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梅の木の剪定(せんてい)方法とは? 必要な道具や注意点を農家が解説

鮫島 理央

ライター:

梅の木の剪定(せんてい)方法とは? 必要な道具や注意点を農家が解説

春の季語である梅。日本では奈良時代から庭木として栽培され、江戸時代ごろから果実の収穫を目的に栽培されています。現在では500種類以上の品種があり、観賞用・食用・薬用としてさまざまな使い方がされています。家庭菜園やガーデニングにおいても、庭木として人気の高い梅の木ですが、放任していると枝が複雑に絡み合ったり、大きくなりすぎたりして管理が難しくなってしまうことも。本記事では、梅の木の剪定(せんてい)方法について、1~3年目の若木の頃から4年目以降の成木になった後まで、やり方・注意点について詳しく解説していきます。梅の木を奇麗に管理できるように、本記事を参考にして、剪定に挑戦してみてください。

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梅の木の剪定はなぜ必要

梅の樹高は最大で10メートルにまで達するといわれています。そのため、剪定をしないと木が大きくなりすぎてしまい、管理ができなくなってしまうのです。

◯健康維持と生育促進のため
剪定によって古い枝や病気の枝を取り除くことで、樹木の健康を保ち、新しい枝の生育を促進します。これにより、翌年の花や実の生産が良くなる可能性があります。

◯樹形を整えるため
剪定により樹木の形を整えることができ、美しい外観を保つことができます。また、適切な形状は日光の均等な当たり方を促し、病気や害虫のリスクを減らすのに役立ちます。

◯適切なサイズを維持するため
管理されていない梅の木は、場所によっては大きくなりすぎることがあります。剪定によって、梅の木のサイズを適切に保つことができます。

このほか、剪定をしないと、次のような問題が起きてしまうこともあります。

◯枝葉の過密状態
枝が過密になると、光が内部に届きにくくなり、病気や害虫のリスクが高まります。

◯生産性の低下
果実や花の生産性が低下する可能性があります。特に、実をつけるための新しい枝やつぼみの成長が妨げられることがあります。

◯外観の悪化
管理されていない梅の木は、生い茂ってしまい見栄えが悪くなることがあります。

なお、花梅(観賞用)と実梅(食用)は剪定方法が異なることがあります。
花梅では、花を楽しむために育てられているため、花芽の多い枝を残しつつ、形を整えることが重要。一方の実梅は、果実の生産を目的としているため、果実の成長に適した枝を残し、過密にならないようにすることが重要です。

ただし、基本的な剪定の原則は同じで、過剰な成長を抑え、光と空気の流れを良くすることが目的です。

梅の剪定時期

梅の剪定は、季節によって異なる目的と方法で行われます。一般的に春、夏、冬の3回に分けて行われることが多いです。それぞれの季節での剪定方法を説明します。

春の剪定

時期:花後、4月~5月ごろ。
目的:不要な枝を取り除き、光と空気の流れを良くして病気や害虫のリスクを減らす。また、花の後に成長する新しい枝を整理する。
方法:果実をつけるための枝や、翌年の花芽ができる枝を選び、他の枝を取り除く。病気や枯れた枝、内向きに成長している枝、お互いに干渉する枝を剪定する。

夏の剪定

時期:7月~8月。
目的:翌年の花芽がつきやすくなるよう、枝の更新をする。
方法:長く伸びている枝や、徒長枝、交差している枝、枯れている枝などの不要な枝を落として、混み合っているところを整理するように剪定する。

冬の剪定

時期:10月~12月ごろ。
目的:樹形を整え、翌年の成長に備える。また、病気や害虫のリスクを減らす。
方法:主枝となる枝を選び、不要な枝を取り除く。特に内向きに成長している枝や交差している枝、弱い枝を剪定する。また、全体のバランスを考えながら樹形を整える。

剪定は木に与えるダメージが大きいので、強剪定(たくさん枝を落とすような剪定)は冬に行いましょう。また、古い枝には実も花もつかないので、切り戻して若い枝を作ることが大切です。

梅の木の剪定に必要なもの

実際に梅の木を剪定するとき、必須の道具は次の通りです。

・剪定バサミ(小さな枝に使用)
・軍手
・癒合剤(切り口の消毒と治癒の促進のために使用)

また、必要があれば下記の道具も購入すると後々便利です。

・刈り込みバサミ(高い位置の枝や固い枝に使用)
・剪定のこぎり(太い枝や主幹を切り落とす際に使用)
・脚立(高い位置の剪定に使用)

