マイナビ農業TOP > 農業ニュース > カギは連携。新たな労働力確保につなげたJA全農ふくれんの取組とは

タイアップ

カギは連携。新たな労働力確保につなげたJA全農ふくれんの取組とは

カギは連携。新たな労働力確保につなげたJA全農ふくれんの取組とは

生産者の高齢化や担い手不足により、農業就農人口の減少が続く福岡を舞台に、生産基盤の維持拡大を図るため、労働力支援への取組を強化してきたJA全農ふくれん。独自のネットワーク構築など、環境づくりを進める同会では、産地間連携などを目的に、農林水産省による「令和5年度農業労働力確保支援事業」の採択を受け、福岡農業ツアーをスタート。これまでにない視点から新たな事業モデルの構築につなげることもできたという今回の取組について、JA全農ふくれん営業開発部営農・事業開発課の藤代浩也さんに詳しく教えていただきました。

twitter twitter twitter

生産農家や農作業請負の民間企業と連携し、労働力の産地間連携にチャレンジ

JA全農ふくれんでは、農業労働力支援の取り組みを強化したいと、平成29年から株式会社菜果野アグリ福岡とパートナーシップを組み、農作業請負事業の支援を進めてきました。生産農家と(株)菜果野アグリ福岡が直接請負契約を結び、必要な時に必要なだけの労働力を求めることができる事業は、生産農家や農業法人のなかで徐々に浸透。福岡県内のJAや組合員への支援として、直近でも年間延べ約8~9,000名の受け入れを実現しています。
とはいえ、同事業だけで農業労働力を確保するのは難しく、「令和4年度農業労働力確保支援事業」の採択を受けた北海道と山形より、産地間連携ができないかと相談を受けたことをきっかけに、全農大分県本部と合同で新たな事業モデルへの取組をスタートしました。

 width=600

産地間連携のスキーム

「北海道や山形では冬場の農作業は多くありません。その頃になると福岡ではイチゴをはじめ、野菜や果物の収穫期を迎えるため、産地間連携で新しい労働力確保につなげられないかと考えたのが、取組開始のきっかけです。」と藤代さん。
令和4年には、JA全農ふくれんから北海道に20人、山形県に37人、続けて令和5年にも北海道に10人の送り出し支援を行ないました。

送り出し支援に関しては、雇用労働力として募集人数を集めるのは難しかったことから、(株)菜果野アグリ福岡の登録者や大学関係でも人を募集。結果、送り出し先の収穫期の人手不足の解消に大きくつながりました。

 width=600

お話をいただいたJA全農ふくれん営業開発部営農・事業開発課の藤代浩也さん

福岡農業ツアーでは、産地間連携と大都市圏でのSNSで母集団を形成

福岡県が受け入れ側となり実施する「令和5年度農業労働力確保支援事業」では、産地間リレーの完結をめざし、北海道と山形県から参加者を募集。現地JAに要請しつつ、それだけでは母集団形成が難しいだろうと関東や関西の在住者に向けたSNSで「福岡農業ツアー」の参加者を募りました。

受け入れ地区と作物などをまとめた表

産地間で連携した労働力確保
北海道・山形県のJAグループ(JA新おたる・ホクレン・全農山形県本部)と連携し、繁忙閑散期の異なるエリアから受け入れ
⇒成立数10件(求人数10件/応募数17件)
他産業と連携した労働力確保
「福岡農業ツアー」専用のHPを開設し、大都市圏(首都圏・関西圏)を中心にSNSによる告知を実施
⇒成立数15件(求人数16件/応募数68件)

「令和5年度農業労働力確保支援事業」による「福岡農業ツアー」では、合計25名を福岡県で受け入れました。

イチゴに関しては、主に関東や関西からSNSで募集。みかんや柿に関しては、JA新おたる、ホクレン、全農山形で参加者を募りました。
「あまおうの生産地として有名な福岡県だけに、イチゴの収穫で募集できれば反響はさらに大きいと思いますが、実はイチゴはとてもデリケート。慣れた人でなければイチゴが傷んでしまうため、今回のような未経験者に依頼する農作業としては難しいものがあります。それでも、HP等でイメージできるところはすぐに応募者が集まりました。」と藤代さんは振り返ります。一方、展張などといった直接生産物と関わらない作業になると、母集団形成に苦労したそうです。

