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田んぼの草取りを楽にする「竹ぼうき除草機」の作り方

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

田んぼの草取りを楽にする「竹ぼうき除草機」の作り方

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約5反の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。
今回は、田んぼの草取りで活躍する「竹ぼうき除草機」の作り方を紹介。条間、株間を一気に6条除草できるので、とても効率的。田んぼの除草は、草を根付かせないことが大切。イネが大きく育つまで、1週間に1回のペースで除草しよう。

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竹ぼうき除草のきっかけは“自給には広すぎる田んぼ”

自給自足的暮らしといっても、農家ではない人にとってコメ作りはちょっとハードルが高い。なぜなら庭や小さな畑で始められる家庭菜園と違って、コメを作るには田んぼという特別な環境が必要だからだ。
トラクターやコンバイン、田植え機などの機械も用意しなくていけない。あとで知ることだが、除草も特別だ。それで作ったのが今回紹介する竹ぼうき除草機なのだが、それも田んぼをやるまで考えてもみなかったことだ。収穫したあとにも作業がある。脱穀、乾燥、もみすり、精米といった工程を経て、ようやく白米として食べられるようになるのだ。
そういうわけで、コメ作りにはなかなか手を出せなかった。ただ、やりたい気持ちがなかったわけではない。それで、あるとき近所の農家と話をしているときに、軽い気持ちで「コメ作りしたいんですよ」なんてことを言ったのだと思う。

竹ぼうき除草引き_MG_0059

竹ぼうき除草機による田んぼの除草。畑と違い草刈り鎌や刈払い機は使えない

すると、その農家は、一瞬考えるようなそぶりを見せて「あるよ」と言い、わが家から歩いて10分ほどの場所にある田んぼに案内してくれた。
「ほら、ここ。地主に頼まれて昨年まではうちでやっていたんだけど、ちょっと手が回らなくなって返したんだよ。といっても、地主も今は農業やっていないからね。田んぼを管理してくれる人がいたら喜ぶよ。借代も、年貢もいらないよ。地主としては草刈りをしてくれるだけでも助かるんだから」

水を張った田んぼ_MG_2817

3反5畝あるわが家の田んぼ。代かきを終えて水を張った田んぼに青い空と白い雲が映る

その田んぼは、小川沿いにどこまでも続く水田地帯の1枚で、一見して耕作されていないのはその田んぼだけだった。棚田や谷津などの管理が難しい田んぼではなく、あぜも崩れている様子はない。水についても地域で管理されているため問題なさそうだった。条件的には申し分のない田んぼである。ただ、ひとつ問題があった。広すぎるのである。

「おおよそ3反5畝ある」と、その農家は言った。このあたりでは1反あたり約8俵(480㎏)の収穫が見込める。大人1人が1年間に食べるコメの量は約50~60㎏。わが家は夫婦+子ども3人の5人家族なので、多く見積もっても1反あれば十分なのだ。ところが、私の口から出た言葉は、「この田んぼやります……」。
思わず借りてしまったのである。
こうして広すぎる田んぼを借りてしまったことに加えて、気持ち的に薬剤を使いたくないことから手作業で草取りをしなければならず、そのために作ったのが竹ぼうき除草機なのである。

無農薬、無化学肥料でコメづくり。除草の試行錯誤

田車で除草_MG_0095

田車による除草。薬剤を使わずに草を抑えるには、物理的手法でやるしかない

中古のトラクターとコンバインを入手し、近所の農家の助けもあって何とか1年目の田植えを終えた。大変だったのはその後の除草である。薬剤を使えば苦労しないのだろうが、気持ち的なところで、そこまでしてやりたいコメ作りではない。
無農薬だから安心・安全とか、有機だから味がいいとか、そういう考えを持っているわけではない。薬剤は適正に使われていれば安全だし、栽培法に関係なくおいしいコメはおいしい。
わが家のコメ作りは無農薬、無化学肥料でやっているが、それは気持ち的にそうしたいからで、それ以上の理由はない。

薬剤を使わずに草を抑えるには、とにかくこまめに除草することだ。草を根付かせてはいけない。方法は三つある。手道具を使うか、機械を導入するか、アイガモを放すかだ。自給用の田んぼでコストや管理を考えると、手軽に始められるのは手道具だろう(作業は大変だが)。
その手道具の一つが今回作り方を紹介する竹ぼうき除草機。しかしそこに至るまでには他の道具での試行錯誤があった。

田車

田車_MG_0050

2条用の田車。田んぼの泥をかき混ぜながら進むので、体力を使う

かんじきのような形をしたフロート部分に回転する爪がついた除草道具で、ハンドルを持って前後に動かして条間の草を取る。素材はアルミで軽く作られている。人力による除草道具としては大変優れているが、欠点は株間に草が残ること。

