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農家にお金の知識は欠かせない! 効率よく経営感覚を学ぶには?

hiracchi

ライター:

農家にお金の知識は欠かせない! 効率よく経営感覚を学ぶには?

農家はサラリーマンではなく「経営者」。正しいお金の知識を身に着け、自ら経営していくスキルが問われます。しかし意外とお金の知識を得る機会は少ないのが現実。しかも就農したてのころは栽培だけで手いっぱいで、経営やお金のことまで考える余裕がないという人も多いのではないでしょうか。そこで、就農以前から個人事業を営んできた筆者が、小規模農家に必要な「お金の知識の身に着け方」について紹介します。(冒頭の画像はイメージ)

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農家に欠かせないお金の知識

僕は大学を卒業した後、しばらく会社員として営業職に従事。その後、個人事業としてライター業を始め、2010年に新規就農を果たしました。全然大した規模ではありませんが、それでも経営者としてすでに20年以上の経験を積んでいます。

農家は経営者。まずは個人事業主として始める人が多いよう(画像はイメージ

これまでいろんな新規就農者と出会ってきましたが、会社勤めから農業の世界に飛び込んだ人に対して思うのは、「農家=経営者」という視点が欠けている人が多いということ。例えば、税金ひとつを取ってみても、サラリーマンであれば会社に任せておけばそれで済んでしまいますが、農家となるとそうはいきません。

最低限の知識がなければ、自分自身で確定申告をすることはできませんし、税理士などの専門家に依頼にするにしても、「どの費用が経費にあたるのか?」といった基本的な概念が理解できていないと、日々の経理に手間取るのは必至です。

新規就農したばかりの頃は、ただでさえ農作物の栽培に手こずることが多いにもかかわらず、基本的なお金の知識がないと、思いがけない事務作業が発生して農作業に支障をきたしたり、経営に悪影響を及ぼす事態が生じたりすることも考えられます。

お金に関する知識は、本格的な就農準備を始める前に、少しずつ身に着けておきたいところです。僕自身の実感としても、農業に取り組む前から個人事業を始め、お金や経営に関する知識をある程度身に着けていたことが、就農後にものすごく役立ったと感じています。

この記事を読んでいる人の中には、すでに就農してしまったけれどお金のことはイマイチ苦手、という人もいるかもしれません。そんな人も、今から少しずつ勉強を始めれば、次の確定申告が楽になるかもしれませんよ!

経営者としての資質が問われるのが農家。お金にまつわる知識は前もって勉強しておくのがおすすめです(画像はイメージ

FP3級で家計について幅広く学ぶ

とはいえ、いきなり「お金の知識を身に着けて!」と言われても、「どこから手を付ければいいのか分からない……」という人が大半だと思います。大学などで経営を専門的に勉強した人でもない限り、学校で学ぶ機会はほとんどないわけですから当たり前です。

個人的には、義務教育の中でもう少しお金に関する授業をしてもらえれば……と思ったりしますが、逆に言えば、勉強している人が少ないからこそ、少し学んだだけで他との差を付けることができるわけですから、ぜひ前向きにトライしてもらいたいと思います。

さて、新規就農を目指す方、新規就農して間もない方は、いきなり法人化するのではなく、まずは個人事業からスタートすることが圧倒的に多いと思います。個人事業の場合、家計と密接に絡んでくることから、まずは身近な家計改善につながる知識を身に着けるのがおすすめ。そこでぜひ取り組んでみて欲しいのが「FP3級」の勉強です。

「FP3級」とは「3級ファイナンシャル・プランニング技能士」の略です。国家資格である技能検定制度の一種で、顧客の資産に応じた貯蓄・投資などのプランの立案・相談に関する知識・スキルを認定している資格です。

保険や投資などの知識を問われるイメージが強いですが、経営に欠かせない知識である税金、社会保険、年金、さらには自身のライフプランニングの立て方などを網羅的に学べるのが特徴です。

就農当初は資金繰りに困る場面も出てくるはず。FP3級の勉強を通じてライフプランを見直しておくことがその後の経営にも大いに役立ちます(画像はイメージ

資格取得には固執しすぎない

正直なところ、「FP3級」の資格試験で問われる知識は、それだけで「お金の専門家だ」と誇れるような高いレベルのものではありません。ただ、金融業界で活躍することを考えているわけではありませんから、広く浅く知識を学ぶことができれば十分。「資格をゲットできればラッキーだよね!」くらいの認識で勉強に取り組めば問題ありません。

将来の法人化も視野に入れ、もう少し会社経営に軸足を置いた知識を身に着けたいという方は、「中小企業診断士」の勉強をしてみるのもおすすめです。こちらは個人ではなく、中小企業にフォーカスを当てた国家資格で、「FP3級」に比べるとかなり難易度が高いですが、会社経営にまつわる知識を幅広く学べる点が特徴になっています。

勉強に取り組むうえでのポイントは、「資格取得に固執しすぎないこと」。資格の勉強をすすめておいてなんだか矛盾しているようですが、あくまで農業経営に役立つ知識を身に着けるのが目的。それにもかかわらず、合格を目指して過大な労力を使うのはナンセンスです。

その資格でビジネスを行うわけではありませんから、あくまで「資格取得はおまけ。幅広い知識を吸収するのが目的」というスタンスを忘れないことが大事です。最新の情報はすぐにスマホで調べられるわけですから、「検索するための最低限の知識を身に着ける」という意識を持って勉強するようにしましょう。

ネットで情報収集するためにも「まず知ること」が大事。すべてを暗記する必要はありません。あくまで知らない情報に触れることを意識しましょう(イメージ画像

地元の商工会議所も有効活用

経営者の視点を養うという点では、地元の商工会議所に所属し、創業支援の講座などに参加してみるのもいいでしょう。商工業者とのつながりも生まれ、農家とは異なる視点に触れることで、新たな発想を得られたり、異業種の経営手法を取り入れたりできるからです。

また、商工会議所に所属しているのは多くが地元の中小企業であり、飲食業の経営者などと触れ合う機会も多いことから、新たな販路の開拓につながる可能性も高いです。

商工会議所では、確定申告や補助金申請のサポート業務なども行っていますし、6次産業化や農商工連携などに興味を持っている業者とのつながりも生まれやすいです。年会費も1万円前後と低額で利用できるところが多いため、幅広い学びを得るためにぜひ有効活用したいところです。

日々の勉強方法については、「ながら時間」を有効活用するようにしましょう。You Tubeなどを使って耳から勉強すれば、農作業をしながらでも効率的に学習を進められます。

有料の動画コンテンツや音声講義を提供している業者などもあるので、こうしたものを利用してみるのもいいと思います。負担を感じない方法を選択するのが長続きの秘訣(ひけつ)です。就農前にお金の知識を身に着け、経営者の感覚を養うことができれば、就農後はより栽培に集中でき、スタートダッシュが切りやすくなると思います。

負担にならない勉強方法を選ぶことが大事。音声教材などをうまく活用して「ながら学習」を習慣化できれば、無理なくインプットを続けられます(画像はイメージ

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