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柿の木の剪定(せんてい)方法を農家が解説! 必要な道具や効果的なやり方を伝授

鮫島 理央

ライター:

柿の木の剪定(せんてい)方法を農家が解説! 必要な道具や効果的なやり方を伝授

畑の片隅や庭木としても見かけることのある柿の木。毎年数十センチずつ成長するとともに枝も増えていき、放っておくとボサボサになってしまうことも。大きくなりすぎた柿の木は栽培管理や収穫も難しく、剪定(せんてい)自体も大変になってしまいます。本記事では、そうした事態に陥らないよう、柿の木の剪定に必要な道具やコツ、成長段階ごとの剪定方法を解説していきます。ぜひ記事を参考にして、栽培管理のしやすい柿の木を維持できるようにしましょう。

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柿の木の剪定が必要な理由とは?

果樹を栽培するうえでは、剪定が必要不可欠とよくいわれます。
そもそも、なぜ木の剪定が必要になるのでしょうか。

樹形を整えて、作業効率性を高めるため

柿の木は年に数十センチずつ伸びていき、いずれ背の高い木になります。また、枝の数も年々増えていき、大きな木になると、太い幹からたくさんの枝が突き出している光景がよく見られます。
また、大きな柿の木になると、果実が上の方にたくさんついてしまいます。そうなると、収穫や農薬散布のために脚立を立てたり、木によじ登ったりしなくてはならないため、作業の効率性や安全性といったところで問題が発生してしまいます。

枝葉や果実に光を当てるため

枝が茂りすぎてしまうと、内側の葉や果実に光が当たりにくくなってしまいます。そのため、実がうまく育たなかったり、葉が落ちてしまったりするなどのトラブルにつながることも。
また、枝葉が光を求めて外に伸びていくので、内側がスカスカになってしまうこともあります。

果実の数・サイズを調整するため

放任栽培された柿は、とてもたくさんの小さな実をつけます。土壌から吸い上げられた栄養が、すべての実に分散してしまうため、それぞれの実が小さくなったり、味が悪くなったりすることもありえます。大きくておいしい実を作るためには、枝を詰めることが必要なのです。

柿の剪定時期

柿の木の剪定は11月から2月が最適です。この時期は収穫が終わり、木が休眠に入るため、樹液の流れが少なく、剪定による負担が軽減されます。また、葉が落ちているため作業がしやすくなります。

成長期の剪定は樹液の流出が多く、木に負担がかかり、病気のリスクも高まるため避けましょう。夏に軽く枝を整理することはありますが、切り戻しや間引きなど、主な剪定は冬に行うようにすると良いでしょう。

柿の木の剪定に必要なもの

実際に柿の木を剪定するとき、必須の道具は次の通りです。

・剪定バサミ(小さな枝に使用)
・軍手
・癒合剤(切り口の消毒と治癒の促進のために使用)

また、必要があれば下記の道具も購入すると後々便利です。

・刈り込みバサミ(高い位置の枝や固い枝に使用)
・剪定のこぎり(太い枝や主幹を切り落とす際に使用)
・脚立(高い位置の剪定に使用)

剪定バサミ

枝を切るときは、ノコギリではなく剪定バサミを使います。
できるだけ切り口が奇麗になるように、切れ味の良いものを選びましょう。

太い枝や高い位置にある枝を切るときは、刈り込みばさみを使います。
シンプルな構造のもの、電動のものなど、さまざまなものがあります。

癒合剤

枝の切り口には、癒合剤を塗布しましょう。
癒合剤を塗ることで、雨水や雑菌の侵入を防ぎ、病気の感染予防になります。
農家の間では、トップジンMがよく使われています。

柿の剪定のコツ

柿の剪定をする際、気をつけたい点やコツをまとめました。

  1. 若木のうちは剪定しすぎない
  2. 切り口の保護
  3. 一度にたくさん切りすぎない
  4. 枝は真っすぐ奇麗に切る
  5. 目指す高さになったら主幹を切る