 width=600

シート展張も農業経営において欠かせない作業です

“新しい事業モデル構築”のきっかけにも

「受け入れ農家を募る際、実施計画書をもとに生産農家さんや農業法人さんと話を進めていくのですが、その中で多かったのは、ほぼ未経験の人を短期間受け入れることへの不安でした。」と藤代さん。
しかしながら、将来的には労働力不足がさらに深刻化するだろうと、新しい取組にチャレンジすることも大切だという生産農家や農業法人を中心に受け入れ調整を進めたといいます。
福岡農業ツアー実施後のアンケートでは、受け入れたすべての農家が「満足」または「やや満足」と回答。「収穫期は人手が必要なので助かった。」という声をはじめ、産地間連携では「農作業に対する反応が新鮮で気づかされたこともあり、今後の雇用に向けた対策についても考えさせられた。」「十分な成果を出してくれた。とても戦力になった。」「北海道ならではの話を聞けて知見を広げることができた。」など、新しい気づきや刺激を受けることもできたようです。
受け入れして良かったという回答を得られたものの、来年度に向けて課題も残ると藤代さん。1年目は交通費や宿泊費を補助で賄えていたが、2年目からは自走することが事業の最終目的にあるため、どのような条件を提示して雇用労働力を募るのかを考える必要があると言います。

 width=600

作成したチラシ

「今回のツアーで産地間連携を実現できたことはとても良かったと思います。それにより新たな取組が生まれるなど、大きな収穫もありました。」と藤代さん。
今回、産地間連携のために情報交換していく中で、「冬場に特定技能外国人の働き先がなくて困っている。」という悩みがあると知り、トライアル的に2023年11月から4月までイチゴのパックセンターや選果場など4カ所で40名の特定技能外国人を受け入れました。作業も手慣れており、「想像以上に即戦力として助かっている。」と現場サイドから嬉しい声が集まる結果となりました。また、これにより周年作業確保の課題解消ができる可能性も見えてきました。

「受け入れ側の満足だけではなく、参加された特定技能外国人のみなさんの満足も大事。住環境など周辺的な部分も含め、環境整備ができることで継続できないかと模索しているところです。」と藤代さんは話します。

 width=600

取組は地元紙で大きく取り上げられました(2023年12月14日付 西日本新聞より)

既存事業の活用や新たな事業連携で、地域農業を支える仕組みづくりへ

JA全農ふくれんでは、農業労働力支援事業の取組において、実にさまざまなチャレンジを同時進行で進めています。JA新おたるやホクレンとの産地間連携をきっかけに生まれた特定技能外国人を活用した産地間連携のほか、約1,000社が会員となる九州経済連合会や農林中央金庫と三者連携協定を結び、副業などを活用した地域企業による農業労働力支援の取組もスタートしています。

 width=600

三者連携の仕組み

「コロナ禍では、企業が副業を解禁する動きも見られました。農業は副業との親和性が高く、地域農業を地域企業で支える仕組みとして、利便性の高いマッチングアプリを活用したボランティアやアルバイト、副業などによる労働力支援環境を構築するとともに、企業研修で農業研修カリキュラム導入を支援することで、将来の農業関係人口の拡大をめざしています。これから先、農業経験者を募るのは一層難しくなると思われるので、より多くの未経験者を受け入れられる仕組みづくりも重要だと考えています。」と藤代さん。

その一つとして「令和5年度農業労働力確保支援事業」からはじまった「福岡農業ツアー」も継続したいと考えています。旅費や宿泊費負担の課題もありますが、北海道や山形県との産地間連携のほか、近隣の九州・中四国で産地間連携することで負担を抑えられないかなど、情報交換も盛んに行なっているそうです。
「事業でつながった長野県や群馬県、鹿児島県、宮崎県から学ぶことも多くありました。今後も様々な組織や地域との連携を継続することで、労働力支援による生産基盤の確立や地域の活性化に少しでも貢献していきたい。」と抱負を語ってくれました。

【取材協力】
JA全農ふくれん 営農開発部 営農・事業開発課

【労働力確保支援事業に関するお問い合わせ】
株式会社マイファーム
農業労働力確保支援事務局

MAIL:roudouryoku@myfarm.co.jp
TEL:050-3333-9769

そのほかの取組をチェックする
農業労働力産地間連携等推進事業 産地事例ポータルサイト
農業労働力産地間連携等推進事業 産地事例ポータルサイト
農業現場における労働力不足を解消するため、農林水産省では、「産地内における労働力確保を推進するための取組」「農繁期の異なる他産地・他産業との連携等による労働力確保の取組」に対して支援を行っています。本ページで紹介する事…
タイアップ

関連キーワード

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

公式SNS

「個人情報の取り扱いについて」の同意

2023年4月3日に「個人情報の取り扱いについて」が改訂されました。
マイナビ農業をご利用いただくには「個人情報の取り扱いについて」の内容をご確認いただき、同意いただく必要がございます。

■変更内容
個人情報の利用目的の以下の項目を追加
(7)行動履歴を会員情報と紐づけて分析した上で以下に活用。

内容に同意してサービスを利用する