フリマサイトで販売されている種苗の実態
種苗法では、品種登録されている品種を育成者権者の許諾を得ずに自家増殖することは、育成者権を侵害するとして禁止されています。また、違法に増殖された種苗を利用した人も、育成者権者の損害賠償請求の対象になる可能性があります。
しかし今、あちこちのフリマサイトなどで、育成者権者に無断で増殖したと思われる種苗の出品が散見されています。
メルカリやラクマなど大手フリマサイトでは、こうした違法種苗出品に対し、ガイドラインに無断増殖・販売の禁止を明記しました。(※1)
品種登録を受けている種苗を無断で販売すると刑事罰の対象となりますが、事実上は品種の育成者権者が訴えなければ捜査が進まないことがほとんど。フリマアプリ上では容易に違法な出品だとわからないように対処をしている場合が多いため、育成者が全ての違法出品者を見つけ出すのは困難です。
種苗の違法販売が横行すれば、育成者は品種開発のコストを回収できず、新たな品種改良・開発ができなくなることでしょう。
フリマサイトでは、種苗を出品する際には「出品しようとしている商品は種苗法(育成者権)により保護されている場合があります」と表示をしていますが、無視すればそのまま出品できてしまうのが現状です。
※1 出典:株式会社メルカリ「知的財産権を侵害するもの(禁止されている出品物)」、楽天グループ株式会社「ラクマのルール」
違法販売の種苗がもたらす危険性と被害事例
種苗の販売は、害虫の発生や病害のきっかけとなる危険性もあります。
本来「輸入を禁止されている海外の植物」「移動を規制されている国内の植物」は植物防疫法にもとづき、輸送には適切な手続きが必要です。(※2)
ところが、フリマサイトで正規の品質管理や検査を受けていない種苗が販売され、他の地域に移動することにより、本来その地域に生息するはずのない害虫が現れている可能性があるというのです。
「港や空港では植物輸送に関して検疫を行っている。まだフリマサイトでの植物輸送が原因とは断定できないが、海外や沖縄を含めた離島にしかいない虫が、他の地域で発見されているのは事実」と話すのは農林水産省消費・安全局植物防疫課防疫対策室の担当者。「本来土の中にしかいない、明らかに遠方の害虫が他地域で見られている」とのこと。
フリマサイトでは個人が気軽に出品できることから、知らず知らずのうちに農業被害を加速させているかもしれません。
※2 出典:農林水産省「フリマサイト・通販サイトを利用される方へ>植物・昆虫類の販売・購入に気を付けてください!」
違法な種苗を買わないために「今」できること
違法な種苗の販売に対し、フリマサイト側もまだ本格的な対策ができていないのが現状です。自家増殖が容易にできる種苗も存在することから、しばらくは種苗の違法販売は駆逐されないことでしょう。
農林水産省消費・安全局植物防疫課防疫対策室の担当者によると、違法な種苗を購入しないためには、下記2つを確認するしかないとのこと。
- 海外の農作物にあたる場合:輸入禁止物に該当しないかを確認する
- 国内の農作物にあたる場合:移動規制の農作物でないかを確認する
このほか大手ネットオークション・フリマアプリの「ヤフオク!」では下記のような項目をチェックするように記載があります。
- 出品者や販売者の所在地を確認する
- 輸入植物などを落札・購入する場合は輸出国政府が発行した検査証明書が添付されているか確認する
- 沖縄県・奄美群島等からの植物を購入する場合は、落札・購入を控えるか、移動制限対象の植物ではないか確認する
- 種馬鈴しょ(ばれいしょ)を購入する場合は、検査合格証票が添付されているか確認する
引用:ヤフオク!【ご注意】植物類・昆虫類を取引されるお客様へ
日本の豊かな農林水産業を守るためにも、アプリ利用者も「フリマリテラシー」を持つ必要性が求められています。
なお、種苗の販売や購入に関する詳細な注意事項は、農林水産省のホームページにも記載があります。内容を確認して、うっかり違法な出品をしないよう、または違法な種苗などを購入しないよう、十分に気を付けましょう。
そのタネ、ほんとに大丈夫?~育成者権侵害について~(農林水産省)