それぞれ詳しく解説していきます。

若木のうちは剪定しすぎない

柿の木は実を結ぶまで約5年かかります。剪定の際は、樹冠(木の上の部分)の枝は過度に切らず、木の上部の成長を妨げないように注意しましょう。

幼木から若木にかけては、日光が幹に届くよう慎重に剪定しましょう。
若木は成木と比べて体力が低いため、枝を一度にたくさん切りすぎないようにしましょう。成木になると本格的な剪定が可能になり、多くの枝を切れるようになります。

切り口の保護

柿の木を剪定後、切り口を放置せずに癒合剤を塗布することが大切です。癒合剤は樹木の傷口を保護し、傷口の治りも早めてくれる、キズぐすりのようなものです。
癒合剤を塗布せずに放置すると病気や木が枯れる原因になることもあります。癒合剤を塗ると、切り口にカルスと呼ばれる保護組織を形成し、ダメージを軽減してくれます。

塗る際には切り口にたっぷりと塗り、しっかりとふたをするようにします。さまざまな癒合剤がありますが、トップジンMが入手しやすく、使いやすさも簡単でオススメです。適切な処置で柿の木を健康に保ちましょう。

一度にたくさん切りすぎない

柿の木の剪定では、一度に多くの枝を切ることは避けたほうが良いでしょう。
大量に枝を切ると木にダメージを与え、枯れるリスクや、翌年の実付きが悪くなる可能性があります。特にボサボサに生い茂った木を剪定する際は、一度に切りたい気持ちを抑え、計画的に毎年少しずつ枝を切ることが重要です。

枝は真っすぐ奇麗に切る

枝を切るときは、切り口が真っ直ぐ奇麗になるように注意して切りましょう。角度がついて、切り口が斜めになると、その分だけ切断面積が大きくなってしまいます。
切り口が大きいと、雑菌や害虫が付着するリスクが高まります。木の負担を軽減するためにも、切り口を小さく保つことが重要です。

目指す高さになったら主幹を切る

柿の木は、植えてから4~5年経過すると、樹高が4~5メートルに達します。この時点で、柿の木が理想的な高さになったと思ったら、主幹を切ります。
なお、手の届く範囲で実を収穫したい場合は、幹の高さを2メートル前後で剪定するのが良いとされています。また、育てるスペースが限られている場合は、早めに主幹を切っても問題ありません。

主幹を切る主な理由は、縦方向へ木が大きくなりすぎてしまうのを防ぎ、横方向への成長を促すためです。こうすることで、柿の木は横長の樹形を形成し、日光が枝葉に均等に当たりやすくなります。また、実の収穫が容易になり、木の管理もしやすくなります。

若木の剪定のやり方

若木の剪定では、幹から生えている太い主枝を3本、主枝から分岐して生えている亜主枝を1本の主枝につき6~9本ほど残し、横に広がった樹形を目指していきます。

植えてから2~3年の若木では、木の上部あたりの枝はあまり切り落とさないようにしましょう。若い木のうちから切ってしまうと、樹高が伸びず大きな木に成長できません。上部の剪定は、木が十分に成長してから行います。

プロの農家が柿の若木を剪定する際は、成長速度に合わせて第一主枝や第二主枝、第三主枝と残す本数を増やしていきますが、家庭菜園で剪定する際は、あまり難しく考えなくても大丈夫です。

では、実際に若木を剪定する際のやり方・考え方を説明します。

1.いらない主枝を落とす

木の幹に対して45度くらいの主枝を残して、他の太い主枝は切り落としましょう。
枝を切るときは、伸びている枝の根元から、真っ直ぐ切り落とします。

樹形はなるべく横向きに広げていくのが理想です。主枝を無造作に伸ばすと、樹形が奇麗にならないので、注意しましょう。
また、主枝同士の間隔にも注意が必要です。間隔が狭すぎると、成木になったときに剪定が難しくなります。主枝の間隔は30~50センチほど取ると良いでしょう。

2.いらない亜主枝を落とす

亜主枝は、1本の主枝から6~9本ほど残して、多すぎるものは切り落とします。
下から上に伸びている亜主枝を残して、それ以外のものは落としましょう。
また、亜主枝の先から伸びている側枝は、放っておくとドンドン伸びていきます。こちらも放置していると樹形が乱れてしまうので、切り落とすようにしましょう。

