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主なゴミは農業用ビニールハウスだった。野口健さんと岡山県総社市の小学生が投棄ゴミと格闘

主なゴミは農業用ビニールハウスだった。野口健さんと岡山県総社市の小学生が投棄ゴミと格闘

作物を育てるのに重要な役割を果たすビニールハウスですが、大切に使っていてもいつか寿命がやってきます。産業廃棄物に該当するビニールハウスの処分はとても大変ですが、中には山中に捨ててしまう人もいるのでしょうか。登山家の野口健さんは、岡山県総社市の小学生と行った山中の清掃活動で、ビニールハウスの廃材を回収。SNSにその様子を投稿しました。

twitter twitter twitter

捨てられていた大量のビニールハウス

これは登山家の野口健さんが、岡山県総社(そうじゃ)市の小学生たちと山に入り、ゴミを清掃したときのX(旧Twitter)への投稿です。2023年10月31日の清掃当日、集めた300キロあまりのゴミの多くが投棄された農業用ビニールハウスの廃材だったとのこと。

山手小学校でトークをする野口健さん(野口さんのインスタグラムより)

野口健さんは、アルピニストとして国内外のさまざまな山に挑戦しながら、山を取り巻く環境問題にもアプローチ。「野口健環境学校」を開設し、清掃活動などの体験を通して環境活動について「発信できる人材」を持続的に育成しています。
そんな野口さんは総社市の環境観光大使でもあり、2009年から市内の小学生などとともに清掃活動も行っています。野口さんによると「過去には冷蔵庫やマッサージチェア、大量のコンクリートなどが廃棄されていたこともありましたが、今回の開催地では大量のビニールハウスがゴミとして投棄されていました」とのこと。
長年放置されたゴミは土に埋もれていたり、草が生えてきたりと一見するとあまりゴミがあるようには見えないことも。
掘り出してみると、想像以上にたくさんのゴミが埋まっていることも多いのだとか。
「ビニールハウスってサイズがとても大きいですよね。土の中に埋もれたものをひっぱってもどんどん出てきて、かなり重さもありますし大変でした」と野口さんは当日を振り返ります。
投棄や残置されたゴミは、放置された時間が長いほど原状回復には多くの時間やお金がかかります。さらには、火災や水質・土壌汚染を引き起こしたり、健康被害などをもたらしたりする恐れもあります。
野口さんは、「ゴミを撤去し、投棄されない環境を作ることが大切です。総社市の取り組みのように、子どもたちに対して実体験を通して環境問題を考えるきっかけをつくり、ゴミを適切に捨てる意識を育てるということが必要です」と話してくれました。

不法投棄は5年以下の懲役や1000万円以下の罰金

投棄された肥料袋(イメージ画像)

ビニールハウスの総面積が減少したことや、耐久性の高いビニールハウスが登場したことで農業系廃プラスチック類の総排出量は1993年をピークに減少はしているものの、適切に処理されない事態が続いている(※1)のが現状です。

環境省の調査(※2)によると、農業系廃プラスチック類の不法投棄量は、2021年度には1123トン、2022年度には1663トン確認されています。
ビニールハウスを含めた農家で出るプラスチックゴミは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により産業廃棄物に定義されています。農業生産者は自らの責任で適正に処理しなければなりません。処分方法に従わず不法投棄をした場合、「5年以下の懲役または1000万円以下の罰金(またはその両方)」が科せられます。(※3)

※1 出典:農林水産省「農業分野から排出されるプラスチックをめぐる情勢」「園芸用施設及び農業用廃プラスチックに関する調査(S58~H11)」「園芸用施設の設置等の状況(H30)
※2 出典:環境省「不法投棄廃棄物の種類及び量
※3 出典:eGov「廃棄物の処理及び清掃に関する法律

分別すれば資源として活用できる

ビニールハウス(イメージ画像)

農業用プラスチックの不法投棄が問題視されている一方で、リサイクルの動きも進んでいます。
回収された農業用プラスチックは、主に床材や土木資源、燃料としてリサイクルが可能で、きちんと分別されていれば資源として再利用できます。
特に農業用の廃プラは、一つあたりの量が大きいため再生資源としての活用が注目されています。
農業用廃プラスチックは、具体的には下記のように分別します。(分別方法は地域によって異なる場合があるので、詳しくは自治体に確認してください)

  1. 乾燥しゴミや泥を落とす
  2. 識別マークに従って「農ビ(塩化ビニルフィルム)」と「農PO(ポリオフィレン系特殊フィルム)・農ポリ(ポリエチレンフィルム)」に分別する
  3. 金具や木片、土砂などの異物を除去する
  4. 10~15キロ程度の大きさでつづらおりにして梱包(こんぽう)する
  5. 市町村やJAの集積所、収集運搬業者へ持ち込む

冒頭で紹介した野口さん、実はコロナ禍で家庭菜園を始めたそう。「土を耕して農作物を作るのは、想像以上に感動的でした。手をかければかけるほど土がよくなっていくんです」と話していました。このように環境だけでなく農業にも関心の高い野口さんによる今回の投稿には、多くの農業関係者も耳を傾けるべきではないでしょうか。
ゴミが放置された土地では土壌汚染、水質悪化の懸念も出てきます。農作物を健全に育てる土壌をつくるためにも、使用済みビニールハウスなどを適切に処理することが求められています。

【取材協力・画像提供】野口健事務所

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