剪定バサミ

枝を切るときは、ノコギリではなく剪定バサミを使います。
できるだけ切り口がキレイになるように、切れ味の良いものを選びましょう。

太い枝や高い位置にある枝を切るときは、刈り込みバサミを使います。
シンプルな構造のもの、電動のものなどさまざまあります。

癒合剤

枝の切り口には、癒合剤を塗布しましょう。
癒合剤を塗ることで、雨水や雑菌の侵入を防ぎ、病気の感染を防いでくれます。
農家の間では、トップジンMがよく使われています。

梅の木の剪定のコツ

梅の木を剪定する際、気をつけたいポイントやコツをまとめました。
それぞれ詳しく解説していきます。

樹齢によって対応を変える

梅の木の剪定は、植え付けてから3年目までは全て冬に行いましょう。

1年目は、植木の成長を促すため、9月~11月ごろに地際から30~60センチのあたりで幹を切ってしまいます。こうすることで、刺激を受けた幹が成長し、翌年大きく育ってくれるのです。

2年目は、12月~1月ごろに剪定します。幹から上向きに出ている枝のうち、太く勢いのあるものを3本残し、弱い枝は全て切ってしまいましょう。次第に残した枝から、細い枝が伸びてきます。こちらも残すのは3本までとして、ヒョロリと長いようであれば、3分の1まで切り戻してしまいます。

3年目も、12月~1月ごろに剪定します。木もある程度成長しているので、細い枝や弱い枝、枯れ枝や混み合っているところを取り除いて整理しましょう。

4年目以降は、春・夏・冬と年に3回剪定を行いましょう。春と夏は、軽く剪定する程度にとどめて、木が休眠状態になった冬に強剪定を実施します。

詳しくは後述します。

切り口の保護

梅の木を剪定後、切り口を放置せずに癒合剤を塗布することが大切です。癒合剤は樹木の傷口を保護し、傷口の治りも早めてくれる、キズぐすりのようなものです。
癒合剤を塗布せずに放置すると病気や木が枯れる原因になることもあります。癒合剤を塗ると、切り口にカルスと呼ばれる保護組織を形成し、ダメージを軽減してくれます。

塗る際には、切り口にしっかりとふたをするようにたっぷりと塗り、ます。さまざまな癒合剤がありますが、トップジンMが入手しやすく、使いやすさも簡単でオススメです。適切な処置で梅の木を健康に保ちましょう。

花芽を落とさない

梅の木の剪定において特に注意が必要なのは、開花後の剪定です。梅の木は通常2月~3月にかけて開花し、花芽と葉芽という二種類の芽をつけます。花芽は翌年に花を咲かせるつぼみであり、葉芽は翌年に伸びる新芽です。7月~8月ごろには翌年の花芽の数が確定し、10月ごろには花芽が安定します。

しかし、夏が過ぎるまでは花芽の付いた枝を切るべきではありません。切られた枝を伸ばそうとする梅の木は、花芽を葉芽に変えてしまうため、春になっても花が咲かなくなる可能性があります。花付きが悪くなると、その後につくはずの実の量も少なくなります。

したがって、庭に植えた梅の木を剪定する際は、花芽を落としてしまわないよう特に注意が必要です。ただし、盆栽や鉢植えの梅の木の場合は、樹勢がそれほど強くないため、花後に剪定を行っても問題はありません。

1年目から3年目までの剪定

先述した通り、梅の木は、樹齢によって剪定方法が異なります。
1年目、2年目、3年目それぞれの剪定方法・時期についてそれぞれ解説していきます。
いずれの年度にも共通することですが、若木の頃の剪定は、全て冬に行いましょう。

1年目の剪定

1年目の剪定は、梅の木を大きく育てるうえでとても大切です。
梅の幼木は1度幹を切ることで、その後の成長が促されるようになるのです。

手順としては、9月~11月の間に、地面から30~60センチほどの高さで幹を切ります。
まだ幹も細いので、大きな剪定バサミや枝切りバサミで簡単に切り落とせるでしょう。
このとき、切り口はまっすぐになるように注意しましょう。角度がついて切り口が斜めになってしまうと、その分だけ切断面積が大きくなり、雑菌が付着し病気になるリスクが高まってしまいます。