3.理想の樹高になったら主幹を切る

柿の木を植えてから4~5年経過すると、樹高が4~5メートルに達します。適切な高さになったら、主幹を切ります。手の届く範囲に実がなるように、幹の高さを2メートル前後で剪定するのがおすすめです。

成木の剪定のやり方

柿の成木の剪定は、冬と夏の2回行います。
冬は、枝をばっさりと切り落とす剪定を行います。
夏は茂りすぎた枝葉を軽く整えるくらいにとどめましょう。

剪定方法には、間引き剪定と切り戻し剪定の二つの方法があります。
間引き剪定は、枝を根本から切り落とし、枝自体を間引く剪定方法のこと。
切り戻し剪定は、枝の途中を切る剪定方法のことです。樹勢によって、先端を切る場合や、枝の4分の1から3分の1を切る場合があります。

冬の剪定

冬の剪定では、いらない枝をばっさりと切り落とし、樹形を整えます。

まず、30センチを超える長い枝は、新しい枝を育てるために2~3芽を残して切りましょう。
柿の実は長い枝にはならないため、木の負担にならないよう長すぎるものは切ってしまいます。

次に、細い枝や内向きの枝、上向きに垂直に伸びる立ち枝など、不要な枝は根元から切り、木の構造を整えます。
また、今年実をつけた枝は翌年には実をつけないため、新しい枝の成長を促すために切ります。実を収穫する際に、枝ごと切って収穫しても良いでしょう。ただし、一気にたくさん切ってしまうと木にダメージが残るので、樹勢を見ながら調整しましょう。

なお、柿の実がなるのは、前年伸びてきた新しい枝だけです。この枝を切ってしまうと、次の年に柿が結実せず収穫できなくなってしまいます。剪定の際は、春に伸びてきた枝は切らないよう注意しましょう。

夏の剪定

夏の柿の木の剪定は、枝葉の密集を減らし、日当たりと風通しを良くするために重要です。また、生理落果が終わった後の摘果も大切です。剪定の適切なタイミングは、品種によって異なりますが、一般的には6月下旬から8月にかけてが良いでしょう。この時期には、内側に向かって成長している枝や交差している枝を取り除くことで、太陽光が均等に当たるようにします。これにより、果実の品質が向上し、木全体の健康を保つことができます。

剪定後は、病害虫がつきやすくなるため、剪定した箇所を確認し、必要に応じて消毒を行うことが重要です。カイガラムシやアブラムシなどの害虫に特に注意が必要です。また、摘果を行うことで、過剰な果実を取り除き、残った果実の品質を高めることができます。果実の大きさや品質を均一に保つためにも、適切な摘果が重要です。

伸びすぎた柿の木を仕立て直す方法

伸びて大きくなりすぎた柿の木を小さくし、理想的な大きさに仕立て直すためには、思い切った剪定が必要になります。

幹の剪定

幹を切って樹高を下げることで、栽培管理のしやすい大きさまで高さを下げましょう。幹の切り方には特に注意が必要で、一気に切ってはいけません。一度に切る量は、全長の3分の1までにしましょう。また、幹を切った後に主枝が3本残るように、切る位置にも注意しましょう。

枝の剪定

長い枝は分岐点の付け根で切ります。これにより、木がスッキリと整い、健康的な成長が促されます。
真上に伸びる枝、内側に伸びる枝、混み合っている枝は剪定の対象となります。これらの枝を剪定することで、木の見た目が美しくなり、健康的に育ちます。
柿の実を収穫したい場合は、花芽がついている枝を残すことが重要です。

柿の木の剪定は、毎年行おう

柿の木は、50年~100年ほど寿命があるといわれています。その間、幹や枝はどんどん太くなり、新しい枝もたくさん生えてきます。
樹高も7メートルくらいまで大きくなるので、放っておくと栽培管理どころか、収穫も難しくなってしまいます。

大きくなりすぎてしまったり、ボサボサに茂りすぎた柿の木を自分の手で剪定するのは大変なので、毎年少しずつ剪定するように心がけましょう。

ぜひ本記事を参考に、柿の木の剪定に挑戦してみてください。ただ、もし危ないと感じたり、自分の手に余ると思ったりしたときは、無理せずプロの庭師などに頼んでも良いでしょう。

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