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12月が旬の果物は? 「走り」「盛り」「名残」で冬本番へビタミン補給

連載企画:野菜ソムリエが語る旬の果物

12月が旬の果物は? 「走り」「盛り」「名残」で冬本番へビタミン補給

冬本番の12月。忙しい年末に突入です。店先には風邪予防や疲労回復によいとされるビタミン豊富な果物が並び、赤、黄、オレンジなどのビタミンカラーで視覚からも元気づけてくれます。このように農産物には旬があり、そのなかにさらに「走り(はしり)」「盛り(さかり)」「名残(なごり)」の三つの時期があります。12月に出回る国産フルーツを味わい尽くすヒントをお届けします。

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旬とは?

果物の旬とは、その果物の味が最もよい食べごろの時期で、栄養価も高くなります。収穫がピークを迎え、スーパーや直売所などに出回る量も多くなるので安い価格で、おいしく栄養価の高い状態の果物を手に入れることができます。

旬のなかには、さらに三つの時期があります。「走り」は出回り始めの初物の時期。「盛り」は最も多く出回る時期。そして「名残」は最盛期を過ぎて徐々に店頭から姿を消す時期です。これらは、季節のうつろいとともに味わいの変化も感じさせてくれます。

12月が「走り」の果物

クリスマスシーズンの12月に入るとイチゴが店頭に並び始めます。イチゴはシーズン中に5~6回花を咲かせますが、この時期に出回るのは一番最初に花をつけた実。寒い時期に収穫するイチゴは生育が遅いためそのぶん甘くなるともいわれています。また、温暖な地域で育った柑橘類もシーズンイン。春にかけてさまざまな品種が出回ります。走りの果物はみずみずしさが特徴。初物として珍重され、贈答用の高級品も多く出回っています。

イチゴ

かつては初夏が旬でしたが、今では施設栽培が導入され12月~4月がおいしい時期です。品種改良も進み、品種登録数は307件(2023年11月時点)。主産地では県オリジナル品種が続々と開発されています。近年では、栃木県の「とちあいか」、茨城県の「いばらキッス」、埼玉県の「あまりん」「かおりん」と「べにたま」、愛知県の「愛きらり」など。イチゴは栄養価が高く、特にビタミンCが豊富で1日約7粒で必要量が取れるとされています。また、葉酸や食物繊維、腸の働きを助けるペクチンも多く含まれています。保存は洗わずにパックごとラップに包んで冷蔵庫の野菜室へ。

調理例:イチゴのバルサミコサラダ、イチゴサンタ、練乳がけ

ブンタン(文旦)

柑橘類の中でも大きく果実が生育するブンタン類。甘く爽やかな風味があり、果皮は厚くスポンジ状で砂糖煮などに利用されます。出回り時期は12月~4月頃まで。主に高知県土佐市で栽培され、「水晶文旦」や「土佐文旦」のブランド名で流通しています。柑橘類で最大のバンペイユ(晩白柚)もブンタン類の一種で、直径25センチメートル、重さ2キログラムになるものも珍しくありません。主に熊本県で栽培され、「ザボン」とも呼ばれています。ブンタン類はビタミンCが豊富で、果皮にはペクチンなどの機能性成分が含まれています。保存は、直射日光の当たらない冷暗所で数週間。

調理例:ブンタンとミズナのサラダ、ブンタンピール、ゼリー

タンゴール

ミカン類とオレンジ類を掛け合わせた柑橘です。オレンジの豊かな香りと品質、ミカンの皮の柔らかさを兼ね備えています。各地のさまざまな品種が冬に旬を迎えるなかでも、12月に出回る早熟のタンゴールが、愛媛県のオリジナル品種でJA全農えひめブランドの「紅まどんな」(愛媛果試第28号)です。外皮は薄く、じょうのうとよばれる袋は柔らかく、ゼリーのようになめらかな果肉と甘い果汁が特徴。ビタミンCが豊富で、じょうのうには毛細血管を強化するとされるビタミンPが含まれています。保存は、涼しく通気性のある場所で1週間以内。外皮付きで横半分にカットし、次に切り口を下にして放射状に4~6等分する「スマイルカット」が食べやすくおすすめ。

調理例:真鯛と紅まどんなのカルパッチョ、フルーツサラダ、シャーベット
 

キンカン(金柑)

柑橘類の中で最小。一口サイズで皮ごと食べられます。出回り時期は11月~3月頃まで。キンカンの甘露煮をおせち料理に入れるのは、「金冠」と同じ読みで富に恵まれることを願ってのこと。ビタミンCが豊富で風邪予防の効果が期待され、皮ごと食べるため、ビタミンP、ビタミンE、カルシウムも合わせて取ることができます。保存は、冷暗所で1週間。長く日持ちさせたいときは、ビニール袋に入れて冷蔵庫で2週間。

調理例:キンカンとダイコンのサラダ、甘露煮、シロップ漬け

左上から時計回りに、ザボン(バンペイユ)、ブンタン、紅まどんな、キンカン

12月が「盛り」の果物

冬の果物を代表する温州(うんしゅう)ミカンの中生(なかて)品種が各産地から出荷されます。ミカンと同じく柑橘類のレモンも出荷のピークを迎え、国産のミカンとレモンが多く出回ります。比較的安く手に入り、味もよいこの時期に、マーマレードやドライフルーツ、各種漬け込みなどにして、旬の味を長く保存してはいかがでしょう。

