円安の影響で大豆の価格が上昇傾向に
日本では多くの大豆製品が供給されていますが、その原料のほとんどを安価な輸入大豆に頼ってきました。しかし、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻や円安などが影響し、輸入大豆の価格は高騰。それを受け、国内の大豆製品も値上がりが続いています。世界銀行のデータ(※1)によると直近3年間の大豆価格は、1トンあたり2020年は407USドル、21年は583USドル、22年は675USドルと、大きく上昇傾向にあります。
大豆の国際価格の上昇は、多くの大豆を輸入でまかなっている日本にとって大きな痛手です。世界情勢は変化が著しく不安定な要素も多いため、輸入大豆に頼っていると、いざというときに日本国内で大豆製品の供給量が少なくなってしまうことも考えられ、食料安全保障の観点からも改善すべき状況といえます。そこで、国産大豆を増産することで国内の供給を維持する取り組みも進んでいます。
※1 出典:World Bank Commodities Price Data
国産大豆の需要が増える一方、安定生産が課題に
農林水産省によると、国産大豆の需要はゆるやかですが増加傾向にあります。(※2)
農林水産省農産局穀物課の担当者によると「一般消費者やメーカーも、以前より国産大豆に興味を持つようになってきたと感じる」とのこと。
課題は国産の大豆の需要が増えているのに対して、生産が間に合っていないことです。日本では、水田を転換した水はけの悪い畑で大豆の栽培が行われることが多いため、湿害を受けやすいという特徴があります。さらに播種(はしゅ)から発芽にかけての時期が梅雨にあたるため、播種作業自体の遅れや、発芽不良になることも。また、開花期から収穫期は台風の影響で倒伏するなどして、収量が落ちてしまうこともあります。このような理由から、国内では大豆の生産が安定しないと考えられています。
※2 出典:農林水産省「大豆をめぐる事情」
国産大豆を増やすための取り組み
取材に対し前出の農水省担当者は「今後は、日本の気候に対応できる大豆の安定生産の技術力が必要になってくる」とコメント。実際、行政は農家の排水対策や機械の導入に補助金を出すだけではなく、より安定的に生産ができるような新品種の開発など、多方面での取り組みに力を入れています。(※3)
こうした取り組み等の結果、農林水産省の発表(※4)によると、国内における大豆の作付面積は少しずつ増加傾向にあるとのこと。
また、新品種の開発も進んでいます。2023年11月7日には、豆腐の加工適正がある「そらみずき」と「そらみのり」の2品種を育成したと農研機構から発表されました。(※5)
両品種とも安定供給量の確保が期待できるだけではなく、国産大豆の主要な使い道である豆腐への加工も問題ない品種であるとされています。
上記のように、より多くの大豆農家が安定して大豆を生産できるようなサポートが提供されています。大豆の安定した生産技術が全国に普及し、大豆の国内需要に応えられる未来はそう遠くないかもしれません。
※3 出典:農林水産省「小麦・大豆の国産化の推進について」
※4 出典:農林水産省「令和4年産大豆、小豆、いんげん及びらっかせい(乾燥子実)の作付面積」
※5 出典:農研機構「(研究成果) 収量が高く豆腐に利用できるダイズ新品種『そらみずき』、『そらみのり』」