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観光×農業体験で労働力確保に挑む。2回の実施で見えてきた沖縄農業ツアーの未来

観光×農業体験で労働力確保に挑む。2回の実施で見えてきた沖縄農業ツアーの未来

全国各地で増え続ける農業の人手不足。なかでもコロナ禍以降、農繁期の慢性的な人手不足が問題視されている沖縄県では、旅行事業を展開する農協観光とJA沖縄中央会が連携して県外の社会人や大学生に呼びかけ、短期雇用につなげる新たな労働力確保のモデル事業『沖縄農業ツアー』を展開しています。今回は、交通費や宿泊費の補助があった1回目と、自走を見据えて補助なしで挑んだ2回目から見えてきた事業の成果や課題についてレポートします。

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農協観光×JA沖縄中央会×現地農家および農業法人による新しいモデル事業

株式会社農協観光(以下、農協観光、通称・Nツアー)は、JAグループの旅行会社として平成元年に設立。全国各地のJAとネットワークを持ち、グリーンツーリズムなどの農業をドメインとする旅行事業を展開しています。
令和3年には新規事業として、農業の労働力不足を支援する専門部署を本社に設置。農業に関心のある個人や法人を会員とする「Nツアーアグリ人財バンク」を立ち上げ、会社員や大学生の援農ボランティアと人手不足に悩む全国の農家・農業法人のマッチングを通じて、多様な働き手の創出に取り組んでいます。

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アグリ人財バンクのHP

令和4年には、慢性的な労働力不足に悩む沖縄県で、同地らしいリゾート型の新しい支援モデルをつくろうと短期雇用に焦点を充てたモデル事業『沖縄農業ツアー』をJA沖縄中央会とともに企画。農家と参加者のマッチングでは、JA沖縄中央会が個別に受け入れの心得を説明し、トイレや休憩所など細かな点まで環境を確認するなど、参加者の要望と丁寧にすり合わせました。
こうして実施された『沖縄農業ツアー』では、首都圏を中心に関西や沖縄から参加した26名を名護市や糸満市、小浜島、石垣島、西表島の14軒の農家で受け入れ。参加者は、パイナップルやサトウキビ、電照菊、野菜、畜産などの生産現場で6~10日の農作業に従事しました。

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昨年のツアーの様子

単なる労働力確保だけでない、副次的なメリットが生まれることも

ツアーで参加者を受け入れた農家からは、人材の真面目さや確実に作業が進んだことを高く評価する声も多くありました。とはいえ、モデル事業を継続するには、自走できる体制構築が必要だと農協観光の関谷さんは話します。
「令和4年のツアーは参加者の送迎や宿泊先の手配を農協観光が行いましたが、今後も本ツアーを継続・拡大していくためには、これらの手配や参加者の送迎を誰が行うかが課題になると考えています。」

そこで令和5年度の労働力確保支援事業では、この事業を続けたいと手を挙げてくれた波平花卉生産組合(糸満市)の波平渡さんと、14日間の旅行日程で組んだツアーを企画。アルバイト3名を受け入れて実施しました。

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募集チラシ。インターネットや大学などを中心にツアー参加者を募集。特にSNSでの反響が高かったと関谷さん

波平さんは、このモデル事業に副次的なメリットを見出しています。
「経営を長男に任せようと事業継承を進めている中、この事業に参加したことで長男にとっても多くの刺激になったようです。沖縄と東京の文化の違いや時間の感覚の違いから気づくこともあれば、さまざまな経験をされてきた方の話を聞ける貴重な機会になるなど、県内で仕事しているだけでは知れないこと、学べることが多くあります。」
今回の参加者の中にも、長年勤めていた会社を早期退職して参加した男性がいました。
「皆さんには『受け入れ側として足りないこともあるはずだから、気がついたことがあればぜひ教えてください』と伝えているんですよ。」と波平さんは話します。

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波平渡さん。「県内で人材確保を完結するのは難しい今、今回のモデル事業に期待もあります。」と話します

受け入れ側の不安が安心に変わるリピート率の高さに期待

波平さんが営むのは、約1万坪の電照菊農園。実に野球場3つ分という広さです。冬は全国各地に出荷していて、12月と3月にはピークを迎えます。

ツアー参加者には、電照菊の収穫や選花、下草取りのほか、オクラや枝豆の植え付け作業を依頼。植え付け作業を行う皆さんの仕事現場を訪ねることができました。
参加したのは、小林さん(東京在住)、中村さん(東京在住)、北島さん(埼玉在住)の皆さんです。