温州ミカン

一般的に「ミカン」と呼ばれる日本の代表的な柑橘類。9月頃から爽やかな酸味の極早生品種、11月には酸味と甘みのバランスがよい早生品種、12月には中生品種が出そろって出荷のピークを迎えます。中生は、果皮は厚めで色が濃く、大ぶりで酸味が少なく甘みが強いのが特徴。栄養価も高く、ビタミンCのほか、骨の代謝を助ける機能性成分βークリプトキサンチン、袋や筋に含まれ毛細血管を強くするビタミンPなどの栄養素が注目されています。保存は直射日光の当たらない風通しのよい場所で。

調理例:マーマレード(ジャム)、ミカン酒、セミドライミカン

レモン

通年店頭に並んでいるレモンですが、国産は9月~1月がおいしい時期。12月に出荷のピークを迎えます。ビタミンCの含有量は、1個に100ミリグラムと柑橘類ではトップ。また、豊富に含まれるクエン酸は疲労回復に効果があるとされています。爽やかな香りと酸味が特徴で、果汁を肉・魚料理にふりかけて使うほか、菓子やドリンクの香りづけなど幅広い用途に使われます。保存は、冷暗所に置くか、保存用袋に入れて冷蔵庫へ。

調理例:塩レモン、シロップ漬け、レモンピール

12月が「名残」の果物

秋から冬にかけてのリンゴ、カキ、西洋ナシの収穫は終わり、名残の時期には貯蔵しておいたものや、寒風にさらしておいしくなる干し柿などの加工品が出回ります。名残の果物は、甘みが強く味が濃厚になります。旬の味を少しでも長く楽しむために、冷凍保存の方法も紹介します。

リンゴ(林檎)

国内のリンゴ品種で最も多く作られている「ふじ」の収穫は11月で終わり、特殊冷蔵庫で貯蔵されたものが、鮮度はそのまま、春以降まで出回ります。リンゴは、有機酸、ポリフェノール、食物繊維などを含み、栄養価が高いことから、欧米では「1日1個のりんごは医者を遠ざける」といわれています。リンゴは暑さが苦手なので、保存はビニール袋に入れて冷暗所で。長期保存は冷蔵庫へ。冷凍保存は、くし切りにして芯を取り除き、一切れずつラップに包んで冷凍保存袋に入れて冷凍庫で約2カ月。レモン汁をふりかけておくと変色を防げます。

調理例:セミドライリンゴ、冷凍リンゴのシャーベット、冷凍リンゴの焼きリンゴ

西洋ナシ(洋梨)

香りが高く、果肉は緻密でやわらかくなめらかな口当たりが特徴。11月に出荷のピークを迎えた代表品種の「ラ・フランス」は12月頃までが出回り時期。食物繊維のほか、喉の炎症を鎮めるとされるソルビトール、疲労回復によいとされるアスパラギン酸が含まれています。保存は新聞紙などで包みビニール袋へ入れて冷蔵庫へ。完熟したラ・フランスは冷凍保存もできます。半分に切るか皮と芯を取って食べやすいサイズにカットし、空気にふれないようにラップに包みます。冷凍保存袋に入れて冷凍庫で約1カ月。

調理例:ラ・フランスのジャム、冷凍ラ・フランスのシャーベット、グリーンスムージー

カキ(柿)

12月は最も多く栽培されている「富有」のほか「花御所」「次郎」などの晩生(おくて)品種の甘柿が出回り、シーズンは終了へ。代わって干し柿が出荷の最盛期を迎え、3月頃まで続きます。干し柿と似て非なるものにあんぽ柿があります。どちらも渋柿から作りますが、あんぽ柿は皮をむいた後に硫黄くん製して自然乾燥させます。栄養面では、カロテン、食物繊維が豊富。保存はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で1週間。冷凍保存は、皮をむいて食べやすい大きさに切り、ラップに包んで冷凍保存袋に入れて冷凍庫で約3カ月。完熟した柿は丸ごと冷凍保存するとシャーベット状になります。

調理例:カキ酢(柿酢)、冷凍ガキのなます、冷凍ガキのゼリー

まとめ

12月になると果物の旬は、リンゴ、カキ、西洋ナシから、イチゴや柑橘類に代わっていきます。イチゴや柑橘は品種が多いので食べ比べも楽しみの一つ。冬の果物には加工に向いているものが多くあります。国産果物がおいしく安く手に入るこの時期に、ジャム、マーマレード、シロップや砂糖漬けなどの保存食にするといいですね。空気が冷たく乾燥しているので、ドライフルーツや半生のセミドライフルーツ作りにも最適です。時期に合わせていろいろな食べ方を試してみてはいかがでしょう。

左上から、キンカンの甘露煮、ラ・フランスジャム、温州ミカンのマーマレード。皿には干し柿(手前)、あんぽ柿(右奥)、リンゴの砂糖煮(左奥)

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