切った後は、切断面に癒合剤をたっぷり塗布しましょう。癒合剤を塗ることで、その後の病気リスクを下げ、木の治癒が早まります。

2年目の剪定

2年目は、12月~1月の間に剪定を行います。

このときの剪定では、幹から出ている枝のうち、上向きに伸びている太い枝を3本残すようにして剪定しましょう。細い枝や並行・下向きに伸びている枝はすべて切り落とします。
残した太い3本の枝のうち、更に細い枝が数本伸びていることがあります。この場合は、細い枝も各3本ずつ残して剪定します。伸びている枝が、太い枝と同じくらい長い場合は、3分の1残して切り戻しも行います。切り戻すことで、翌年以降の生長が良くなります。
残す枝の見分け方としては、比較的太く勢いの良いもの、健康なものを選ぶようにしましょう。

このときも、切り口がまっすぐになるように心がけましょう。また、切り口には癒合剤を塗って病気感染への予防を行いましょう。

3年目の剪定

3年目の剪定は、12月~1月頃に行います。この年になると、かなり梅の木らしく育ってきています。
2年目にしっかり枝を選んで剪定していれば、大きく手入れをする必要はありません。
混み合っている枝葉や、大きくなりすぎた部分を切って、風通しや日当たりを確保しながら、木の形やバランスを整えましょう。

梅の木は、地面に向かって逆三角形になるように仕立てます。3本の主枝がそれぞれ横に広がり、そこから更に枝が分岐していくようなイメージです。
理想形から逆算して、余計な枝や弱っている枝を取り除いていきましょう。

こちらも切り口はまっすぐに。また、切った後は忘れずに癒合剤を塗りましょう。

4年目以降(成木)の剪定

梅が成長し成木になったら、年に3回剪定を行います。
春・夏・冬とそれぞれ剪定目的や方法が異なりますので、剪定方法を間違えてしまわないように注意しましょう。

花後剪定(春季剪定)

春の剪定、特に4月~5月にかけての間引き作業は、梅の木の健康と果実の質を高めるうえで重要です。間引きとは、大量に生じた新芽の中から生命力が強く健康な枝を選び出し、それ以外の不要な新芽を切り取る作業のこと。

多くの人は剪定と聞くと、枝のカットを思い浮かべがちですが、芽や実を間引くことも同様に重要です。結実した梅の実が多すぎると、養分が分散され、おいしい実が減ってしまいます。実がなり始める4月ごろに、間引きを行いましょう。この時期に間引きを行い、新芽同士の間隔が5~6センチになるように調整します。一つの枝には3~4個の新芽を残すのが理想的です。

また、実を間引く際には、サイズが小さかったり形が悪かったり、傷や病気の兆候が見られるものは、早めに取り除きましょう。こうすることで、残った実がより多くの養分を受け取り、質の良い梅に成長することができます。

夏季剪定

夏ごろの剪定は、翌年に花を咲かせるための花芽を付けさせる重要な作業です。この時期には、特に以下のような剪定を行いましょう。

まず、長く伸び過ぎた枝は不要な枝なので、3分の1の長さに切り戻します。枝の生育を適切にコントロールして、梅の木の全体的な形を整えましょう。

次に、幹や太い枝から上に向かって真っ直ぐに太く伸びている枝、いわゆる徒長枝を切ります。これらの枝は梅の木のバランスを崩し、場合によっては木の健康を害するため、放置せずに切り戻すことが重要です。

また、交差している枝も剪定の対象です。交差した枝は、日陰に隠れて元気がない方の枝を切ります。こうすることで梅の木の風通しを良くし、病気や害虫のリスクを減らせます。

枯れている枝も剪定で取り除きます。枯れた枝は見栄えが悪いだけでなく、害虫の餌となるため、遠慮なく切り落とします。

最後に、内側に伸びた枝を剪定します。内側に伸びた枝は混み合って幹を傷つける可能性があるため、根元から切り取ります。

冬季剪定

冬季剪定では、夏季剪定と同じように不要な枝を剪定していきます。
夏剪定と異なる点として、冬は木が休眠状態に入るため、強剪定ができます。
強剪定とは、太い枝やいらない枝を、根元からたくさん剪定していくことです。

夏剪定は木に与えるダメージが比較的大きいため、必要最低限しか剪定できません。
冬剪定では、しっかり剪定を行い、翌年に向けて樹形を整えていきましょう。

梅の木は庭木にぴったり!

梅の木は見た目も良く、実も採れるため、庭木としてぴったりです。
庭木として栽培する分には、ある程度放任しておいても十分な強さを持っていますが、美しい梅の木を維持するためには、定期的な剪定が欠かせません。
梅の木の剪定は年に3回もあり、覚えることも多く大変です。
最初のうちはどの枝を切っていいのか判断するのも難しいですが、少しずつ覚えていってください。

本記事を参考にして、梅の木の剪定に挑戦してみてください!

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