熊手

熊手で除草_MG_0084

熊手で株間を除草する。イネは根付いていれば抜けることはない

そこで、田んぼ全体に田車をかけたら、次に熊手で株間の草を取る。田車もそうだが、田んぼの除草は田植え後1週間で勝負が決まる。苗が根付いて、本格的に草が発生する前に必ず田車と熊手による1回目の除草をしなくてはいけない。苗が根付いていれば、その上から熊手をかけても抜けるのは根付く前の草だけである。苗は倒れてもしばらくすれば起き上がる。
つまり、草を抑えるには1週間に1回を目安に、苗がある程度成長するまで田車と熊手をかけ続けなければいけないのだ。

草削り

けずっ太郎_MG_0053

先端に刃がついており、草を削ると同時に輪の部分から土が抜けるようになっている

除草が間に合わずに草が生えてしまった場合は、「けずっ太郎」(ドウカン)の商品名で知られる草削りを使って、草を削り取っていく。これは大変手間がかかる。3反5畝の田んぼを除草するには、たっぷり2日はかかる。そうやって草を取っても1週間もすれば、また草が生えてくるのでキリがない。

浮いた草_MG_9779

けずっ太郎で除草したあとで、浮いてきたコナギ。ここまで草が育つと、レーキや竹ぼうき除草機では歯が立たない

田植え直後の除草をもっと効率的にできればいいのだが……。
条間と株間をいっぺんに除草できれば作業時間は半分で済むのだが……。
そんなことを考えてネットでいろいろ調べている中で、見つけたのが竹ぼうき除草機である。

竹ぼうき除草前から_MG_0065

稲を倒しながら、生え始めの草を引っかけて浮き上がらせる

竹ぼうきを数本並べて固定し、取っ手をつけたもので、田んぼの中を引いて歩くと、生え始めの草がほうきの先に引っかかって取れるのだ。一気に6条の除草ができるのでとても効率的だ。ただし、これも草が根付いてしまうと効果がないので、根付く前に繰り返しかけることが重要である。
では、竹ぼうき除草機の作り方を紹介しよう。

竹ぼうき除草機の作り方

材料

材料_MG_9976

➀L字金具 2個
②スギ角材(30×40×200ミリ)※両端を45°の角度でカット 4本
③SPF1×4(19×89×1500ミリ) 1本
④スギ角材(30×40×1200ミリ) 2本
⑤自然木(直径50ミリ程度×長さ1000ミリ程度) 1本
竹ぼうき 6本

作り方

1.木材は必要なサイズにカットする(⑤自然木を除く)。②スギ角材は両端を45°の角度でカットする。

記しづけ_MG_9987

2.③SPF1×4は、両端から15センチのところから、24センチ間隔で印をつける。

穴_MG_9995

3.竹ぼうきにビスを打つための下穴を2カ所開ける。下穴を開けずに直接ビスを打つと割れるので注意。

ほうきビス打ち_MG_9999

4.2の線に竹ぼうきを合わせてビス(45ミリ)で固定する。

L字金具_MG_0006

5.両端から2本目の竹ぼうきの外側に、➀L字金具で④スギ角材を固定する。ビスは30ミリ。ビスが裏から飛び出しても気にしなくてOK。

補強_MG_0014

6.②スギ角材を写真のように取り付ける。ビスは45ミリ。これにより強度がグッと上がる。

ビス打ち_MG_0018

7. ③SPF1×4の裏側からビス(65ミリ)を打って②スギ角材を固定する。

取っ手_MG_0028

8. ④スギ角材の端から15センチくらいのところに⑤自然木を合わせ、現物合わせで長さを決めてカットする。④スギ角材と⑤自然木は65ミリのビスで固定する。

完成_MG_0046

9.最後にほうきの先端を、園芸バサミなどで切りそろえたら完成。

みんなで楽しみ、みんなが喜ぶコメ作り

アイガモ_MG_9786

田んぼの中を動き回るアイガモ。水と泥をかき混ぜることで草が生えにくくなる

田んぼを借りたときは、管理に苦労するようだったらすぐに返そうと思ったが、なんだかんだ今年で4年目になる。1年目と2年目は除草が間に合わずにかなり草を生やしてしまったが、昨年は、先述したやり方で草を抑えることに成功した。

自給用としては広すぎる田んぼに違いないが、毎年、田植えには大勢の友達が手伝いにきてくれるし、収穫できたコメを送ってやると、みんな喜んでくれる。購入してくれる人もいたりして、ちょっとした小遣い稼ぎにもなっている。さらに今年は一部を網で囲ってアイガモ農法に挑戦中だ。この田んぼ、もうしばらく続けてみようと思っている。

田植え_MG_2829

東京や神奈川からたくさんの友達がやってきて、みんなで田植え

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