで来てくれるんだから、清水寅を呼ぶのはコスパがいいんですよ(笑)

市場の期待に応える品質や供給量と単価の向上……土の見直しから一流産地へ!
━━清水社長と一緒に取り組んで、どんな成果がでていますか?
奈良さん
シーズンが終わっての反省会はこれからで、まだ数字も出ていない状況です。ただ今年に関しては例年になく暑くて、ネギ自体の栽培が厳しい環境でした。
沼山さん
ただ先ほど紹介した岩本さんのように、収量を伸ばしている人もいます。清水社長の技術を地域全体で積み上げて、異常気象にも対応していける産地になるのが最終的な目標です。
田山さん
長ネギは現在もJA新はこだての野菜部門で1番の稼ぎ頭です。それを守り続けたいし、さらに伸ばしていきたい。生産者が減っていく中、どう実現させるのか?大きな課題ですが、清水社長と協力体制を深めて実現したいですね。

奈良さん
天候に関わらず買い手からは同じ数量・品質を求められます。そこに対応しないとお金をいただけません。一流産地の定義はいろいろありますが、自分の中では「安心して誰でも手に取れるもの」を作れるのが一流産地の証。
高級なネギを目指すのではなく、みんなが安心して手に取れるネギの産地を目指したいです。
━━一方で単価を上げていく努力も必要ですよね?それはどのようにお考えでしょうか?
沼山さん
簡単に考えると、細いネギよりも太いネギを作る方が単価は上がります。同じ箱に入れるにしても、太いと本数が少なくなり、細いと多く入れなくちゃいけない。すると1本当たりの手取り額が変わってくるんです。
清水社長のように2L(目安30~35本/箱)を作る技術があれば、確実に農家さんの手取り額UPに繋がります。だからこそ、まずは肥料を変えて土を変える必要があるんですよ。

清水さん
農協の出荷担当者は、若くてやる気のある人が多いです。市場から注文を受けているのは、農家でなく農協。それに応えられないと信頼を落としてしまいますから、責任感があるんです。
農協が変わらないと農家が変わりません。このJA新はこだてでの挑戦から、一緒に日本のネギ業界を変えていきたいですし、他の地域でも一緒に取り組みたいJAがあれば、ぜひお声がけいただきたいです。

来年は講習会で話すだけでなく、実際にいくつかの地域でネギを育てたいと考えていると語る清水社長
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1番大事な「土」を見つめ直す取り組みからスタートした、JA新はこだてと清水社長の取り組み。「土」に情熱が注ぎ込まれれば、大きな変革のうねりが生まれると感じられる取材でした。
「自分たちも行動を起こして産地を変えたい!一緒に日本の農業を変えていきたい!」と思った方は、ぜひ清水社長に相談してみてください!問われるのはただ1つ「本気」です。
【お問い合わせ】
ねぎびとカンパニー株式会社
〒994-0075
山形県天童市大字蔵増字宮田4389-1
TEL/FAX:023-665-4930
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