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ブロッコリーが指定野菜追加へ。その影響と業界の行く末を、生産者はどう見る?

ブロッコリーが指定野菜追加へ。その影響と業界の行く末を、生産者はどう見る?

国民の消費量が多く、安定した供給が必要な品目として国が認定する「指定野菜」。キャベツ、キュウリ、里芋、大根、トマト、ナス、ニンジン、ネギ、白菜、ピーマン、レタス、タマネギ、ジャガイモ、ホウレンソウの14品目が指定される中、2026年に新たな品目としておよそ半世紀ぶりに追加されるのがブロッコリーです。指定野菜に追加されると、生産者にとってはどのような影響があるのでしょうか。また、今後のブロッコリー業界の行方はどうなっていくのか。徳島県でブロッコリーを大規模生産している株式会社ニッキーファーム代表の仁木光俊(にき・みつとし)さんにお話を伺いました。

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あらゆる需要に応じたブロッコリーを展開

徳島県徳島市にある株式会社ニッキーファームでは、ブロッコリーを中心にホウレンソウやトウモロコシを生産しています。

ブロッコリーの栽培面積は約38ヘクタール。J-GAPも取得しており、加工・業務用や量販店向け商品のほか、飲食店向けのブロッコリーフローレット(花らいを切り離した小房状の商品)も取り扱うなど、あらゆる需要に応じた商品を販売しています。

中でも特徴的なのが、量販店向けに販売される「KINGブロッコリー」。15㎝以上に成長したブロッコリーの中でも特に形のいいものを一つ一つ袋に梱包(こんぽう)して販売しています。スーパーなどで一般的に販売されているものに比べ、KINGブロッコリーは3~5割ほどサイズが大きい上、梱包状態で販売されているので、商品ラインナップの差別化を図るスーパーなどからの引き合いが多いといいます。

KINGブロッコリー

また、今年度から新たに販売される新感覚チップス「BROCCI(ブロッチ)」にも注目です。

味付けの塩みと茎の甘みが新しいチップス

従来、加工の工程で捨てられていたブロッコリーの茎を輪切りにして素揚げしたチップスで、筆者も試食させてもらいましたが、茎の甘さにびっくりしました。

見た目もブロッコリーの茎そのまま

生産者からみたブロッコリーの指定野菜

「元々、アメリカなどから夏の時期に輸入が多かったブロッコリー。ブロッコリーの品種改良や栽培技術の進歩で、夏の時期にも十分な生産量を確保できるようになり、国産化が進みました。昔はフレッシュで何万トンも輸入されていたものがほとんど入ってこなくなりました。それに伴って、国内でのブロッコリーの生産量が増えていったことや国内消費での需要が増えていることが指定野菜の選定につながったかと思います」。仁木さんは、ブロッコリーが指定野菜に追加される背景について、こう私見を述べてくれました。

指定野菜に選ばれると、市場価格が低落した場合、売り上げを補填(ほてん)する生産者補給金を受け取ることが可能になります(条件あり)。
元々、ブロッコリーは国民の消費生活や地域農業振興の観点から、指定野菜に準ずる特定野菜に選ばれていたため、生産者にとっては、これまでよりも有事の際の補填額が増えることになります。これまで以上に安定的な収入が見込めるようになり、各産地での生産量増が予想されます。

指定野菜に加わることによる影響について、仁木さんは「業務・加工用向けに相場に左右されない安定供給に重きを置くニッキーファームにとっては、影響はそう大きくなさそう」と前置きした上で、生産者の販路によっては影響があるといいます。

「量販店などスーパーにおいては市場からの仕入れは切っても切り離せない存在です。今後、生産量が増えると予想される中で市場に出荷するとなると、必然と需要と供給の関係で市場にものがあふれれば相場は従来より落ちます。その分、数を回すのか、あるいはどうやって差別化を図るのかを考えないといけません」(仁木さん)

ニッキーファームでは、これまでは業務・加工用に力を入れてきましたが、今後は量販店などにも力を入れたいといいます。そこで、同社では量販店向けのブロッコリーにKINGブロッコリーと名称を付け、従来よりも2から3倍近いサイズで個包装する差別化を図っています。イメージは、トマトコーナーにいろいろなパッケージのトマトが並んでいるように、ブロッコリーとKINGブロッコリーが隣り合わせで売られるようになれば、と開発しました。

従来のブロッコリー売り場

消費地によって差はあるものの、KINGブロッコリーは関東では足りないからもっと欲しいといった声も届くそうです。ブロッコリーが一般的な野菜になるにつれて、他の店舗と商品の差別化をしたいと考える企業が増える。そういった企業に刺さる商品を目指しているといいます。

ブロッコリーが迎える転換期

ブロッコリー業界の今後の動向

農林水産省によると、国内のブロッコリー生産量は2003年の10万7500トンから、2022年には17万2900トンまで増加。国内生産量の増加に伴い、輸出量は2003年の6万6019トンから2022年には2129トンまで減少しています。一方で、冷凍ブロッコリーの輸入額は、2008年の2万2712トンから2023年には7万0970トンへ増加傾向にあります。指定野菜への認定によって転換期を迎えるブロッコリー業界の今後をどう見ているのか聞いてみました。

「ブロッコリーは通年の生産が可能になりつつあり、大きな生産規模を持つ法人も参入してきたことで、輸入品と同等の価格で勝負ができるようになってきました。今後、天候などのリスク分散として一定の輸入量は残ると思いますが、ほとんどが国産に切り替わるでしょう」(仁木さん)

ただ、冷凍ブロッコリーの国産化はまだまだこれからだと見ています。

「冷凍ブロッコリーは利便性の良さから需要が伸びていますが、ほとんどが中国やエクアドルからの輸入品となっています。国内を見渡すと、冷凍ブロッコリーに参入する農業法人はいくつかあるものの、加工に要する人件費が重くのしかかり、輸入品に比べて商品単価が高くなってしまっています。これから革新的な自動カット機械が発明されるか、集約的な取り組みによるスケールメリットを出せるカット工場がでてくれば、冷凍ブロッコリーでも国産化が進んでいくのではないでしょうか」

従取材時の仁木さん

ニッキーファームがブロッコリー業界で選ばれていくために

転換期を迎えているブロッコリー業界で生き残るため、ニッキーファームではより一層、差別化のための商品づくりに注力していくと話します。

「大手小売会社社長のインタビュー記事をみていると、これからの小売は『同質化競争からの脱却』という言葉をよく目にします。ブロッコリーも指定野菜になることで、これまで以上に同質化していくでしょう。私たちはその中で差別化して生き残っていかなくてはなりません。今後、活用シーンや需要に応じて、サイズや価格ごとに商品化し、新たなブロッコリーの価値を提供していきたい」(仁木さん)

また、「BROCCI」をはじめ、食品ロスや環境配慮の観点から商品開発してきましたが、今後はブロッコリーの葉を活用したスムージーなどの開発を模索していくといいます。もしも花蕾や茎、葉が全て活用できるようになれば、サイズ関係なく一貫して収穫が可能になるので作業効率も上がるのではないかと期待しているといいます。

新たに取り組むブロッコリーの差別化

ここ数年で大きく変化し、成長しているブロッコリー業界。6次化も含め、これからの可能性を感じた取材になりました。

取材協力

NIKKY FARM

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