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先導役はJA。強みの「農家との近さ」を生かし、農繁期の働き手確保に挑む

先導役はJA。強みの「農家との近さ」を生かし、農繁期の働き手確保に挑む

長崎県北部に位置する佐世保市、平戸市、松浦市、佐々町(さざちょう)、小値賀町(おぢかちょう)。中山間地域や島しょ部を有するこれら広域エリアを管轄しているのがJAながさき西海(さいかい)です。同地域では水稲や野菜、果物や和牛など多様な農畜産物を生産。なかでも農林水産祭で天皇杯を受賞したみかん、菊をはじめとした花卉(かき)、関東・関西にも出荷されるいちごは主要品目です。長年の課題である人手不足の解消に向け、同JAでは、2022年度から農繁期の労働力確保に向けた取組を本格的にスタート。これまでの活動を職員の方に聞きました。

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高齢化にコロナ禍が拍車をかけ、労働力不足が大問題に

JAながさき西海の管轄エリアでは、温暖な気候や農作物を育てやすい土壌などの地理的条件を生かして、品質の良い多品目の農畜産物を生産しています。JAの正組合員は7,851人。その多くが家族経営で、農繁期には親戚間で作業をフォローし合うなどしていましたが、地域全体が高齢化。特に「させぼ広域かんきつ部会」の後継者不足は深刻で、リタイアした部会員の農地を他の部会員が引き受けて生産を継続。一戸あたりの栽培面積そのものは拡大したものの、収穫期に人手が足りないという大きな問題に発展していました。

「毎年手伝いに来てくれる学生に農家さんが声をかけたり、かんきつ部会が中心となって新聞折り込みでアルバイトを募集したりしていましたが、コロナ禍で人の動きが完全にストップ。どうにもならないと相談されたんです。」と営農振興部の村上友子さん。そこで、農林水産省の『農業労働力確保支援事業』を活用しながら、働き手不足解消に向けた活動を本格化させました。

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営農振興部の村上さん。「外国人労働者との心の交流が励みになっています。」

外国人労働者の受け入れ体制の整備&求人アプリを導入

初めに着手したのは、人材派遣サービスを展開する株式会社エヌとタッグを組んだ「特定技能外国人」の受け入れです。ただし長期的な雇用になるため、取り急ぎ住居の確保が必要。「長崎県庁や佐世保市役所に公営住宅の提供を打診しましたが、良い回答を得られませんでした。」と村上さん。あきらめずに探し回った結果、佐々町役場から、職員が以前使っていた物件を紹介してもらえることに。そこで、来日が決まったカンボジアの女性3人が住めるように、大家さんの了承を得て納屋の2階を改装。「長く暮らせる、きちんとした住まいを提供してあげたい。」という思いから、村上さん自らDIYの腕を生かしてリフォームに取り組んだと言います。

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外国人労働者用の住居。修繕・改装で専有&共用スペースなどの条件をクリア

これ以降、新たに空き家3軒を確保し、外国人材(最大17人)が入れ替わる形で定住し、柑橘農家を手伝っています。農家の方も「みんな仕事熱心。率先して“頑張ろう!”と声を出してくれるから、現場の雰囲気が明るくなりました。」と満足されている様子です。
さらに外国人雇用と並行して、生産者と農業アルバイト希望者を1日単位でマッチングする求人アプリ「デイワーク」の普及も進めました。アプリの反響は上々で、2022年度のマッチング率は柑橘・いちご・花農家を合わせて86%に上ったそうです。

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派遣先での作業は基本的に8時間(休憩あり)。週休2日制も導入されています

いちご農家・花農家に支援を拡大。新たに作業動画も制作

前年度の成果・課題を踏まえて、2023年度には若手生産者を中心に栽培面積が増え、市場ニーズも高まっている菊やアスチルベを栽培する「西海の花連絡協議会」、生産体制強化により出荷量が増加している「西海いちご部会」へのアンケートを実施しました。営農方針や労働力の確保状況などを数値化し、今後の支援に反映していく予定です。
また、求人アプリなどを通じて応募があった労働者向けに、農家での具体的な業務、みかんの選別基準などが分かる「作業紹介動画」も公開。

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作業の流れ・ポイントなどをまとめた動画。JAながさき西海のYouTubeで配信中

アプリを活用している生産者から、「アルバイトが毎日変わるから、何度も同じことを教えなければならない。」という意見が出たことから、業務前の説明の手間を減らし、作業の効率化を図ることを目的に制作したそうです。現在、JAながさき西海管内で求人アプリを使っている生産者は柑橘8農家、いちごと花卉がそれぞれ2農家で、求職者からは「働きたくても登録農家が少ない。」という声も届いているとか。「アプリの概要や利便性を研修会などでしっかり農家さんに伝えて、導入を推進していきたいです。」と営農振興部係長の山崎裕香さんが話してくれました。

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「動画配信の成果などがこれから出てくると嬉しいです。」と営農振興部の山崎さん

農家との近さがJAの強み。今後も地域から頼られる存在に

JAながさき西海が事務局として人材不足解消に取り組んだ2年間、柑橘・いちご・花部会がトータルで雇用した外国人労働者は初年度が29人、次年度が33人です。今後は他分野にも雇用を拡大していきたいそうですが、品目によって農繁期が冬場限定だったり、1日単位の雇用だったりすることから、年間を通して仕事を提供できないという問題も抱えています。この解決策として、長野県との「リレー派遣(異なる地域に人材が行き来し労働力を補う仕組み)」が実現しそうだと言います。

JAは生産者にもっとも近い存在。そのJAが率先して人材確保のために動いているという実績は、組合員側の大きな安心につながっています。「信頼関係があるからこそ、農家さんとは何でも本音で言い合います。」と話す村上さん。また農家だけでなく、外国人労働者にも仕事・生活面で親身に向き合うことで、良好な関係が築けているそう。今後の課題は自治体との協力体制を強化すること。「地域農業のためにもっと力を貸してほしい。」と期待を寄せます。農家の方の「ありがとう」の声に後押しされ、外国人の素朴な笑顔に元気をもらうという村上さん。労働力確保に向けた挑戦はこれからも続いていきます。

【取材協力】
JAながさき西海 営農振興部

【労働力確保支援事業に関するお問い合わせ】
株式会社マイファーム
農業労働力確保支援事務局

MAIL:roudouryoku@myfarm.co.jp
TEL:050-3333-9769

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