「沖縄が好きで、何度も旅行で訪れていました。ふと検索で目にした沖縄農業ツアーの募集チラシを見て、地元に根ざしている人たちと一緒に働くことで、旅行するより沖縄のことを深く知ることができるとプチ留学の気持ちで応募しました。」と話すのは、ツアー参加2回目の小林さん。

初回はキュウリやキャベツを生産する農家さんの下で収穫や梱包を手伝いました。今回リピートしようと思ったのは、沖縄の自然を感じながら働ける環境の良さに魅了されたからと小林さん。
「空がとても広く、作業中でも風の音が聞こえます。仕事帰りに海沿いの通りをドライブしていたら、海の向こうのピンク色の空にオレンジ色の太陽が広がる景色を見ることができました。」

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小林さん。「前回ツアーは1週間。やっと慣れてきた時に離れないといけなかったので残念な気持ちもありました。今回は2週間あり、週末はお休み。観光を楽しむ時間もあります!」と笑顔を見せます

北島さんもリピーターの1人です。前回ツアーの受け入れ先も波平花卉生産組合だったと言います。
「移住先の候補として沖縄を考えるようになりツアーに参加しました。農作業は体力的に大変な部分もありますが、募集チラシで写真を見たら「またみんなに会いたい!」と応募してしまいました(笑)」

リピーターが増えるのは、受け入れ側にとっても嬉しいこと。事業の持続化にも期待が高まります。一方、沖縄農業ツアーに今回初めて参加したのが中村さんです。
「長年勤めた会社を退職し、リフレッシュしたいと考えていたところ、姉から薦められて応募しました。驚いたのは、沖縄の人の温かさ。人の優しさに感動しています。」と話します。

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中村さん。「前職が力仕事だったので体力には少し自信はあったのですが、初日でもう体がバキバキになってしまいました(笑)」と振り返ります

3人が口を揃えるのは、受け入れ農家さんをはじめ、沖縄の人々の魅力です。特定技能や技能実習の外国人メンバーとの交流も楽しんでいます。
現場で作業や仕事内容を指示しているのは、波平花卉生産組合の波平嵩さん。
「慣れない環境だと思うので、できる限りコミュニケーションを取りながら不安を取り除きたいと思っています。短期でも人の手があることですごく助かっていますし、これからも続けていきたいですね。」と、受け入れ農家として心掛けていることを教えてくれました。

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波平嵩さん(写真中央)。2代目として日々奮闘中です

時代に相応しい労働力確保のツールとして、農業版ワーケーションを確立したい

沖縄の主要産業となる観光と農業を掛け合わせた『沖縄農業ツアー』は、SDGsや農業に興味がある人をはじめ、沖縄が好き、沖縄の暮らしに溶け込んでみたい、沖縄で就農したいなど、いろいろな人の想いに寄り添うことができ、リピーターを増やすことで、より効果的な労働力の確保につなげられる可能性も出てきました。

「海や山が近い沖縄で休日にはリゾートを楽しみつつ、就農経験ができる貴重なツアーだけに、ポテンシャルは高いと思います。」と関谷さん。
「実際にやってみないと分からないことばかりですよね。短期就農で初心者が多いと難しいのではと思う人もいるようですが、とにかく忙しさが増す繁忙期には、誰でもできることを頼めるだけで助かっています。それに、新しい風を入れることで空気が変わることもあると思っています。」と、波平さんも事業に期待を寄せます。

常時雇用が難しくなり、最近は外国人材に頼る農家さんも圧倒的に多いそうですが、『沖縄農業ツアー』のようなモデル事業を継続していく中で、産地間連携でのツアーを企画するなど、求人・雇用を多角的に広げていくことが大切だと2人は話します。
都心で暮らす人が、長期休暇や有給を利用してリゾート地として人気の沖縄を訪ね、農業やその土地の人々の暮らしに触れる――そんな農業版ワーケーションが体験できるモデル事業は、時代性にマッチしており、新しい労働力確保源として期待されています。

【取材協力】
波平花卉生産組合
株式会社農協観光 事業統括部 労働力応援事業課
アグリ人財バンク

【労働力確保支援事業に関するお問い合わせ】
株式会社マイファーム
農業労働力確保支援事務局

MAIL:roudouryoku@myfarm.co.jp
TEL:050-3333-9769

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